【2020民法改正】詐害行為取消権の要件や行使方法をわかりやすくしてみた【債権総論】

詐害行為取消権の改正ポイントについてまとめてみます。

少し多いのですが、今回のポイントはこちら

※スマートフォンをお使いの方は横画面にしていただくと読みやすいかもしれません。

□ 準法律行為も、取消し得る

□ 発生原因が詐害行為前ならば取消し得る

□ 取消しのみならず、返還も併せて請求できる

□ 取消しは、被保全債権の範囲が限度

□ 直接、自己への請求が可能

□ 債務者への訴訟告知が義務付けられた

□ 受益者に請求できるならば転得者にも請求できることになった

□ 転得者は反対給付ができることになった

□ 期間制限の扱いが変わった

1.詐害行為取消権の要件について

旧:第424条① 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。

新:第424条① 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。

従来、「法律行為に当たらない弁済なども取消すことができる」(最判昭33.9.26)としていた為、ひろく行為として明確化されました。

また、

旧:なし

新設:被保全債権が発生してなくても原因が発生していれば良い

「被保全債権は、詐害行為の前に発生していることが必要」(最判昭33.2.21)としていたのです。さらに、発生の原因となる行為があれば良いことに進めております

2.詐害行為取消権の行使方法

行使方法についても運用は変わりませんが、判例を踏まえて細かく明文化されました。

取消し権の性質を明文化

・取消しの対象となる行為を取消すだけでなく、

移転した財産を、債務者に返還することを請求できる

(大判明44.3.24)

ということについて、明文化されました。

権利行使の範囲を明確化

・取消しの対象となる行為の目的が金銭などで、

分割できるような債権なら行使できるのは保全する債権額の限度とされます。

(大判明36.12.7)

直接自己への請求を明文化

取消し対象が金銭・動産である時は

直接、自己に引渡しを求められることを明文化。

(大判大10.6.18)

訴訟告知

裁判でのお話で、改正により変更となっています。

詐害行為取消権を行使する場合、財産の流れとしては債務者を経由しますが、被告は受益者です。

なので、被告適格は受益者とした上で、債務者にも「訴訟告知」により裁判手続きに参加できるようにしています。

旧:被告は受益者とすべきである。確定判決の効力は債務者に及ばない。(大判明44.3.24)

新設:被告は受益者とした上で、確定判決の効力は債務者に及ぶ。

したがって、訴えを提起したときは、債務者に訴訟告知しなければならないものとなりました。

転得者への請求

旧:受益者が善意で、転得者に詐害行為取消請求できない場合でも、悪意の転得者には請求できる。(最判昭49.12.12)

新:受益者(前の転得者すべて)が詐害につき悪意で、請求できる場合、転得者にも請求できる。

従来では、転得者を基準としており、善意の受益者の取引が害されることがあったため、受益者に対して請求できる場合に限って転得者に請求できることになりました。

すなわち、
受益者が善意 ⇒ 請求×
受益者が悪意 ⇒ 請求〇
となります。

3.受益者の反対給付の返還請求

詐害行為取消権は、債務者と受益者との行為を取消しますので、受益者も何か給付をしていた場合には、債務者にこれを返還してもらえます。

旧:受益者は、取消しとなった行為の反対給付を請求できない。

新:受益者は、反対給付の返還(価額の償還)を請求できる

期間の制限

(1)主観的制限期間の起算点を明確化しました。

新:「債務者が詐害行為したことを債権者が知った時」から2年

(2)客観的制限期間の権利行使の期間が短くなり扱いも変わりました。

旧:詐害行為の時から20年経過で消滅する(消滅時効)

新:詐害行為の時から10年経過したとき提起できなくなる(出訴期間)

詐害行為はこんなかんじです。ありがとうございました。

余裕があれば条文をご確認ください。

参考文献はこちら