【判決文を読んでみよう】宅建判決文を読む手順を解説

今回は、判決文を読んでみようという企画です。

宅建はくせの強い試験であり、受験者の多くが法律の初学者ということが特徴ですが

なかなか判決文を読む機会もなければ、これを解説しているものもありませんのでちょっと挑戦してみます。

勉強をされている方に向けて【判例を理解する方法】判決文を読む手順を解説というテーマです。

いずれにしろ法律学習の初心者が多いことから、一般の方にも共有しましょうということになり、一部を開放していきます。軽い気持ちでどうぞ

判決文

宅建にでてくるのはこんな問題です。

(判決文)

同一当事者間の債権債務関係がその形式は甲契約及び乙契約といった2個以上の契約から成る場合であっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者が法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。(※ 宅建 2010年 第9問)

判決文の構造

判決文の構造として、厳密な書き方のルールがありません。

それでも、判決文にかならず必要なものが「結論」です。それが、「○○の場合、○○と解するのが相当である。」とあらわされています。

この結論命題部分が「判例」と言われるものです。

判例とは何かというと、広く裁判で過去に下された判断を指すのですが、さらに狭く最高裁判所が示した結論命題をいうという説が有力で法律家一般には浸透しているのかなと思います。

この○○の場合、○○と解するのが相当である。」に当たる部分とこの結論命題を導く理由や根拠を併せた部分を判決文を要約したものとして「判旨」と呼ぶことがあります。

それでも文字数でいうと長くなりがちですので、初心者が読み解くための手順を考えてみます。

【初心者が判決文を読む手順】

① 「場合」「解する」という言葉を探す

② 「どういう場合に、どうなるか」文章全体を把握する

③ エッセンスを抜き出してそれ以外をカットする

④ カットした部分も確認する

 ① 「場合」「解する」という言葉を探す

(判決文)
同一当事者間の債権債務関係がその形式は甲契約及び乙契約といった2個以上の契約から成る場合であっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者が法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができる

まずは、キーワードをみつけて足掛かりにします。【譲歩】+【主張】となっています。

こうしてみると、「Rの場合であっても、Pの場合には、Qすることができる」といいたいのだろうということがわかります。

② 「どういう場合に、どうなるか」文章全体を把握する

では、前後の部分にひろげてみます。「どういう場合にどうなる」と言っているのでしょうか。全体構造をつかむことができるはずです。

「同一当事者間の債権債務関係がその形式は甲契約及び乙契約といった2個以上の契約から成る場合であっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者が法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。」

② エッセンスだけ抜き出してそれ以外をカットする

長いので余分なところは削っておおまかな意味をとります。

「2個以上の契約から成る場合であっても、契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。」

「2個以上の契約から成る場合であっても」

2個以上あっても、解除できるということからは、「契約が2個あると本来は一方を理由に他方を解除することはできないけれど」というニュアンスであることが予想されます。

2個以上契約があると、片方ずつ解除するのか両方解除できるのかという疑問があります。これがこの論点の背景にある問題意識ということになります。

契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合

そうはいっても、契約が2個以上ある場合すべてで解除できるというわけではなく、限定されます。

それはどういう場合かというと、契約の目的が達成されない場合となります。

③ 削った部分は何を言っているか

削った部分というのは、軸になるエッセンス部分の「評価」であったり、「補足」をしていたりします。

「同一当事者間の債権債務関係がその形式は甲契約及び乙契約といった2個以上の契約から成る場合であっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者が法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。」

それらは二つの契約を指します。

甲乙契約の目的が相互に密接な関係である」ということが必要であると補足しています。

関係の薄い契約は二つでは足りないということになります。

それから、「甲の債務不履行を理由に乙の契約を解除できる」としています。

なお、通常は、判決文に記載のないことは読み取れません。そのため、乙の不履行を理由に解除することができるかはわかりません。

しかし、甲乙は密接であることを要求していることから、乙の不履行を理由に解除できると考えることができます。

したがって、本判決文は読み取れますが、判決文一般を読む際には文章以外のことを独自に判断しないよう注意が必要となります。

選択肢を検討してみる

選択肢を検討してみます。

1 同一当事者間で甲契約と乙契約がなされても、それらの契約の目的が相互に密接に関連付けられていないのであれば、甲契約上の債務の不履行を理由に甲契約と併せて乙契約をも解除できるわけではない。

契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合、解除することができる」といっています。

そのため、契約の目的が相互に密接に関連付けられていないのであれば、条件を満たさない。

したがって、解除できるわけではないということになります。

正しい

2 同一当事者間で甲契約と乙契約がなされた場合、甲契約の債務が履行されることが乙契約の目的の達成に必須であると乙契約の契約書に表示されていたときに限り、甲契約上の債務の不履行を理由に甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。

契約書に表示されていたときに限り、」ということは示されていません。逆にいえば、契約書がなければ解除できないと画一的になってしまい、契約目的も何もなくなってしまいます。ひとつの要素にはなると思いますが。

誤り

3 同一当事者間で甲契約と乙契約がなされ、それらの契約の目的が相互に密接に関連付けられていても、そもそも甲契約を解除することができないような付随的義務の不履行があるだけでは、乙契約も解除することはできない。

解除できるのは、「いずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合」と示しています。

そして、相互に密接に関連しているというのは、これを補足しています。ということは、まず第一に契約目的が達成できないと認められるかが軸になってきます。

正しい

4 同一当事者間で甲契約(スポーツクラブ会員権契約)と同時に乙契約(リゾートマンションの区分所有権の売買契約)が締結された場合に、甲契約の内容たる屋内プールの完成及び供用に遅延があると、この履行遅延を理由として乙契約を民法541上により解除できる場合がある。

関係なさそうにみえる契約ですが、同一当事者間の債権債務関係ですから、契約の目的その関連性から解除できるかどうかを判断することになります。

そのため、判決文のケースで考えていずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合は解除できるので「解除できる場合がある。」と言えます。

正しい

ということで以上になります。多少は判決文の構造、その特徴、解法手順のイメージを持っていただけたでしょうか。お役に立てれば幸いです。お読みいただきありがとうございました。