リツイートしたら著作者人格権を侵害することを認めた判例にはどこまでビビればいいか?

まずは、今回のポイントです。

point

論点

(1)リツイートという行為自体が、著作者が持つ「氏名を表示される権利」を侵害するか?

(2)HTMLなどの情報(コード)も「侵害情報」に当たるか?

結論

リツイートは氏名表示権を侵害し著作権法違反になるよ。

リンク先に著作者の氏名が入っていても、リツイートに表示されないと権利侵害になるよ。

損害賠償責任までは判断されていないけど発信者情報開示はされるかもよ。

著作権を侵害したツイートには気をつけよう!

先日、話題にもなっていたのですが、

著作権を侵害するつもりはなかったのに、知らずにリツイートしたら権利侵害の疑いがあるということで発信者情報を開示を認める」

という最高裁判例が出ていました。

結論から言うと、出典には気をつけよう!著作権を侵害したツイートには気をつけよう!情報リテラシーを高めよう!って結論になってて勉強になります。

というのも、リツイートしたことで損害賠償責任が発生するとかそういったことについては判断していません。

もちろん、著者のツイートをリツイートしてそれが違法だと言われたわけではありません。だれかが勝手に著作者に無断で作品を使用してツイートしていました。

つまり、もともと著作権を侵害したツイートがあって事情を知らずにリツイートしてしまったら発信者情報開示をされたというもの

なので、ふつうにTwitterを利用していれば、せいぜい削除要請されるくらいで大きな問題はないです。

今回、特に問題になってたのは、

Twitterのシステムの仕様

リンクを共有するときとかリツイートしようとすると、リンク先の見出しの一部とアイキャッチ画像が、小さく表示されるじゃないですか。

あれが、Twitterのシステムの仕様なのでわたしたちはどうすることもできなのですが、それでも著作権侵害になると判断されたので物議を醸したわけです。

最判令和2.7.21によるとリツイートも著作権を侵害する

それではこの最判令和2.7.21の判例を分析していきます

「① リツイートは、著作物の利用をしているわけではないから、著作権法(19条1項)の要件に当たらない。

これについて判例いわく

法律の文言上、著作物の利用することで公衆に提供・提示する場合に限定していない。

また、著作者と著作物との結び付きに係る人格的利益を保護するという趣旨は、著作物の利用を伴うか否かにかかわらず法律に妥当する。

したがって、著作物の利用によることは必要ではないから著作権法19条1項の要件に当たり違反である。」

まずリツイートが著作権法に該当しないと主張しましたが、著作権を守るという趣旨が広く及ぶので作品を利用していなくても問題なく該当することを確認しています。

② ツイートを閲覧するユーザーは、リツイート記事中の画像をクリックすれば、氏名表示部分がある元の画像を見ることができるから、著作者名を表示している。

これについて判例いわく、

リツイート記事中の表示画像をクリックすれば、氏名表示部分がある元の画像を見ることができるとしても、リツイート者が著作者名を表示したことになるものではない。

理由はこうです。

たしかに、リツイート記事中の画像をクリックすれば、氏名表示部分がある元の画像を見ることができる。

ただ、それでも、画像が表示されているツイートの画面とは別のウェブページに飛んで、そこに氏名表示部分があるというにとどまり、ツイートには表示されていない。

それに、閲覧するユーザーは表示された画像をクリックしない限り、著作者名の表示を目にすることがない。

リンク先のページにいけば著作者の名前が分かるのですが、ツイート上の画像に表示されていないのでアウトとなったわけですね。

③ Twitterの仕様によって表示画像はトリミングされた形で表示されたので、そのせいで氏名表示部分が表示されなくなった

この主張に対しては判例いわく、

「リンク画像表示データの送信(リツイートのシステム上の作用のことです)は、氏名表示権の侵害を直接的にもたらしているものというべきである。

本件においては、本件リンク画像表示データの流通によって、著作者の権利が侵害されたものということができる

したがって、各リツイート者は、「侵害情報」である本件のリンク画像表示データを特定電気通信設備の記録媒体に記録した者ということができる。

ここでは、HTMLテキストが侵害情報に当たることを認めています。そして、リツイートの行為が権利を侵害すると言っています。

残念ながら、なぜTwitterの仕様であるにもかかわらずリツイートした者が氏名表示権の侵害を直接もたらしていると言ってよいのか?という点は明らかになっていません。強いて言えば、著作者を表示したことにならないからというのあいまいな理由です。

というわけで今回は、著作者の権利が保護されるかたちになりました。

氏名表示権とは©みたいなマークがあったりしますがああいった著作者が誰かを表示するもので、著作者人格権といって無断で使われないよう法的に保護された権利です。

そして、HTMLというのはプログラミング言語のコードでいわばディスプレイの裏側にあって、このように表示しろと命令をするもの。この関係というのは、たとえば

プリクラで美肌モードとかの指令を出すと、被写体の私たちとはまったく別物の画像がでてきます。この場合、もともとのわたしたちとプリクラに映し出された美肌のわたしたちは同一であるといえるでしょうか。いずれにしても結果として出てくる画像はプリクラの仕様で決まります。

これを写真に置き換えてみると

もともとの写真には著作者の名前が表示されていますが、リツイートする際にTwitterの仕様で著作者の名前が消え、外見はもともとの写真と別物の画像が表れます。リツイートするわたしたちとしては、Twitterの仕様にはどうすることもできません。

たしかに、うかつにリツイートできなくなると萎縮効果を生じさせます。ここが一つの問題意識となるわけですが、一方、著作者からすれば、自身の名前の表示なく、転々と作品が流通されてしまうため、これを食い止めたいというのは当然理解できるところです。そういう意味では、本件弁護人のように発信者情報開示を求めていく姿勢は、目を見張るものがあるなあと感心しました。

まとめ

賛否両論あると思うんですが、今回の一件って、そもそも出典を確認しなかったり、どういう情報なのか精査しない点、一人一人の情報リテラシーに問題意識を持っています。

中には、裁判官はTwitterをやらないから分かっていない!みたいな批判をしている方もいますが本当にそうなのかなーとは思います。

唯一の反対意見の林裁判官も反対しているのは本件の開示請求を認めた結論部分だけです。その理由はリツイートした方がとうてい非難に値しないからとのことです。

実際、林裁判官は「SNSによる発信や拡散には社会的責任が伴う」「リツイートじたいが著作権を侵害しうるものである」ということについては認めています。

クリエイターや学者の方々からしてみれば「引用」というものによく注意をはらうべきというのは当たりまえの話。表現の自由とか萎縮効果とかは本来関係ないものかなと思います。

著作権を侵害しているツイートをリツイートした場合、客観的には違法行為に加わっているのですが、責任を負うかどうかはまた別問題。著作権を侵害しているのかどうかをTwitterでいちいち調べていくのは現実的ではないですしねえ

結局、この辺の問題って規制をしてもいたちごっこですし、ユーザーとプラットフォーマーの両者が情報リテラシーを高めていくしかないわけです。それがほぼ唯一の策であり、最善策かなと思います。

ユーザーも出典に気をつける、プラットフォーマーも管理の注意を怠らない。こうしたそれぞれの配慮によって、わたしたちがよりよいサービスを一緒に作り上げていければと思います。

カテゴリー: Case