2018年(平成30年度)宅建権利関係 解答・解説

 

平成30年度の権利関係について解説しました

 

民法改正については「結論が変化するものまとめ」で宅建に関わりそうなところをカンタンにまとめてるのでどうぞ

 

【問1】 AがBに甲土地を売却した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例に よれば、誤っているものはどれか。

 

 

1 甲土地につき売買代金の支払と登記の移転がなされた後、第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合、原状回復のため、BはAに登記を移転する義務を、AはBに代金を返還する義務を負い、各義務は同時履行の関係となる。

 

詐欺を理由に契約が取消された場合、初めから無効となり、返還義務を負います(121条)

そして、最判昭47.9.7によれば、原状回復義務は533条を類推適用し同時履行となります。

 

2 Aが甲土地を売却した意思表示に錯誤があったとしても、Aに重大な過失があって無効を主張することができない場合は、BもAの錯誤を理由として無効を主張することはできない。

 

錯誤による意思表示は表意者にしかできません

最判昭40.9.10によると、表意者に無効を主張する意思がない場合、第三者が主張することは許されません。

本来、無効とはだれでも主張できるものです。さらに、錯誤より表意者の落ち度は低いと思われる詐欺の効果は取消しです。

そこで、民法改正により、無効が取消しになりました。

 

3 AB間の売買契約が仮装譲渡であり、その後BがCに甲土地を転売した場合、Cが仮装譲渡の事実を知らなければ、Aは、Cに虚偽表示による無効を対抗することができない。

 

条文通りです。虚偽表示の無効は第三者に対抗することができない。(94条2項)

 

4 Aが第三者の詐欺によってBに甲土地を売却し、その後BがDに甲土地を転売した場合、Bが第三者の詐欺の事実を知らなかったとしても、Dが第三者の詐欺の事実を知っていれば、Aは詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。

 

第三者が詐欺を行った場合、相手方がその事実を知っていた時に限り、取消すことがでsきる。(96条2項)

相手方というのは直接の取引相手のことを指すのでBです。Bが詐欺の事実を知らない場合、取消すことができませんので誤りです。

こたえ 4

 

【問2】 Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)を締結した場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 

 

1 Bが売買代金を着服する意図で本件契約を締結し、Cが本件契約の締結時点でこのことを知っていた場合であっても、本件契約の効果はAに帰属する。

 

最判昭42.4.20によると、自己又は第三者の利益を図る目的で代理行為を行うと効果は無効となり本人(A)に帰属しません。

このように自己又は第三者の利益を図る目的で代理をすることを「代理権の濫用」と言います。これについては民法改正により、条文が新設されました。さらに、効果は無効ではなく、有効で無権代理行為とみなすとしています。

 

2 AがBに代理権を授与するより前にBが補助開始の審判を受けていた場合、Bは有効に代理権を取得することができない。

 

制限行為能力者でも代理人にはなれます。

4番にもかかわりますが、代理人になって後で、後見開始の審判(制限行為能力者の1つである成年被後見人になること)を受けると代理権が消滅します。

 

3 BがCの代理人にもなって本件契約を成立させた場合、Aの許諾の有無にかかわらず、本件契約は無効となる。

 

同一の法律行為については本人があらかじめ許諾した行為については代理人となることができる(108条)

 

4 AがBに代理権を授与した後にBが後見開始の審判を受け、その後に本件契約が締結された場合、Bによる本件契約の締結は無権代理行為となる。

 

代理権が消滅すると無権代理行為になります。無効ではないです。ただちに無効になるわけではなくなお有効な行為です。

こたえ 4

 

【問3】 AとBとの間で、5か月後に実施される試験(以下この問において「本件試験」という。)にBが合格したときにはA所有の甲建物をBに贈与する旨を書面で約した(以下この問において「本件約定」という。)。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 

 

1 本件約定は、停止条件付贈与契約である。

 

停止条件付契約とは、契約の効力を停止しておく条件を付ける契約です。青春あるあるの優勝したら付き合ってほしいというあれと同じです

 

