【図解】抵当権とは何か?物上代位とは?基礎をわかりやすく解説

宅建を勉強していても民法を中心として権利関係なる分野はちょっとよくわからないと思うので、資格学校より深く、専門書より分かりやすくを目指してみます。

抵当権とは?どういう権利なのか?

これをわかっているだけで、抵当権に関するあらゆる問題が解決します。

発展的なお話は、物上代位の判例をまとめてみるってのを書いてますので合わせてどうぞ。

抵当権の効力① 基本的な性質とは?

結論から言うと、

抵当権は『優先弁済を受ける権利』です

結果的に競売にかけることが多いですが、競売する権利というわけではないです。競売などで売却したとき以外でも、建物がお金に代わった場合には、そのお金から弁済してもらうことができるからです。

抵当権を設定している不動産を「担保目的物」「目的不動産」などと呼びますが、この目的物から派生的に生じた金銭については受け取ることができるのです。

抵当権の力がこの金銭を受け取る効力であり、これを「交換価値を把握する効力」と表現しています。

抵当権設定をする場面というのは、たいていは銀行が融資する場面です。

優先弁済を受ける権利ということは、優先的に借金を返してもらう権利と考えてもよく、なぜ優先的かというと、一つの不動産を使って複数の融資をすることがあるからです。抵当権がたくさん付されるのです。

抵当権にはかならず、その元である融資という債権があります。この借金を優先的に返してもらう権利です。

意外かもしれませんが、すべての金額を返してもらうまで、この権利が生き残ります。考え方としては、最後の一円を返してもらうまで抵当権が残ります。

また、もとの債権といっしょになってますので、債権が移転したらいっしょに移転します。

あくまでも「優先弁債権」という権利ですので建物にこだわっておらず、所有者(=債務者=抵当権設定者)は建物を使えますし、貸すことももちろんできます。

建物じたいはどうでもよくて、金銭的な価値を把握したいからにすぎないのです。マンションとかビルとかテナントが居た方がたいていは資産価値が高いので貸した方がメリットがあったりします。(自分は昔、住んでる一軒家をイメージしてたので、よく分からないことが多かったです…)

抵当権の効力② 物上代位という性質について

物上代位というのは、抵当権がもっている独特の性質です。

まずは、抵当権がどういう権利なのかあらためてよく確認しておきくと

抵当権は、あくまでも優先弁済を受ける権利です。

なぜ、優先という概念がでてくるのかというと、

『債権者平等原則』といって、債権を回収しようとするとき、原則、債権者はみな平等で、ほかの人より先に貸し付けたから先に回収できるということはないからです。

『優先的に弁済を受けるため、売れば建物が金銭に代わるという価値を支配できる』これは、抵当権が発揮する効果です。この効果を、物上代位といいます。

抵当権を設定している建物がお金にかわるとき、そのお金を「なし崩し的実現」と表現します。表現なのであんま気にしない方がいいです。(ちょっと変なので)

例:火災保険金は、保険をかけた建物の交換価値のなし崩し的実現であるから、抵当権の効力は火災保険金に及ぶ。

物上代位という言葉ですが、

物上代位の「物」とは、担保の目的物(土地、建物ですね)で、「代位する」というのは、代わりの立場に立つということです(位なので立場というようなイメージ)

したがって、担保目的物に発生している権利を行使できるという意味になります。

火災で建物が滅失した場合、建物の持ち主は、火災保険金を受け取る権利が発生します

この権利を奪い、持ち主の代わりに受け取る立場にとってかわることができます。

もし、これがだれか別の人に支払われてしまっては、抵当権はなくなりませんが、受け取る立場というひとつの椅子はもうなくなりますので、座れなくなります。

そこで、さきに座るために、支払い前に差押えが必要になるのです。 (正確に言うと、「払い渡し又は引渡し」)

賃料や売買代金も損害賠償請求権も同じです。発生した金銭債権を受け取ることができます

なぜなら、抵当権はその設定した担保目的物から、優先弁済(金銭)を受けることができる権利だからです。

建物というかたちにはあまりこだわっていません。

抵当権者の物上代位行使と一般債権者の差押えが競合したら?

