【図解】抵当権の物上代位とは?基礎からわかりやすく解説

宅建・行政書士などを勉強していても民法、権利関係なる分野はちょっとよくわからないと思います。

説明を聞いてもよくわからないということがふつうにあります。ということで資格学校とかより深く、専門書よりわかりやすくを目指してみます。

※法律のお話はひとつの文章が長くなります。スマートフォンの場合は横画面にしていただくと読みやすいかもしれません。

抵当権とは?どういう権利なのか?

これをわかっているだけで、抵当権に関するあらゆる問題が解決します。

試験の暗記用に判例を簡潔にまとめた記事

【判例まとめ】物上代位の対象とは何か?

ってのを書いてますのであわせてどうぞ。

抵当権とは?

抵当権とは、『抵当権を持っていない一般債権者より優先して弁済を受けることができる権利』を言います

結果的に「競売」にかけることが多いのですが、競売する権利というわけではないです。

競売以外の方法で売却したときでも、建物がお金に代わった場合には、そのお金から弁済してもらうことができるからです。

抵当権を設定している不動産を「担保目的物」「目的不動産」などと呼びますが、この目的物から派生的に生じた金銭については受け取ることができるのです。

抵当権の力がこの金銭を受け取る効力であり、これを「交換価値を把握する効力」と表現しています。

抵当権設定をする場面というのは、たいていは銀行が融資する場面です。

優先弁済を受ける権利ということは、優先的に借金を返してもらう権利と考えてもよく、なぜ優先的かというと、一つの不動産を使って複数の融資をすることがあるからです。抵当権がたくさん付されるのです。

抵当権にはかならず、その元である融資という債権があります。この借金を優先的に返してもらう権利です。

意外かもしれませんが、すべての金額を返してもらうまで、この権利が生き残ります。考え方としては、最後の一円を返してもらうまで抵当権が残ります。

また、もとの債権といっしょになってますので、債権が移転したらいっしょに移転します。

あくまでも「優先弁債権」という権利ですので建物にこだわっておらず、所有者(=債務者=抵当権設定者)は建物を使えますし、貸すことももちろんできます。

建物じたいはどうでもよくて、金銭的な価値を把握したいからにすぎないのです。マンションとかビルとかテナントが居た方がたいていは資産価値が高いので貸した方がメリットがあったりします。(自分は昔、住んでる一軒家をイメージしてたので、よく分からないことが多かったです…)

抵当権の物上代位とは

物上代位とは、簡単に言うと、『抵当権の目的物以外のモノに抵当権を及ぼすこと』をいいます。

「物上代位」というのは、抵当権がもっている独特の性質です。

まずは、抵当権がどういう権利なのかあらためてよく確認しておくと、抵当権は、優先弁済を受ける権利です。

あくまでも権利なのは、どういうカタチで弁済を受けるのかはある程度自由ということで、抵当権を設定した不動産を売却するということだけに限られないからです。

その不動産の賃料でもいいし、保険金でもいいし換金の方法はいろいろあるからです。

抵当権の物上代位の意義は何か

抵当権の物上代位の意義は、抵当権者が債権を回収できることです。そのためにだれよりも「優先される」という優遇がすばらしい価値になります。

なぜ、「優先」という概念がでてくるのかというと、

『債権者平等原則』と言って、債権を回収しようとするときは、原則、債権者はみな平等で、ほかの人より先に貸し付けたから先に回収できるということはないからです。

債権者は債権者でも、抵当権者は特別な債権者というわけです。これに対して、抵当権などの担保を設定していない者は「一般債権者」と呼ばれます。

『優先的に弁済を受けるため、売れば建物が金銭に代わるという価値を支配できる』

これは、抵当権が発揮する効果です。抵当目的物以外のモノにも抵当権が代位して及ぶ、この効果が、物上代位となります。

物上代位という言葉

物上代位という言葉ですが、

物上代位の「物」とは、担保の目的物(土地、建物ですね)で、「代位する」というのは、代わりの立場に立つということです(位なので立場というようなイメージ)