2 本件約定の後、Aの放火により甲建物が滅失し、その後にBが本件試験に合格した場合、 AはBに対して損害賠償責任を負う。

 

条件成就によって不利益を受ける方(債務を果たす方)が妨害した場合、条件を成就したものとみなす(130条)

民法改正により、利益を受ける方が妨害した場合、成就しなかったものとみなす規定が新設されました(130条2項)

 

3 Bは、本件試験に合格したときは、本件約定の時点にさかのぼって甲建物の所有権を取得する。

 

それまで停止しておくもので、条件成就したときから効力が発生します(127条1項)

 

4 本件約定の時点でAに意思能力がなかった場合、Bは、本件試験に合格しても、本件約定に基づき甲建物の所有権を取得することはできない。

 

大判明治38.5.11によると意思能力を欠く者の意思表示は無効であるとしています。

今まで条文になかったのですが、民法改正により、新設されました。

こたえ 3

 

【問4】 時効の援用に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っている ものはどれか。

 

1 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 

 

大判昭8.10.13によると、保証人は消滅時効を援用することができます

 

2 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。 

 

最判平11.10.21によると、後順位抵当権者は消滅時効を援用することができません。なぜなら、消滅時効を援用することができるのは直接利益を受けることができる者であり、後順位抵当権者が受けるのは反射的利益にすぎないと考えられるからです

 

3 詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。

 

最判平10.6.22によると、詐害行為の受益者は、消滅時効を援用することができます

 

4 債務者が時効の完成の事実を知らずに債務の承認をした場合、その後、債務者はその完成した消滅時効を援用することはできない

 

最大昭41.4.20によると、債務を承認した債務者は、消滅時効を援用することができません。なぜなら、ひとたび債務を承認している以上、信義則に反すると考えられるからです。

こたえ 2

 

【問5】 Aは、隣人Bの留守中に台風が接近して、屋根の一部が壊れていたB宅に甚大な被害が生じる差し迫ったおそれがあったため、Bからの依頼なくB宅の屋根を修理した。この場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 

1 Aは、Bに対して、特段の事情がない限り、B宅の屋根を修理したことについて報酬を請求することができない。

 

義務がないにもかかわらず、他人のために事務を行うことを「事務管理」(697条1項)といいます。

事務管理の特徴ですが、報酬請求することができる規定がありません。

 

2 Aは、Bからの請求があったときには、いつでも、本件事務処理の状況をBに報告しなければならない。

 

委任の規定を準用しています。事務管理中、請求があるときはいつでも報告し、終了した後も報告しなければなりません。(701条、645条)

 

3 Aは、B宅の屋根を善良な管理者の注意をもって修理しなければならない。

 

本人について急迫の危害を免れさせるため事務管理した場合、損害が発生しても賠償する責任は負いません。したがって、修理する必要がありません。(698条)(善良な管理者の注意である必要もないと考えられます。)

 

4 AによるB宅の屋根の修理が、Bの意思に反することなく行われた場合、AはBに対し、Aが支出した有益な費用全額の償還を請求することができる。

 

本人のために有益費を支出したときは、償還請求することができます。(702条1項)

ちなみに、本人Bの意思に反していた場合、本人が受けている利益の限度での償還請求となります。(702条3項)

こたえ 3

 

【問6】 Aが所有する甲土地上にBが乙建物を建築して所有権を登記していたところ、AがBから乙建物を買い取り、その後、Aが甲土地にCのために抵当権を設定し登記した。この場合の法定地上権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 

 

1 Aが乙建物の登記をA名義に移転する前に甲土地に抵当権を設定登記していた場合、甲士地の抵当権が実行されたとしても、乙建物のために法定地上権は成立しない。

 

最判昭48.9.18によると、土地に抵当権が設定された時、建物の登記がまだ前主のもので移転登記がされていなかったという場合でも、法定地上権が成立します。登記は関係ないということができます。

 

2 Aが乙建物を取り壊して更地にしてから甲土地に抵当権を設定登記し、その後にAが甲土 地上に丙建物を建築していた場合、甲土地の抵当権が実行されたとしても、丙建物のために法定地上権は成立しない。

 

