賃貸人たる地位の移転と一種の「状態債務関係」とは何か?

賃借権に対抗力があれば、貸主の地位は当然移転する

賃貸人たる地位の移転というお話で、貸主の地位が変わる理由を一種の状態債務関係だという説明があります。

わたしたちの多くは借主として、あまり気にしないところかと思いますが、

収益物件であるビルやマンションでは建物が譲渡され貸主が頻繁に変わります。

もし土地賃貸である場合に、土地が譲渡され貸主が代わった場合どうでしょうか。

賃借権に対抗力がある場合、

つまり、建物を持っている場合は、譲受人に賃貸人たる地位が当然移転し、貸主が交代します。

これは判例(T.10.5.30)でも認められており

新法により明文化もされました。

実際には土地建物問わずそこに人が住んでるわけで、「貸主変更の通知」というものを出しますので、当たり前というかあまり問題にならないですが

なぜ当然に移転すると考えていいのか?についての説明の仕方として以下ふたつの考え方があり混乱の多いところです。

・貸す債務が「状態債務」であるから

・賃貸する意思が合理的意思解釈であるから

状態債務とは何か?

大雑把に言えば、

状態債務とは所有権と貸主の地位が一体であるということ

所有者が賃貸しているという状態を債務として受け継ぐという意味で、賃貸人たる地位は、譲渡により当然移転するということの根拠に使われました。

しかし、ご存知のとおり、賃借権の対抗力があるかないかで結論は分かれます。賃借権に対抗力が無い場合、賃貸人の地位は移転せず、明渡しを請求されます。売買は賃貸を破るなどと言われてきた帰結です。

この状態債務という考え方では、賃借権に対抗力がある場合にのみ当然移転するため、一貫しません。

したがって、状態債務では、対抗力の有無によって区別される理由が説明できないわけです。

この辺りの批判は、けっこうあります。

状態債務という概念は、ドイツ法から持ってきたものですが、

ドイツでは、賃貸借関係を否定するための理論だそうで、対抗力がある場合に当然承継するという結論を導く根拠に使うのはめちゃくちゃなわけです。理由もなく関係ないことを言っているということになります。

そこで、単純に合理的意思解釈で説明できないかというわけです。

賃貸している物件を売るわけですから、譲渡人は賃貸借関係から離脱する意思だと言えます。

かたや、譲受人としては、対抗力が付いているため賃貸借の負担があり、自ら使用することもできない物件を購入するので

貸主となって賃料を得ようという意思に解釈するのが合理的です。賃借権が無ければ、賃借人に占有を主張されませんし、もとより所有者として自由に利用できるはずです。

取引上、登記と現況は必ず確認しますしこれで十分説明できると言えます。状態債務という概念を使うのは基本的には誤りです。もし使う場合は概念の違いや対抗力の有無による結論の差まで説明できなければならないのでご留意ください。