物上代位は、債務者が有する債権を抵当権者が差押えますが、物上代位を行使するためには、債務者が「払渡し又は引渡し」をする前にその債権等を差押えることが必要です。

つまり、現実問題として、一般債権者の差押えと抵当権者の差押え(=物上代位)が競合することになります。

こうした競合する場面で、どちらが優先するか?言い方を変えると抵当権者は物上代位できるのか?という問題になります。

判例を確認してみます。

一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押え

『両者の優劣は 「一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達」と「抵当権設定登記の先後によって決まる。

したがって、差押命令の第三債務者への送達が抵当権設定登記より先であれば、抵当権者は物上代位できない』
(最判平10.3.26)

一般債権者の差押命令が、第三債務者に送達されることで処分禁止効が発生します。一般債権者に対する関係では、抵当権設定登記がこの送達より先にあれば物上代位できます。

動産先取特権者の物上代位の場合は?

おまけとして、今度は、抵当権ではなく、動産先取特権です。抵当権と異なりという権利を表示する登記簿という「公示」がありません。

判例いわく

「一般債権者が仮差押えをしたにすぎない場合、差押後に得られる転付命令まで必要であるから物上代位は妨げられない
したがって、動産先取特権者は物上代位できる。」
(昭和60.7.19)

転付命令まで得ていない差押えの段階ではまだ特定に至りませんので、物上代位できるとのことです。

これは、転付命令まで送達された第三債務者(差押えられた債権の債務者)が、不測の損害を被ることがないように「払渡し又は引渡し」前に物上代位することを求めていると考えられているからです。

なお、事例の流れとしてはこんな感じでした。

①物上代位の目的となる債権について、一般債権者が仮差押え

②その後、 動産先取特権者が、差押え・転付命令を得て物上代位を行使。

③動産先取特権者は、「一般債権者の仮差押えでは物上代位は妨げることができない」と主張。

抵当権の効力③ 第三者との関係

抵当権は物権です。侵害行為があれば、物権的請求権が認められます。

抵当権者は、不法占有者に対して、明渡し請求できるか?

これが問題になり妨害排除としての明渡し請求が認められました。

『抵当不動産所有者において、適切に維持管理することが期待できない場合
抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる。』
(最大判平11.11.24)

理由として、

抵当不動産の所有者は、抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権原を設定することは許されず、抵当不動産を適切に維持管理することが予定されているからです。

競売は抵当権の実行の手続きですが、占有屋という怖い人を占有させて高く売却できないように妨害することがあります。

したがって、所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者についても妨害状態の排除を求めることができます。

・占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められること。

・占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があること

この事案では占有権限の設定を受けていない不法占有者だったのですが、判例(平成17.3.10)では、占有権限の設定を受けていても明渡し請求ができるといわれました。

抵当権の効力④ 法定地上権

むずかしく思えるかもですが、じつは、めっちゃカンタンです。

法定地上権は、抵当権の効力です。法定地上権というのは、

・土地と建物を同じ人が所有していて

・抵当権実行された結果

・別々の人が所有することになった場合

建物に地上権を認めましょうという制度です。

この本質は『建物所有と土地所有が異なる』ということです。

建物所有と土地所有が別々の人になるともんだいが起こります。端的に言えば、自分の家が人の敷地に建っていることになります。(もしくは、自分の家の敷地に他人の家が建っている)

こういった状態だと、 問題ありです。地上権があるものとみなしましょうというそれだけです。

土地と建物が同じ人の所有

抵当権設定・競売

別々の所有

こういったステップを踏むことになります

土地・建物が別の人の所有であれば、賃借権なり、地上権がすでにあるはずです。法定地上権はイレギュラーなため、突如として問題あり状態になってます

地上権がでてくるもう一つの場面とは?

借地権です。
借地権もおなじような構造でして、他人の敷地に、じぶんの建物をもっている状況です。

借地権というのは、賃借権という弱い権利に、地上権類似の強い機能をみとめたものです。

法定地上権も借地権も土地所有と建物所有が異なるという状況で、建物の行くすえのために定められたものなのです。

このように、抵当権の本質として、優先弁済権という権利であるというところから出発して考えていくとわかりやすく、覚えやすいです。

頻出知識というのは、「物上代位は差押え前」という点なのですが、その背景にある「抵当権は優先弁済権という権利」というところがより重要な知識です。

頻出知識というのは、「物上代位は差押え前」の背景にある「抵当権は優先弁済権という権利」というところがより重要な知識で、これがあらゆる場面で理解を助けてくれます。