法定地上権の成立のためには、土地建物が同一の所有者に属する必要があります。(388条)そうすると、抵当権設定当時、建物が存在していることが前提と考えられます。更地に抵当権を設定している場合には、法定地上権は成立しません。

 

3 Aが甲土地に抵当権を設定登記するのと同時にて建物にもCのために共同抵当権を設定登記した後、乙建物を取り壊して塚建物を建築し、丙建物にCのために抵当権を設定しないまま甲土地の抵当権が実行された場合、丙建物のために法定地上権は成立しない。

 

やや難しいかもしれません。最判平9.2.14によると、共同抵当権が設定された後、建物が再築された場合には、特段の事情が無い限り、法定地上権は成立しません。

 

4 Aが甲土地に抵当権を設定登記した後、乙建物をDに譲渡した場合、甲土地の抵当権が実行されると、乙建物のために法定地上権が成立する。

 

大連判大12.12.14によると、抵当権設定後に、建物を第三者に譲渡した場合でも、法定地上権は成立します。

こたえ 1

 

【問7】 債権譲渡に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 

 

1 譲渡禁止特約のある債権の譲渡を受けた第三者が、その特約の存在を知らなかったとしても、知らなかったことにつき重大な過失があれば、当該債権を取得することはできない

 

最判昭48.7.19によると、譲受人に重大な過失があるとき、譲受人は債権を取得することができません。

 

2 債権の譲受人が譲渡禁止特約の存在を知っていれば、さらにその債権を譲り受けた転得者 がその特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失がなかったとしても、債務者はその 転得者に対して、その特約の存在を対抗することができる。

 

大判昭13.5.14によると、債務者は、善意の転得者に対して対抗することができません。

 

3 譲渡禁止特約に反して債権を譲渡した債権者は、債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかである等の事情がない限り、その特約の存在を理由に、譲渡の無効を主張することができない。

 

最判平21.3.27によると、譲渡した債権者は、みずから無効を主張することはできません。

 

4 譲渡禁止特約のある債権をもって質権の目的とした場合において、質権者がその特約の存在について悪意であるときは、当該質権設定は無効となる。

 

大判大13.6.12によると、質権者が悪意であるときは、質権設定は無効となります。

こたえ 2

 

 

【問8】 次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤ってい るものはどれか。

 

 

(判決文)

賃借人は、賃貸借契約が終了した場合には、賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ、賃貸借契約は、賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり、賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ、建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる貸借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると、建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、(中略)その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。

 

最判平17.12.16の判例で、根拠条文は606条です。以下、読みやすくします。

「賃借人は、契約終了時に賃借物件を原状に回復して返還する義務がある。また、賃借人による賃借物件使用の対価として、賃料の支払をする。したがって、賃借物件の損耗の発生は、賃貸借契約には当然予定されている。

そして、建物の賃貸借においては、通常損耗とは、賃借人が通常の使用をした場合に発生する部屋の劣化といった価値の減少を意味するが、その通常損耗分の回収は、通常、減価償却費や修繕費等といった必要経費分として、賃料の中に含めて、その支払を受けていることになる。

そうすると、建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、その旨の「通常損耗補修特約」が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。」

 

 

1 貸借物件を賃借人がどのように使用しても、賃借物件に発生する損耗による減価の回収は、賃貸人が全て賃料に含ませてその支払を受けることにより行っている。

 

通常の損耗が賃料に含まれているので、「どのように使用しても」は誤りです。

 

2 通常損耗とは、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する。

 

正しい

 

3 賃借人が負担する通常損耗の範囲が賃貸借契約書に明記されておらず口頭での説明等もない場合に賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになる。

 

正しい

 

4 賃貸借契約に質借人が原状回復義務を負う旨が定められていても、それをもって、賃借人が賃料とは別に通常損耗の補修費を支払う義務があるとはいえない。

 

正しい。契約書があっても明確な合意が必要になります。通常損耗については原則負担しないと考えられますしただちに義務が発生することはありません。

こたえ 1

なお、口頭ということはあり得ませんので現実的には契約書に記載することになります。

 

