民事訴訟法のよくわからない論点のひとつだと思います。
これも実は、内容は簡単です。
ただ、単純に教科書などがいろいろな前提となる情報をとばして記載されているので
いまいち入ってこないというにすぎないものです。
とくに、場面設定を丁寧に考えるととてつもなく簡単な論点なのでご安心ください。
訴えの取下げ
訴えの取下げの条文には以下があります。
② 訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。
ただし、本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げについては、この限りでない。
効力を生じないということは、取下げられないということで、
この限りではないということは、取り下げられるということです。
「本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げ」というのは、場面として、この後お話する債務不存在確認に対する給付請求があります。
本訴原告は、債務不存在確認請求をします。
これに対して、被告は、給付請求の反訴を提起し、反訴原告となります。
不存在確認請求は、給付請求により取り下げざるを得なくなりますね。
そこで、反訴原告が、給付請求の反訴を取り下げてしまうとどうなるでしょう。
これが認められてしまえば、相手の訴えを退けるウルトラCになってしまうことは想像に難くないでしょう。
261条2項ただし書の意味
261条2項ただし書については、反訴の取下げも「訴えの取下げ」に当たるため、このように言っています。
ここでは、反訴されたケースを想定した場面設定です。
261条2項ただし書で、本訴取下げがあった場合に反訴を取下げるときは、相手方の同意を得る必要はないとされていますが
かならずしも相手の同意なく取下げの効力が生じるわけではありません。
例外となる場面があります。それが債務不存在確認訴訟の本訴に対して、給付請求の反訴がなされたというケースです。
このようなケースのお話をしているのが、ここで、よくある論点です。
たいていは、「本訴原告の同意を欠く反訴取下げは有効か?」という趣旨のことが書いてあると思います。
条文を素直に読めば、効力を生じないに対して、この限りではないといっているため取下げの効力が生じると考えることができます。
そうすると、反訴取下げはできることになりますが、本訴原告の同意がない場合に効力が生じると明言しているわけではなく、
この条文がある存在意義として、こちらが訴えたとしても裁判を受ける権利があるため、本当に同意なく取下げの効力を認めても良いのかという問題意識があります。
261条2項ただし書のとくある事例
よく問われるケースというのは以下があります。
(原則として有効であることはお忘れなく)
これに対するanswerとしては
「同項ただし書は適用されず、反訴取下げは無効である」とされます。
同項ただし書が、本訴取下げの後には、反訴取下げに本訴原告の同意を要しないとしている理由は、
反訴について、「本訴原告が、請求棄却判決を得ることへの期待」は保護する必要性が低いために定められているからです。
逆にいえば、保護する必要性が認められるようなときは同意が必要(必要とすべき)といえます。
もっとも、債務不存在確認訴訟では、債務者は、本訴では債務不存在確認を提起するしか手がありません。
しかし、同一債務の給付を求める反訴提起後の債務不存在確認の本訴は違法とされてしまいます。そうなると、取り下げざるを得なくなってしまいます。
このような実態を考えると債務不存在確認請求をした場合の本訴原告が、反訴において請求棄却を得ることへの期待は保護すべきとされているのです。
そこで、同項ただし書は適用されず、反訴取下げは無効である。」
というわけで、いかがでしたでしょうか。
それはそうだよなという感じがして拍子抜けした感じがあるかもしれませんが、今回は以上です。
お読みいただきありがとうございました。