【民法】同時履行の抗弁とは?要件や留置権との違いをわかりやすく解説

同時履行の抗弁についてです。

留置権との違いなどをわかりやすく解説していきます。

スマートフォンの方は横画面にしていただくと読みやすいかもしれません。

同時履行の抗弁権とは?

同時履行の抗弁とは、相手方が債務の履行を提供するまでは自己の債務の履行を拒むという反論です。

相手も自分に対して、債務を負っているということですので、売買契約が典型例です。

このような契約当事者の双方が債務を負っている契約を「双務契約」といいます。

同時履行の抗弁の性質とは?

抗弁というのは、裁判における反論のことです。

売買のような双務契約では、原則として同時に履行することが求められます。

これは、「双務契約の履行上の牽連性」と言う性質で、牽連性とは繋がった関係と考えてください。

条文では、「同時履行の抗弁」と規定されていて、正確には同時履行の抗弁権は不正確です。

本来は抗弁だからです。

ところが、「履行を拒むことができる権利」と考えて同時履行の抗弁権と呼ぶ人がいて、混在しています。

これは、もともとドイツでそう呼ばれていてそのドイツ法を輸入したため流れをくんでいるからです。

(司法試験の場合、双方の債務が同時であること、そのため履行するまで履行しないという抗弁である点に注意)

同時履行の抗弁の法律効果とは?

同時履行の抗弁の法律効果とは、相手方の請求に対して自身の履行を拒めることです。

売買であれば、相手の支払い請求に対して、物の引渡しを拒むことです。

同時履行の抗弁の注意点

同時履行の抗弁というのは、原告の請求に対して、履行を拒むことができるのであり、原告の請求権が否定されるわけではありません。

そのため、請求棄却ではなく、引換給付判決がなされることになります。

その理由は、契約においては両者は公平であり、同時履行の抗弁をすることができるのは、担保的な機能が目的だからです。

同時履行の抗弁の要件

同時履行の抗弁の要件とは、次の3つです。

▣ 同一の双務契約上の両債務の存在

▣ 相手方債務が弁済期にあること

▣ 相手方が債務を履行しないこと

互いに債務を負っているということがポイントになります。

もし、相手が債務を履行していなくても、自分自身も債務を履行していなければ偉そうなことは言えません。

そのため、相手が債務不履行であっても債務不履行に基づく請求ができないのです。

同時履行の抗弁と留置権のちがいとは?

同時履行の抗弁と留置権の違いとは、債権であるか、物権であるかということです。

同時履行の抗弁は、債権なので物を扱わなくても成立し得るため範囲はより広いかなと思います。

両者は似ている部分が多いものの、権利として性質が異なります。

主な違いとしては、2つあります。

留置権は、担保を提供して消滅することができる

留置権は、第三者に対しても引渡しを拒否できる

留置権は担保物権であり、被担保債権のために認められる権利であるから代り担保を提供することによって消滅することができます。

また、物権であるから第三者に対しても引渡しを拒否できます。

しかし、同時履行の抗弁は契約にもとづく債権であるから当事者のみに認められ、第三者には対抗できません。このようなちがいがあります。

共通点は次のようなものがあります。

趣旨が、当事者の公平にもとづくこと

引渡しを拒むことができること

引換給付判決がなされること

同時履行の抗弁と留置権のどちらも認められる場合は、両者は競合します。

そのため、どちらも主張することができます。

というわけで、今回は以上になります。お読みいただきありがとうございました。