詐害行為取消権とは?取消しできる行為をわかりやすく解説【判例まとめ】

※法律は一文が長くなります。スマートフォンの方は横画面にしていただくと読みやすいかもしれません。

今回は、詐害行為取消権についてです。

イメージが湧きにくいのか苦手としている方が多い気がします。

詐害行為取消権とは?

詐害行為取消権とは、債務者が財産を処分した場合、債権者が、その行為を取消してしまうことを指します。

※法律行為の取消しを裁判所に請求する

資力が乏しい場合はとくにですが、借金を負った債務者は、財産を隠したりするため自宅の登記を移したりします。

このような財産を減少させる行為を不当なものとして取消すわけです。

詐害行為取消しの要件とは?

ざっと詐害行為取消権の法律要件を確認すると

▣ 被保全債権は詐害行為前に発生したこと

※取消しの対象となるのは、「被担保債権の発生後」にされた行為に限られることは、改正で明文化されました。

▣ 財産権を目的とする法律行為であること

▣ 債務者に詐害意思があること

▣ 無資力であること

※裁判では、「受益者が善意だったこと」と「債務者の資力が回復したこと」は、被告である受益者が立証です。

似たようなものとして、債権者代位権があります。これは権利をただ行使するだけでした

ところが、詐害行為取消権のように「取消し」となると、権利関係が変動します。

そのため、詐害行為取消権には「転用」が認められていません。

詐害行為取消権の法律効果とは?

詐害行為取消権の効果とは、流出してしまった財産の返還請求として、流出原因である契約を取消すことです。

これは、借金を返すための財産さえ保全できればよいため、必要最小限度で行われます。

債務の履行を確保するだけの財産を責任財産といいます。

財産逃れはよくあって、家を売ったことにしてじつは知人で裏でつながっているとか、というようなことがあります。

そうはいっても、他人の財産ですから、本来は介入は許されないはず。

それで、必要最小限にとどめていますので、どのような行為が取り消されるものに該当するのかを判例で確認する必要があります。

詐害行為取消権が判例で認められた行為とは?

債務者のどのような詐害行為を取り消すことができるのか、判例の考え方を確認していく必要があります。

結論としては、

詐害行為と評価されないものは、通常の「財産分与」と「相続放棄」くらいです。

試験的にはこれを覚えておけば十分でしょう。

基本的に「処分」する行為は詐害行為とされています。

・「弁済」は詐害行為取消の対象か?

『弁済は、原則として詐害行為とならず、いち債権者と通謀し他の債権者を害する意思をもって弁済したような場合のみ詐害行為となる』
(最判昭33.9.26)

・「相続放棄」は?

『相続放棄は積極的な減少ではなく、増加を妨げる行為であるから当たらない』
(最判昭49.9.20)

・「遺産分割協議」は?

 『遺産分割協議は財産権を目的とする法律行為であるから、詐害行為になり得る。』
(最判平11.6.11)

これは、相続財産が誰のものになるかがを決めるものですので、財産権を目的としていると評価されています。

・「財産分与」は?

 『離婚の財産分与は詐害行為にならない。
 もっとも、金額が不相当に過大だったり、財産分与をよそおっていると思われるような場合は詐害行為にあたる』
(最判昭58.12.19)

・「賠償債務を超える離婚慰謝料」は?

 『慰謝料支払いの合意は原則、詐害行為にならないが、賠償額を超えた部分は詐害行為になる。』
(最判平12.3.9)

・「代物弁済」は?

『代物弁済は、目的物の価格にかかわらず、債務者に詐害の意思があれば詐害行為となる。』
(大判大.8.7.11)

・「担保供与」は?

『抵当権設定は、債務者の義務ではなく他の債権者を害するため詐害行為となる。』
(最判昭32.11.1)

『一部の債権者に対する抵当権設定登記が詐害行為に当たる』
(大判明.40.9.21)

・「不動産の処分」は?

『不動産は消費隠匿しやすくなるため金銭に代えることは、相当な価格であっても詐害行為となる。もっとも、売却の目的が正当なものであるときは、詐害行為とならない。』
(大判明.44.10.3)

これは、無資力であることが要件とされていますが、無資力というのは、債務超過にあるとか、不動産を持っていないとかそういう状況です。

判例の考え方としては、いち早くほかの債権者を出し抜いたような場合は取消されるなあという印象です。

場面設定として想定されるのは中小企業で、債権者は通常多いからです。

しかし、ただでさえ破綻してるのに、債権者平等を貫こうとすると結局、債権はまったく回収できません。

さらに債権者平等の弁済を強いられるのは強制執行、清算の場面に限られるのですが、詐害行為取消しの場面も結局、破綻に際した状況がほとんどなので債権者平等を認めるべきであるという価値観に流れていくのだと思います。

というわけで、以上になります。

お読みいただきありがとうございました。