【図解】転用物訴権とは?わかりやすく判例まとめ【論証あり】

※法律の文章は長くなりがちです。スマートフォンでご覧の方は横画面にしていただくと読みやすいかと思います。

今回は、転用物訴権についてまとめてみます。これは、不当利得に基づく返還請求ができるのか?という話です。

通常は、利益を得た人と損失を被った人の間には契約など債権の発生原因があると思います。

ところが、利益を得た人と損失を被った人に直接契約関係が無いような、不当利得を素直に認めにくいという場面があります。

借りたモノの修理をしたときが典型例ですが、修理代金の請求を、修理を依頼した人ではなく、所有者であるモノの貸主に対して請求することができます。

修理によって上昇した価値が別の人に移っているときに訴えることができる権利ということで転用物訴権です。

転用物訴権の要件とは

転用物訴権の要件とは、不当利得の要件のうち、「法律上の原因があるか」です。古い判例では「因果関係」の要件で検討していました。

すなわち不当利得の要件が認められればいいので、不当利得の要件を検討していけば転用物訴権という言葉をわざわざいう必要もないです。

703条は、「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした物は、その利益の存する限度で、返還する義務を負う」です。

不当利得の要件

・法律上の原因がないこと

・利益があること

・損失があること

・(社会通念上)因果関係があること

転用物訴権の論証とは「法律上の原因」

というわけで、さきに、結論というか、論証します。

論証といっても、抽象論ではないので、

【 P ⇒ Q 】

【○○というとき、△△と考える】

という関係を意識してください。

「請負代金債権が無価値になった場合、賃貸借契約を全体としてみて、所有者が対価関係なしに利益を受けたと認められるとき、賃貸借契約の所有者が、法律上の原因なく利益を受けたというものと解する。」

※「無価値」と言ってますが、回収不能ないし著しく困難となった場合を意味してる)

「場合」と「とき」があるのでわかりにくいかもしれませんが、「対価関係なしに利益を受けたと認められるとき、法律上の原因が無いと考える」となります。

したがって、不当利得が認められます。

判例が考え方を示しているのでこれを使っていきます。

転用物訴権の判例1.騙取金弁済(最判昭49.9.26)

事案としては、債務者が騙取(横領)して得た金銭で弁済したというもの。まあこれはサッとでいいです

騙取された金銭で債務を弁済した場合、不当利得返還請求が認められるかについて

「騙取者が、社会通念上、被騙取者の金銭によって、債権者の利益をはかったと認められるだけの連結がある場合、因果関係があるものと解すべきである。」

とされました。また、

「債権者に悪意又は重大な過失がある場合は、金銭の取得は、法律上の原因がないものと解すべきである。」

このように因果関係は、社会通念上の因果関係で足りるものとして広く認め、法律上の原因の有無で縛りをかけていきます。

転用物訴権の判例2.ブルドーザー事件(最判昭45.7.16)

こちらの事案は、ブルドーザーをリースしており、これを賃借人が修理業者に修理してもらっていた。

そして、動産賃借人が倒産し、動産修理代金の回収が不可能になった一方、動産賃貸人は利益を受けたという事例です。

判例いわく

「無資力のため、修理代金債権が無価値となってしまった場合、利得は修理人の財産労務によるものであるから、直接の因果関係がある」

とされ、差戻し審で、

「修理費用を賃借人負担とする特約があっても妨げとはならない」

とされました。ようするに、

賃借人が修理による利益を受け取ったことは、もともとの所有者と修理業者の間に因果関係があることを否定する理由にならないという立場を示しました。

この判例は因果関係で考えてるっぽいです。

転用物訴権の判例3.建物改修工事の事例(最判平7.9.19)

 

事案は、建物の賃借人が改修工事をしてその請負代金をだれが払うか問題になったというもの。

建物賃貸借には権利金を払わなくてよいかわりに工事代金を負担するよう特約されていた事実がありました。

建物賃貸借契約の賃借人が、業者に建物を改修工事した。

その後、無断転貸をしたため建物賃貸借は解除。

そして、賃借人が無資力となった。

請負代金を未回収の損害がある一方、賃貸人には修繕された建物という利益がある。

この賃貸借契約では、賃借人にとっては権利金が免除され、その代わり工事代金は賃借人負担という特約をしていた。

判例いわく

「請負代金債権が無価値になった場合、不当利得返還請求をすることができるのは、賃貸借契約を全体としてみて、建物所有者が対価関係なしに利益を受けたときに限られる。」

と、所有者が法律上の原因なく利益を受けたということを重視するかんじです。

理由としても

何らかの形で利益に応じた負担をしたときは法律上の原因にもとづくといえる。

としています。

また、返還を請求するのでは、二重の負担を課すことになるからであるともいってまして、

法律上の原因の要件で考えているっぽいのと、ブルドーザー事件の射程を限定したという判決です。

踏み込み過ぎると問題の所在はよくわからない

利益・損失はわかりすいですが、その「結びつき」については曖昧です

因果関係と法律上の原因がないってのがどうちがうのかはよくわかりません。

このもやっとした部分がまさに転用物訴権の論点なわけです。

判例では、因果関係は無視する方向ですので、「どういう場合に、法律上の原因があるといえるのか?」という問題意識だと思います。

言語化することがほぼ不可能だと思います。

ただ、「因果関係がある」としても、「法律上の原因はない」ということは、要件としても事実としてもあると思いますが。

それで、因果関係は社会通念であっさり認めて、法律上の原因の要件で、全体的な事情を検討して、事実を拾っていくことになるかと思います。

想定される転用物訴権事例は「賃貸」と「請負」

想定されるのは、

賃貸借契約と請負契約(修理か工事)があり、請負代金の回収が困難となって請負と関係は無いけど所有者に責任転嫁できるか?

ってかんじです。

なぜなら、転用物訴権の構造として、二つの契約があって、中間に居る人が無資力になり報酬債権が回収できない。

それじゃあ、契約関係ないけど、利益を得ているから請求できるか?みたいな話で、場面はわりと限定できます。

それこそ、ブルドーザーみたいに、リース契約して工事して倒産してっていうかんじですよね

まとめ

ブルドーザー事件は賃借人が賃貸人に費用償還請求権等の請求権を持たない場合でも、認められ得るものでした。

このような事例について、因果関係でとらえ広く認められうるところを、法律上の原因で考えることになったため、

実質的には判例を変更したものと考えられ、二重負担の危険は減少したと評価できます。

もっとも、賃貸借関係の対価関係の不均衡が考慮される根拠が十分ではないので全面否定説からは批判があるようです。

・ 契約関係自律の基本原則からすれば当事者間での清算が妥当である
・ 所有者に対する債権者代位権行使、無償の財産移転を詐害行為として取消請求などによるべきである。
・ あるいは、動産先取特権やこの事例のように不動産保存、工事の先取特権が成立しうる。

などなどです。そうはいっても、先取特権らへんは、登記が求められること、請負の先履行であることなどから、どのように債権担保すればよいのか?はまだ問題として残りますが、、深追いはやめましょう。

というわけで、以上です。ご覧いただきありがとうございます。