したがって、担保目的物に発生している権利を行使できるという意味になります。

火災で建物が滅失した場合、建物の持ち主は、火災保険金を受け取る権利が発生します

この権利を奪い、持ち主の代わりに受け取る立場にとってかわることができます。

※抵当権を設定している建物がお金にかわるとき、そのお金を「なし崩し的実現」と表現します。表現なのであんま気にしない方がいいです。(ちょっと変なので)

例:火災保険金は、保険をかけた建物の交換価値のなし崩し的実現であるから、抵当権の効力は火災保険金に及ぶ。

抵当権の物上代位を行使するための要件とは

要件とは、法律要件とも言いますが、「権利が成立して法律効果が発生するために必要な条件のこと」です。

抵当権の物上代位を行使するための要件とは、「払渡し又は引渡し前の差押え」です。

抵当権の物上代位を行使するためには、換金されたものを「差押え」する必要があります。

そして、差押えするタイミングは、換金されて支払われる前です。

したがって、要件は、「払渡し又は引渡し前の差押え」となります。

もし、換金されてだれか別の人に支払われてしまっては、受け取る立場というひとつの椅子はもう無くなってしまうので、座れなくなります。

そこで、さきに座るために、支払い前に差押えが必要になるのです。

抵当権の物上代位の対象とは?

物上代位ができるのは、火災保険が典型例で、試験でもよく見かけます。

(認められるのは建物の抵当権の場合なので、土地の抵当権では物上代位できないことがひっかけです。)

しかし、火災保険だけではありません。

「賃料」や「売買代金」も「損害賠償請求権」も同じです。発生した金銭債権を受け取ることができます

抵当権はその設定した担保目的物である不動産から、優先弁済(金銭)を受けることができる権利だからです。

建物というかたちにはあまりこだわっていないようです。

◆判例で認められた物上代位の目的となるもの

・売却代金
M.40.6.19

・損害保険金請求権
M.40.3.12

・賃料
H1.10.27

・転貸賃料
T12.4.7
※原則、物上代位を行使することができないが、賃借人を所有者と同視できる場合は、物上代位できる

ーーー発展

・第三者不法行為に基づく損害賠償請求権
T.6.1.22

・買主行使による買戻し代金債権
H11.11.30

抵当権者の物上代位行使と一般債権者の差押えが競合したら?

ここからは司法試験などのすこし発展的なテーマになるかと思います。

物上代位は、債務者が有する債権を抵当権者が差押えます。

ところが、物上代位を行使するためには、債務者が「払渡し又は引渡し」をする前にその債権等を差押えることが必要です。

つまり、現実問題として、一般債権者の差押えと抵当権者の差押え(=物上代位)が競合することになります。

こうした競合する場面で、どちらが優先するか?言い方を変えると抵当権者は物上代位できるのか?という問題になります。

判例を確認してみます。

一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押え

判例いわく、

『両者の優劣は 「一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達」と「抵当権設定登記の先後によって決まる。

したがって、差押命令の第三債務者への送達が抵当権設定登記より先であれば、抵当権者は物上代位できない』
(最判平10.3.26)

ということだそうです。

一般債権者の差押命令が、第三債務者に送達されることで処分禁止効が発生します。

一般債権者に対する関係では、抵当権設定登記がこの送達より先にあれば物上代位できます。

結び;物上代位の理解のために

物上代位についての頻出知識というのは、「物上代位は差押え前」という点なのですが、

その背景にある「抵当権は優先弁済権という権利」というところがより重要な知識ではないかと思っています。

抵当権というのは○○権という「権利」、物上代位は、物上代位という名詞で「取って代わること」、こうした言葉についてもこまかく注意を払っていくと法律がすこし読みやすくなるかもしれません。

根本的な部分、これがあらゆる場面で理解を助けてくれるなと感じています。

というわけで、今回は以上です。ご覧いただきありがとうございます。