覚せい剤運びとなりました。チョコレート缶事件

■ テーマ

バレンタインと掛けて「チョコレート缶事件」と解く

そのこころは、どちらも「こい」が問題になるんです。

今回はチョコレートをもらえなかった方に判例を捧げます。

この記事を読むと、チョコレートをもらわなくてよかったとおもえます。

安心してください…。

■ 対象読者

  • バレンタインにチョコレートをもらえなかった方
  • 別にチョコレート欲しくないしという方
  • チョコレートをもらえなかったので慰めてほしい方

←こういった人に捧げます。

バレンタイン特集:チョコレート缶事件とは

■ 記事の内容

今回は、バレンタイン特集ということで、

チョコレートに関するおもしろい判例の紹介です。

どういう内容か

訴えられた犯罪でいうと、関税法違反である覚せい剤の輸入です。

(税関検査でみつかったので未遂罪です)

■ 犯罪事実

「被告人は,氏名不詳者らと共謀の上,営利の目的で,平成21年11月1日,マレーシア所在のクアラルンプール国際空港において,成田国際空港行きの航空機に搭乗する際,覚せい剤998.79gをビニール袋3袋に小分けした上,缶3個にそれぞれ収納し,これらをボストンバッグに隠して,機内預託手荷物として預けて、覚せい剤の輸入行為を行っ」た

本件の具体的な事実関係としては以下。(R

 被告人は,マレーシから搭乗して,ボストンバッグを機内の手荷物として預けた。

成田空港に到着すると、税関検査を受けた。

( 携帯品・別送品申告書…めんどい。

「他人から預かった物」……「いいえ」と。)

覚せい剤などの持込禁止物件の写真を示される

「一応確認なんですけど、こういうの持ってないですよね?」

「…大丈夫っす」

所持品は、まず免税袋

チョコレート2缶とたばこのカートンが入っていることを確認した。

それから、ボストンバッグに、チョコレート3缶や黒いビニールの包みらしきものが入っている。

職員はふと、違和感を感じた。

(なんか、重いな。)

免税袋に入っていたチョコレート缶と比べると,

ボストンバックに入ってたチョコレート缶は,同じくらいの大きさであるのに明らかに重かった。

二つの缶を持ち比べ、確実に重さが違う。

(チョコレート以外に何か入っているぞ)

チョコレート缶は,いずれも横27㎝、縦20㎝、高さ4㎝の同種の平らな缶で、それぞれの蓋と本体の缶の周囲が粘着セロハンテープで留められていた。

それぞれの缶の裏面には380gと表示されているが,缶の重量を合わせると約1056gから約1071gであった。

あとで分かったことだが、約334gから約350gの覚せい剤がチョコレートのトレーの下に隠匿されていたためその分重くなっていた。

「すみません、このチョコレート缶、エックス線していいですかね」

「いいすよ」

 被告人は、直ちに検査を承諾し、エックス線検査が行われた。

 税関職員がエックス線検査を行うと、チョコレート缶の底の部分にいずれも黒い影が映し出された。

(これは…クロだな。)

職員は、エックス線検査の結果については伝えずに聞いた。

「このチョコレート缶、自分で購入した?」

「ああそれは,きのう向こうで人からもらったものだよ。」

「あれさっきは預り物やもらい物がないと申告しませんでしたか」

「……。」

被告人から返答はない。

「…。それでは、どんな人にもらった?日本人?」

「イラン人らしき人です。」

ふう、とおもい、税関職員は,被告人に荷物に関する確認票を作成させる。

「どれが預かってきたもの?」

「そのチョコレート缶、黒色ビニールの包み,菓子かな…」数点を申告した。

「その黒色のビニールの包み、開けてみて」

「や、これ、企業秘密の書類だからさ」

「ま、悪いけど、さっきのチョコレート缶、エックス線検査をしたら、底の部分に影あったんで。ちょっと確認させていただきたいです。」

エックス線検査の結果を説明した。

被告人は承諾する。

缶を開けると、3缶全部から白色結晶が発見された。

「これなんだと思う?」

「薬かな、麻薬って粉だよね、何だろうね、見た目から覚せい剤じゃねえの。」

(まったく。)

