原因において自由な行為理論とは?事例から分かりやすく解説

 

原因において自由な行為の理論とは?

 

判断能力が無い状態でも、そうなった「原因」を創り出した時、「責任を問える状態」だったのであれば、処罰を認めるという理論です。

犯罪の結果を引き起こしてしまった場合、処罰を求めるのが、国民の感情で、なんとか責任を問えないか?というところから打ち出されました。

そもそも、刑法では、正常な判断ができないような状態にあると、責任を問えません。

犯罪は成立していても処罰できないようになっています(38条)

≫※ 精神疾患と責任能力については踏み込んだ内容はコチラで書いてます。

 

たとえば、「精神疾患薬物飲酒による酩酊」です。

飲酒や薬物でおかしくなって、犯罪を犯し、処罰されないというのは妥当ではありません

そのため、処罰するための理論構成が必要でした。そこで、この「原因において自由な行為理論」を導き出しています

 

原因において自由な行為の「原因」とは何か?

 

原因というのが、「飲酒」や「薬物乱用」で、原因行為は、飲酒行為、薬物摂取行為となります。

原因行為をするとき私たちは、飲酒や薬物使用を控える自由が誰にでもあります。

それでもなお、あえて飲酒や薬物乱用を行っているので、犯罪の結果について責任を問うことができるのです。

 

精神疾患のある人は、そもそも薬物に手を出してしまいやすい

 

飲酒や薬物使用の場合、責任を問われるわけですが、

精神疾患のある人が薬物に手を出してしまい犯罪を犯した場合、必ず処罰するというのは酷では?という研究データもあります。

 

たとえば、2015年のラグナー・ネスボーグの研究により

精神疾患(うつ病や統合失調症など)を患う人は

薬物使用や深い飲酒をしてしまう傾向が高い、と

科学的に認められています。

Substance use disorders in schizophrenia, bipolar disorder, and depressive illness: a registry-based study

 

そもそも、精神疾患に大きな問題があり、根本的な原因を作っていると考えられます。

そして、精神疾患を引き起こしてしまう原因として、たとえば、貧困、虐待、暴力、愛情不足などが「諸悪の根源」ではないかと推察されます

もちろん、事実認定や量刑・執行猶予や保護処分などでバランスをとることができますが、法として、 不確実な裁量ではなく、精神障害で苦しむ方の権利保護を確立したいところです。

また、後天的に引き起こされる精神疾患についてはきわめて社会的なものです。周囲の偏見や受け止め方、関わり方に大きく左右されます

 

精神病者への風当たりはわりと強め

 

以下の研究では、精神疾患の人への偏見は根強いことが確認されています

統合失調症やうつ病の人と同じ空間に居たくない」

と感じる人が多く、偏見は根強く残る。

2012年パーカー・マギンらの調査) (2017年ジュリア・ソウィスローらの研究

 

かりに、家族やパートナーなど、具体的に頼れる人がいるとしても、社会一般の理解や助けは乏しい状況にあると言えます

すなわち、精神疾患においては、周囲など社会的つながりの中でのストレスから精神を病みます。

さらに、精神を病んだ状態から周囲の偏見や受け止め方によって、追い打ちをかけられるように、二度殺されます。

そして、最終的に自己嫌悪となり自ら否定し、三度目の刃を刺すことになります。

 

精神病者は、自由な意思決定ができているのか?

 

上記、ラグナーの結果をみると、

本当に“自由な意思決定のできる状況 ” で薬物に手を出したのか?という点に疑問が残ります。

 

また、薬物というのは流通が規制されています。そのため、健康な一般人は、基本的に手に入りません。

こころの弱った人にとってはカンタンに売ることができるので狙われ裏社会とつながりやすく、どんどん近づいてきます

もし、薬物を服用し、暴力などの犯罪を犯しその犯罪行為時に、故意(未必の故意)があったとしても、その故意は、非常に追い込まれた状況のもとに生まれたものかもしれません。

追い込んだのは彼らの近くに居る人たち家族や友人、会社の同僚、上司、取引先である可能性が非常に高いわけです。

 

シーナ・ファゼルのレビュー論文

 

以下の論文をみると、薬物乱用をしたことそのものには結果の責任を求めるのは妥当ではないかもしれません。

精神疾患と暴力系犯罪や殺人との結びつきは、たしかに強い。

しかし、どうやら、それは薬物乱用とあいまってその傾向が高いのではないか、と考えられる。

Schizophrenia and Violence: Systematic Review and Meta-Analysis

 

原因において自由な行為理論は、「責任」の検討です。

したがって、犯罪を招いた者の事情をよく検討しなければならないはずです。

 

たしかに、「どのような経緯で原因行為に至ったのか」これを掴むのは難しいかもしれません

しかし、精神疾患者や薬物利用者の「詳細な状況確認」とそれについての「科学的な考察」、その上での判断が求められます。

原因において自由な行為理論は間違いなく必要な法理ではあるのですが、その認定は、慎重に行うべきことに注意です。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。