質権とは?
質権とは、
弁済があるまで物を留置して、間接的に弁済を強制し、弁済がなければ他の債権者に優先して弁済を受けることができる権利です。
留置的効力と、優先弁済効力を持っています。
抵当権と留置権を足して2で割ったような権利ですね
動産と債権に設定することが多いです
質権と抵当権との違いとは?
質権と抵当権の違いとは、
「占有があるかないか」という点です。
抵当権者が、目的物の占有をすることなく抵当権を設定できるのに対し、質権者は、目的物の占有がなければ質権を設定できないことが、抵当権との根本的な違いです。
債権者の立場となる「質権者」が、占有をすることで、債務者には占有を奪われるという心理的な圧迫を与えていることになり
その結果、間接的に弁済を促すという効果が生じます。これを「留置的効力」といいます。
また、抵当権よりも設定対象が広いことも特徴で、両者の違いになっています。
質権の設定対象
質権とは、債権者が債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物の弁済が無い場合に、その物から優先弁済を受ける権利でした。
第342条 質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
典型的には「物」がイメージされます。これは動産です。
時計を質に入れて、何ヶ月後に返す約定でお金を借ります。
返せなかった場合には時計は取り戻すことができません。
質屋は時計を転売するなりして貸したお金の回収を図るというわけです。
時計を質に入れて、お金を借りる
返せなければ、時計は質屋の所有になってしまう
このような典型的な質権のことを「動産質」といいます。
※質屋さんをテーマとした漫画「七つ屋志のぶの宝石匣(ほうせきばこ)」があります。「のだめ」で有名な二ノ宮先生の漫画
これに対し、時計の代わりに、「債権」を質にいれることもできます。
これは「権利質」というものです。
権利質は、企業金融では多く用いられているものですが、「権利という目に見えないものを質に入れる」という抽象的なことがイメージしにくく難しいと感じるかもしれません。
契約書、権利証を物として質に入れていると考えるといいかもしれません。
質権の成立要件と対抗要件とは?
重要な点としては、成立要件と対抗要件があります。
質物の「占有」は質権の成立要件です。
成立要件は、vs相手方(当事者)です。
第344条 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
そして、「占有の継続」は、第三者に対する「対抗要件」です
対抗要件は、第三者が出てきた時の話です。(第三者とは契約関係に無い人)
例えば、債務者が債権を持っているというケースなど、質権者からみれば債務者の債務者は第三者です。
第352条 動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
もし任意に返還した場合などは、質権は消えない一方、対抗力は失います。
担保物権ではお馴染みですが、このような複雑なケース、
「質権者」と、「債務者の債務者」との法律関係が試験にでるところです。
転質とは?
それから、転質についてお話しなければなりません
転質というのは、
質に入れた物を、質権者がさらに別の質権者に質入れすることをいいます。
質権者が自己の責任で質入れをすることを「転質」といいます。
第348条 質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。
この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。
転質の要件に、
転質権の被担保債権額が、原質権の被担保債権額を超過しないことというものがあります。
(大刑連決大14・7・14)
たとえば、
宝石を30万で質にいれます。質屋さんがさらに質をいれるとき、いくらで質にいれていいのかというと、「30万を超えない範囲で」、ということです。
転質の法的性質が、
「質物を再度質入れする」ということであれば、
被担保債権額を制限するこの要件はいらなくなり、原質権者の無資力の危険を負担することになるから妥当でない(質物は手に入るけど)、という問題があります。
これについては、「再度質入れとなるが、原質権が把握している担保価値に質権を設定しているものであるから不都合は生じない」と説明されています。
おわりに
質権は、あまりおさえていないと思います。
たしかに、一見ややこしいですが、内容としてはそれほど難しいところではないので、一度確認しておくといいかもしれません。
というわけで、お読みいただきありがとうございました。