【2020民法改正】契約の効力一挙にまとめ【同時履行から解除まで】

■ 契約の効力について、わかりやすく一挙にまとめてみます。以下、5つです

1.同時履行の抗弁権

2.危険負担

3.第三者のためにする契約

4.契約上の地位移転

5.契約解除

1.同時履行の抗弁権

・同時履行の抗弁の対象となる債務に損害賠償債務が含まれることを明確化した

契約に基づく債務の履行だけでなく、その債務が損害賠償に代わった場合、その債務の履行も含みます

旧:第533条(同時履行の抗弁)

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

新:第533条(同時履行の抗弁)

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

2.危険負担

・危険負担の効果は、反対債務の存続は削除され、履行拒絶ができるように改められた

もともとの効果では、「債務者売主に帰責事由がなければ、反対給付債務の代金支払いは存続し、売買の目的物が無くなっても代金を払わなければならなかった」わけです。

このように反対給付債務が存続させることを債権者主義といいますが、これを削除し債務者主義に一本化した感じです。

債権者主義という制度は、「売主の責任なく商品が滅失したとしても、代金は支払わなければならない」という制度です。

教室事例では不動産売買が出てきますが、金額の大きい買い物では、書類作業である契約と実際の決済がズレます。そのタイムラグの間に何らかの事情で商品が傷ついたときどう処理するのかという話が「危険の負担」でした。

不動産はもちろんまともな取引であれば特約をしますので、問題になりませんが、不合理で批判が強かったもので、削除され、かわりに「反対給付の履行を拒むことができる」という結論となりました。

一応、従来の根拠としては、「契約締結後の目的物について利益も損失も取得する。」ということでした。

すなわち、物件の場合ですと、契約後(引渡し前)の天災による損失も、地価が急高騰した場合の利益もどちらもリスクとして引き受けるということです。

一見、それっぽい理屈なのですが、利益と損失は比較対象ではなく両者はまったく関係ないことです。

旧:第536条(債務者の危険負担等)

①前2条(債権者主義)に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。

新:第536条(債務者の危険負担等)

①当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

3.第三者のためにする契約

・第三者のためにする契約は、第三者が特定しない場合も効力が妨げられないことを明文化した

第三者のためにする契約は、契約成立時に第三者が現に存在していなくても効力は発生しますのでこれを新設してます

旧:第537条(第三者のためにする契約)

① (略)

(第2項は新設)

② (略。改正後の第3項)

新:第537条(第三者のためにする契約)

①(略)

②前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。

③(略)

・第三者のためにする契約は、第三者の承諾を得なければ、契約を解除できないと明確化した

そして、債務者の第三者に対する債務不履行を理由に契約を解除する場合には、第三者の承諾を得なければならないとしています。

旧:第538条(第三者の権利の確定)

(略、改正後の①)

(第2項は新設)

新:第538条(第三者の権利の確定)

(略)

②前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第1項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。

4.契約上の地位移転

・契約上の地位移転の規定が新設された

判例(最判昭30.9.29)では実に古くから広く認められていたものです

不動産では関係者が多い一方、当事者が頻繁に入れ替わるので債務引受とともによく使われたりしますね。

契約当事者の一方が第三者との間で自己の有する契約上の地位を譲渡する合意をした場合において契約の相手方がその譲渡を承諾したときは契約上の地位は度の第三者に移転する

新設:第539条の2

契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。

5.契約解除

・契約解除の要件を緩和して、債務者に帰責事由がなくても解除できるようになった(以下の条文参照)

債務者に帰責事由が無い場合は、解除ができないとされていました。

ここは、まちがいやすいのですが、解除は「制裁」ではなく、債権者を契約の拘束から解放するためにある制度です。

債務者に帰責事由がない場合も契約解除できることとして、解除権行使の要件を緩和しました。

債務不履行があれば原則として、契約解除ができることとなり、例外として、債権者に帰責事由がある場合のみ解除できないということです。

解除することができるための「不履行の程度」は「軽微でない」こと

また、解除するために必要な債務不履行の程度について判例(最判昭36.11.21)によれば、

契約の目的を達成するのに必須ではないような付随的な義務の不履行」の場合には、契約の解除はできないとしていました。

軽微な不履行で解除するのは妥当ではないため、

取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」には解除ができないとして歯止めをかけています。

旧:第541条(履行遅滞等による解除権)

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

新:第541条(催告による解除)

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

・無催告解除できる場合が増えた

無催告解除できる場合について、要件を整理しています。

これまで原則として解除には催告が必要でした。例外として、履行不能である場合、定期行為の履行遅滞の場合に限り、催告不要としていました。

理由は、履行の機会を与えるためのものです。そうするとこれ以外の場合でも、履行の機会を与えたところで意味がないような場合には、無催告解除を認めてしまおう、という観点で要件を整理しました。

旧:第542条(定期行為の履行遅滞による解除権)

略(改正後の第542条第1項第4号に対応)

旧:第543条(履行不能による解除権)

(改正後の第542条第1項第1号第3号・第2項第1号に対応)

新:第542条(催告によらない解除)

①次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。

1.(略)

2.債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

3.債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。

4.(略)

5.前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。

・原状回復義務の範囲

解除によって果実(賃料収入など)も含まれるとしています。

旧:第545条(解除の効果)

①② (略)

第3項は新設

③ (略、改正後④)

新:第545条(解除の効果)

①(略)

②(略)

③第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない

④(略)