【問9】 Aは、平成30年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。この場合の相殺に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 

 

1 BがAに対して同年12月31 日を支払期日とする貸金債権を有している場合には、Bは同年12月1日に売買代金債務と当該貸金債権を対当額で相殺することができる。

 

自働債権(相殺をしかける側の債権)が弁済期にあることが必要です。(505条1項)

 

2 同年11月1日にAの売買代金債権がAの債権者Cにより差し押さえられても、Bは、同年11月2日から12月1日までの間にAに対する別の債権を取得した場合には、同年12月1日に売買代金債務と当該債権を対当額で相殺することができる。

 

最大判45.6.24を参照すると、自働債権(相殺をしかける側の債権)が差押え前に取得されたものであれば、相殺できます。

 

3 同年10月10日、BがAの自動車事故によって被害を受け、Aに対して不法行為に基づく損害賠償債権を取得した場合には、Bは売買代金債務と当該損害賠償債権を対当額で相殺することができる。

 

不法行為によって損害賠償請求権が発生した場合、債権者は被害者で、債務者は加害者です。最判昭42.11.30によると、債務者から相殺することができません。(受働債権禁止)しかし、債権者から相殺することができます。

 

4 BがAに対し同年9月30日に消滅時効の期限が到来する貸金債権を有していた場合には、 Aが当該消滅時効を援用したとしても、Bは売買代金債務と当該貸金債権を対当額で相殺す ることができる。 

 

時効消滅前に相殺適状になっていた場合、相殺をすることができます(508条)

現実問題、結論が変わらないからです。

こたえ 3

 

【問10】 相続に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものは どれか。

 

1 無権代理人が本人に無断で本人の不動産を売却した後に、単独で本人を相続した場合、本人が自ら当該不動産を売却したのと同様な法律上の効果が生じる。

 

最判昭40.6.18によると、無権代理人が本人を相続した場合、本人が法律行為をした場合と同様の効果を生じます。

 

2 相続財産に属する不動産について、遺産分割前に単独の所有権移転登記をした共同相続人から移転登記を受けた第三取得者に対し、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして対抗することができる。

 

最判昭38.2.22によると、遺産分割前に一部の者が取引をしていたとしても、他の共同相続人は自己の持分については、登記なくして対抗することができます。

 

3 連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合、相続人らは被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となる。

 

最判昭34.6.19によると、相続人は本来の債務者と共に「連帯債務者」となります。

 

4 共同相続に基づく共有物の持分価格が過半数を超える相続人は、協議なくして単独で共有物を占有する他の相続人に対して、当然にその共有物の明渡しを請求することができる。

 

過半数を超える(過半数を超えるっておかしな表現ですが原文ママです)持分を有する者でも、当然に明渡し請求ができるというわけではありません。

不動産そのものは割り切れませんが、共有における権利についてはそれぞれが持分という一部の権利を持っていると考えているため複雑なのです。(共有は理論がめちゃくちゃなので深入りしない方がベターです。)

こたえ 4

 

【問11】 AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)を締結する場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

 

1 本件契約が専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする場合には、公正証書によらなければ無効となる。

建物所有目的のため、借地借家法が適用されます(借地借家法1条)。そして、通常の借地契約なので公正証書である必要がなく、無効となりません。

定期借地契約とする場合には、書面で契約しなければならず、無効となります(22条)さらに、それが事業用であれば公正証書でなければなりません。(23条3項)

 

2 本件契約が居住用の建物の所有を目的とする場合には、借地権の存続期間を20年とし、かつ、契約の更新請求をしない旨を定めても、これらの規定は無効となる。

 

普通借地契約なので、存続期間は30年となります(3条)。ただ、問題文の更新請求をしない旨の規定は無効になります。(9条)

 

3 本件契約において借地権の存続期間を60年と定めても、公正証書によらなければ、その期間は30年となる。

 

普通借地契約なので、存続期間は30年となり、30年より長い存続期間を定めた場合はその期間となります(3条ただし書)

 

