【2020民法改正】「債権譲渡」どう変わったか?改正前旧法の理解が必須

債権総論はすべて旧法の理解が不可欠なわけですが、債権譲渡に関して改正のポイントは以下の4つ

1.譲渡禁止特約

2.将来債権譲渡

3.異議をとどめない承諾制度の廃止

4.債権譲渡と相殺

これを条文とともにチェックしていきます

1.譲渡禁止特約付き債権の譲渡は無効だったのが有効になった

譲渡禁止特約付きの債権は、第三者に対する関係でも無効と考えられていましたが(最判昭52.3.17)(最判平9.6.5)

これについて、債権の譲渡を有効としています。

もちろん、理由は実務上の要請なのですが、中小企業はあまり不動産を持っていないので債権を譲渡担保として資金調達するわけです。このとき、債務者の承諾というのがボトルネックになるわけですね。

旧法 第466条

① (略)

② 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。

新法 第466条

①債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

②当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

これに対して、債権が譲渡された場合に債務者としてはだれに弁済していいか分からなくなるもの。

二重弁済を防ぐ必要があるので、

債権譲受人からの請求を拒むこと

譲渡人に対して弁済していれば弁済を対抗できること

譲渡禁止特約について悪意・重過失のある債権の譲受人に対しては、対抗できること」(最判昭48.7.19)

これらを、3項に新設しました。

これで、債権の譲渡人に対して主張できることを、譲受人にも主張できるわけです。

新設

③前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、

債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。

さらに、債権の譲受人を保護する必要があるので

債務者が債務を履行しない場合は、「期間を定めて履行を催告できること」を4項に規定しています。

この規定があることで、期間が経過すれば債務者に直接支払いを求めることができるようになります。

新設

④前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、

その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。

債権譲渡が原則自由となったので、債務者も債務は供託ができるようになった

上の改正規定によると、

譲渡禁止特約の存在を、債権の譲受人が知っているかどうか?によって、債務者は有効に弁済できる相手が異なってしまいます。

弁済の相手方を間違えるリスクがあるのでこれを避けるため、このような譲渡禁止特約付き債権が譲渡された場合にも、「弁済供託」という手段が採れるように新設されました(494条と同じ)

新設(譲渡制限の意思表示がされた債権に係る債務者の供託)

第466条の2

①債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。

また、譲渡人が破産したとき、

譲受人は、債務者に対して供託させることができる」ことも追加されています

新設

第466条の3

前条第1項に規定する場合において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人は、

譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができる。

さらに、登場人物が増え

「譲渡禁止特約つき債権を有する者に対する債権者」がいるとき

このような債権者は、譲渡禁止特約つき債権に、差押え債権者として強制執行を行います。これが認められないと、差押えの実効性が失われてしまうので、

「譲渡制限特約付き債権に対する差押え債権者に対しては、債務者は対抗できない」と、判例(最判昭45.4.10)にしたがって規定されました。

新設(譲渡制限の意思表示がされた債権の差押え)

第466条の4

①第466条第3項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。

預貯金債権についても譲渡は無効となる

債権が預貯金債権の場合、銀行が債務者で、ただちに資金調達できます。

また、預貯金債権が譲渡されるとなると大量の債権を扱う銀行業務が停滞しますので通常、譲渡禁止特約が付されていますが、これに反して譲渡された場合、無効となります(466条の5第2項)

新設(預金債権又は貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力)

第466条の5

①預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権について当事者がした譲渡制限の意思表示は、

第466条第2項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。

②前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。

2.将来債権譲渡の規定が(ついに)新設された!

判例(最判平11.1.29)により、広く認められていた

将来債権譲渡の規定を新設しました。やっとですね

第466条の6

①債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。

②債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。

通常は問題ないのですが

将来債権譲渡の後に、譲渡制限特約が付された場合、債務者が譲受人に対抗することができるのか?はたまた、譲受人は履行請求ができるのか?はっきりしていませんでした。

そこで、

譲受人が対抗要件を備えるまでに譲渡制限特約が付されたときは、債務者は履行を拒絶することができる」としています。

新設

③前項に規定する場合において、譲渡人が次条の規定による通知をし、又は債務者が同条の規定による承諾をした時までに譲渡制限の意思表示がされたときは、

譲受人その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、第466条第3項の規定を適用する。

(譲渡制限の意思表示がされた債権が預貯金債権の場合にあっては、前条第1項の規定を適用する。)

なお、対抗要件については、判例(最判平13.11.22)を踏まえ、通常の債権譲渡と同じ方法によることを明らかにしています

新設(債権の譲渡の対抗要件)

第467条

①債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

②前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

3.異議をとどめない承諾制度の廃止

いままでは、債権が譲渡されたことについて、債務者が承諾をすれば、譲渡し人に対抗することができた事由を譲受人に対抗できないとされていました。(最判昭42.10.27)

これが、改正により、「原則として、債務者は譲受人に対抗できる」とされるわけですね

異議をとどめない承諾の制度を廃止し、抗弁を放棄することについて債務者の意思を確認することになります。

以前は、債務者が異議をとどめない債権譲渡の承諾をした場合、譲渡人に対抗できたことがあっても、それを譲受人に対抗できませんでした。

取引安全のためではありましたが、単に譲渡があったことを認識しただけでも抗弁が対抗できなくなるという強力な制度でしたので、債務者意思で放棄した場合に限るのが妥当だろうという事になり、廃止されました。

(なお、参照最判平27.6.1)

旧法(指名債権の譲渡における債務者の抗弁)

第468条

① 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。

② 譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまで

新法(債権の譲渡における債務者の抗弁)

第468条

①債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

②第466条第4項の場合における前項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条第4項の相当の期間を経過した時」とし、第466条の3の場合における同項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四466条の3の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする

4.債権譲渡と相殺は、債権の発生時・取得時をチェックすればいい

債権が譲渡された後であっても、相殺ができましたが、譲渡通知の時点で債権が発生している必要があるのか?、弁済期の到来が必要なのか?など不明確な状態でした。


そこで、改正により

譲渡について債務者への対抗要件が具備される前に債務者が取得した債権であれば相殺することができ、弁済期も問わない」とされました。

そして、譲受人が債務者対抗要件を具備した時点よりも後に債務者が取得した債権についても

・対抗要件具備より前の原因に基づいて発生

・譲渡された債権の発生原因となる契約に基づいて発生

このいずれかであれば、相殺ができることになります。


新法(債権の譲渡における相殺権)

第469条

①債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。
②債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が次に掲げるものであるときは、前項と同様とする。

ただし、債務者が対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。

1 対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権

2 前号に掲げるもののほか、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権

以上です。