「黒のビニール開けてもいいですか」

「どうぞ」

開けると、名義人の異なる5通の外国パスポートが入っており、そのうち3通は偽造だった。

 税関職員は、白色結晶の検査をして覚せい剤であることを確認し、被告人を逮捕した。

 逮捕された直後ー

「チョコレート缶はマレーシアで知らない外国人から日本に持って行くように頼まれたんだよ」

「日本にいるナスールから、30万円くれるっていうから飛行機代も払ってもらって、パスポート日本に持ってってくれって言われたの」

「マレーシアでジミーから旅券を受け取ったときに、ナスールへの土産にってこのチョコレート缶を持ってけって頼まれたんだわ」

(話がとんでるな…)

「日本でカラミ・ダボットからお金、もらってるよね?」

「ああ、ナスールじゃあないんだよ、カラミ・ダボットだ、うん。ジミーからパスポート受け取って、ダボットに渡して、それでナスールに渡す予定だったの。

(まったく、こいつは。カラミ・ダボットとの絡みはかくしていたな…)

カラミ・ダボットは、本件とは別の覚せい剤輸入事件で大阪地方裁判所に起訴されていた。

第1審で無罪判決を受けた後、控訴されて大阪高等裁判所で審理を受けている状況にあった。

被告人は、こうした経緯をカラミ・ダボットから聞かされていたのだった。ー

争われるのは「恋」

■ 争点

本件では、本件チョコレート缶を持ち込む時点において、

缶の中に覚せい剤が入っていることを被告人が認識していたか否か、が争われました。

故意の話ですね。)

被告人が覚せい剤があることを認識していたかという「要証事実」を

以下の間接事実で推認していきます。

  •  犯行の態様
  •  税関検査での言動
  •  被告人の弁解状況

1審

①被告人が本件チョコレート缶を自分で本件バッグに入れて手荷物として日本に持ち込んだ

ー とくに開封されていない

②被告人が30万円の報酬を約束され、航空運賃等を負担してもらった上で、関係者に渡すために本件チョコレート缶を持ち帰っている

ー 偽造パスポートを依頼されたと主張して、実際それを持っていたので、違法薬物を持ってると認識していたとはいえない。

③本件チョコレート缶が不自然に重い

ー わざわざ持ち比べる機会はないので気づかない

④被告人の税関検査時の言動

ー 検査を受けることを煩わしく思って嘘をつくことはあり得る、

不安を抱いて預り物であると正直に申告しようと考えたというのも十分に理解できる、

⑤被告人が覚せい剤輸入事件で裁判中の者であるカラミ・ダボットらから

高額の報酬を約束され,渡航費用を負担してもらうなどして依頼を受けていた

⑥被告人の言い分が不自然

この⑤⑥二つはあわせて考えると、

偽造パスポートが入った袋は企業秘密といっていたのに、缶のエックス線検査や開披検査を直ちに承諾していたりといった言動をしている

などとして、被告人に無罪を言い渡してます。

で、問題なのが、これに対して、検察が控訴したのですが、

控訴審が、1審の事実認定には誤りがあるといって、有罪にしました。

これ自体は悪いことではないですが、

1審は事実審といって、事実をあらいだします。

控訴審では、事後審、法律審などといって、法律判断をするので

事実認定に誤りがあるというのは、

1審の判断が、論理的、経験則的に不合理と言えるような場合です

今回の控訴は、根拠が薄かったので、起訴した以上有罪をとりに行くという検察の本性が見え隠れしています

三審制のあり方について白木裁判官が補足意見をだしています。

これについては、裁判員裁判についても言及していますので別の記事でかきます。

近時は、手口も巧妙になっていたりするので、(運び屋にならないように、) チョコレートにはご注意くださいませ。

カテゴリー: Case