4 Bは、甲土地につき借地権登記を備えなくても、Bと同姓でかつ同居している未成年の長男名義で保存登記をした建物を甲土地上に所有していれば、甲土地の所有者が替わっても、甲土地の新所有者に対し借地権を対抗することができる。

 

最大判昭41.4.27によると、家族名義で登記されている場合には、対抗することができません。表示の登記でも良いのですが、本人のものが必要です。

こたえ 2

 

 

【問12】 AとBとの間で、Aが所有する甲建物をBが5年間賃借する旨の契約を締結した場合における次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか(借地借家法第39条に定める取壊し予定の建物の賃貸借及び同法第40条に定める一時使用目的の建物の賃貸借は考慮しないものとする。)

 

 

1 AB間の賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借で、契約の更新がない旨を定めた場合には、5年経過をもって当然に、AはBに対して、期間満了による終了を対抗することができる。

 

契約期間が1年以上であるため、期間の定めがある建物賃貸借が有効に成立します(29条1項)次に、定期建物賃貸借であるため、書面でなければ更新がない旨を定めることができません(38条1項)

そして、貸主は、6ヶ月前までに更新しないという通知をしなければ、終了を対抗することができません(38条4項)

 

2 AB間の賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借で、契約の更新がない旨を定めた場合には、当該契約の期間中、Bから中途解約を申し入れることはできない。

 

定期建物賃貸借契約であっても、居住用であり、床面積200㎡未満である場合、借主から解約を申し入れることができます。

 

3 AB間の賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借でない場合、A及びBのいずれからも期間内に更新しない旨の通知又は条件変更しなければ更新しない旨の通知がなかったときは、当該賃貸借契約が更新され、その契約は期間の定めがないものとなる。

 

定期建物賃貸借でないため、原則更新します。本件期間の定めがある契約なので、貸主は、6ヶ月前までに更新しないという通知をしなければ、更新とみなされます。(26条1項本文)そして、更新した場合は、期間の定めがない契約とされます。(26条1項ただし書)

 

4 CがBから甲建物を適法に賃貸された転借人で、期間満了によってAB間及びBC間の賃貸借契約が終了する場合、Aの同意を得て甲建物に付加した造作について、BはAに対する買取請求権を有するが、CはAに対する買取請求権を有しない。

 

貸主の同意を得て付加した畳や、建具(エアコンとか)を造作と言います。

借主は、貸主に対して、造作の買い取りを請求できます。(33条1項)そして、転借人も、原賃貸人に対して、造作の買い取りを請求できます。(33条2項)

なお、この造作買取請求は、任意規定とされており(37条)貸主のため特約によって排除することができます。

こたえ 3

 

【問13】 建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

 

1 規約の設定、変更又は廃止を行う場合は、区分所有者の過半数による集会の決議によってなされなければならない。

 

規約の設定、変更、廃止は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の集会の決議によります。(区分所有法31条1項)

 

2 規約を保管する者は、利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧を拒んではならず、閲覧を拒絶した場合は 20万円以下の過料に処される。

 

規約を保管する者は、利害関係人の請求があったときは規約の閲覧を拒むことはできず(33条2項)違反した場合は過料となります(71条2号)

 

3 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

 

条文の通りです(33条3項)

 

4 占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。

条文の通りです(46条2項)

こたえ 1

 

【問14】 不動産の登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

 

1 登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託がなければ、することができない。

 

条文の通りです。(不動産登記法16条1項)

 

2 表示に関する登記は、登記官が、職権ですることができる。

 

条文の通りです。(28条)

 

3 所有権の登記名義人は、建物の床面積に変更があったときは、当該変更のあった日から1月以内に、変更の登記を申請しなければならない。

 

条文の通りです。(37条1項)

 

4 所有権の登記名義人は、その住所について変更があったときは、当該変更のあった日から1月以内に、変更の登記を申請しなければならない。

 

登記名義人の住所変更については、権利に関する登記で、申請の義務はありません。

もちろん、権利なので氏名(名称)、住所について変更・更生登記を登記名義人が単独で申請することはできます。(64条1項)

こたえ 4

 

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