テキストだと、いきなり「権限外の行為の表見代理」と「基本代理権」などといった言葉が出てきたり、
表見代理もいろんな種類がでてきたり、用語が整理されていなかったり
読者としては置いてきぼりにされて戸惑います。
しかし、内容自体はなんてことありません。
場面設定によって、仕分けしてるだけです。
というわけで、今回は表見代理をとりあげます。
※スマートフォンをお使いの方は横画面にしていただくと読みやすいかもしれません
» 【初心者向け】「法律行為」とは?意思表示を要素とする行為である【わかりやすく解説】
表見代理とは?
表見代理とは、簡単にいうと
本来、代理する権限は無いにもかかわらず、パッとみて、代理権があるようにみえる場合、代理権があるときと同じ法律効果を発生させる制度をいいます。
そう、厳密な定義は「制度」です。
しかし、「表見代理が成立し~」などと、見かけ上の代理といった意味の名詞(体言)で使っていると思わしき表現があるため混乱の一因となっています。
つまり、契約が成立して相手に効果が発生していると主張すると際、「表見代理が成立する」と言うことがあるのです。
表見代理の意義とは?
表見代理の意義は、取引の相手方を保護することです。
無権代理だとしても取引の相手方からみれば、ぱっと見代理なわけですから、信頼を保護するため代理を成立させたいのです。
そのため、相手方が、表見代理を主張することになります。
本人と無権代理人との間に、代理権の存在を信じさせるだけの特別な事情がうかがえる場合、それを信頼した相手方のため特別に認められます。
「表見代理」が特別に成立することによって、「本人に効果が帰属する」ことになるのです。
つまり、表見代理は、「無権代理の場面での処理の一種」で、取引の相手方は、「契約の履行」を主張できるということです。
そのかわり、取引の相手方は「善意無過失」(無権代理であることを知らないこと)が必要となります。
表見代理と無権代理のちがいとは?
表見代理と無権代理の違いについてですが、この二つが似ているのは、表見代理が、無権代理の場面のひとつだからです。
無権代理とは、代理権が無いにもかかわらず、代理人を名乗る者が、代理行為をした場面を広く指します。
そして、表見代理は、無権代理の場合に、契約の相手方が代理の効果が成立することを主張すること(その制度)です。
実際には、「代理権があるか、ないか」しかありません。
代理権がない場合に代理と同じ結果を導くことを表見代理と呼んでいるという言い方の問題です。
無権代理は、代理権を持たない者が代理人として法律行為をすること。
表見代理は、無権代理が本人に効果帰属する制度
よく使われる表見代理は、相手方が代理を主張することを便宜的にあらわした用語。
代理が成立する場合とは?
無権代理と表見代理の違いを考える際、要件と効果が異なるため、
代理が成立する場合をおさえておく必要があります。
代理が成立するには、「代理権」と「顕名」が必要でした。
「代理」とは、本人のためにすることを示して、本人の名で、意思表示をし、法律効果を直接本人に帰属させることです。
(すべての契約を本人がしなければならないのでは厳しく経済活動が発展しないため、私的自治の原則を拡充する目的で定められています。)
法律行為に代理が成立するためには、「代理権があること」、「顕名があること」が必要になります。
そして、「代理権」が無い場合を無権代理となります。
無権代理が成立する場合とは?
それでは、代理権が無いにもかかわらず、相手方に「顕名」をした場合はどうなるでしょうか?
これが「無権代理」で、このような例は、悪徳な業者が行うことがありますが
無権代理の場合、要件を満たしていないため、本人に対して効果が帰属しません。
本人からすれば、自分の知らないところで契約が行われるのは怖いことです。
一方、相手方からすれば、取引をしたはずなのに契約が認められないのでは不安定な地位となります。
そこで、相手方には4つの選択肢が法律によってきめられています。
そのうちのひとつが、「表見代理を主張して契約の履行を求める」ということなのです。
【相手方の4つの選択肢】
・ 本人に催告をする
・ 契約を取り消す
・ 無権代理人に責任を主張する
・ 本人に表見代理を主張する
表見代理が成立する場合には、
相手方が、代理人に代理権があることを信じ、そう信じることももっともであると認められる事情が必要です。
※契約取消しをする場合、「無権代理であったことについて善意」である必要があり、
さらに、(取引は活かす方向にあるので)本人が「追認」した場合は取り消すことはできません。
もし、無権代理人に責任を主張する場合、損害賠償請求をすることができますが
善意無過失である必要があります。(契約の履行を求めるのは現実的ではない…)
表見代理の3つのパターンとは?
表見代理は、無権代理の場面なので、代理権が無いのですが、表面的には代理権があるように見える状況で、3つのパターンがあります。
① 代理権を与えられていないのに、代理権があると取引の相手方に表示した、ウソのパターン。
② 代理権を与えられていたが、与えられていた権限を超える取引をするというような、やり過ぎたパターン
③ 代理権を与えられていたが消滅し、そのあと、消滅したはずの代理権を使う、流用パターン
あくまでも、実際に行った取引をする権限はないので、無権代理です。
ただ、いずれも取引の相手からすれば、代理権があると思ってしまうような状況ですので、外観上は有権代理であるような無権代理です。
表見代理における基本代理権とは?
とくに、ややこしい表見代理は2つめのパターン。
「② 代理権を与えられていたが、与えられていた権限を超える取引をする」
このふたつめのやり過ぎたパターンというのが、「何かしらの代理権がある」ことから、それが流用、悪用されたものです。
このような何かしらの代理権のことを「基本代理権」というのです。
取引を行った者が、何かしらの代理権は与えられていたけれども、実際に行われた取引をするための代理権はなかった。
このようなときが「権限外の行為の表見代理」です。
【状況のポイント】
代理して行うことができる権限の外にある行為を行った。
表面上はパッと見て、代理が成立しているようにみえる。
実際に行われた取引をする権限は無い。
しかし、その他の何かしらの代理権を持っていた。
「売買」をする代理権が無くても、「賃貸」する代理権は与えていた場合、それは、「基本代理権」となります。
基本代理権というのは、代理できる権限を持っている場合、その権限のことを指して使われます。
よくある例としては、
・銀行に行く時間がなくてお金を引き出してほしいといって代理してもらったところ、勝手にローンを組んだ
・100万借入れまでは代理権を与えていたけれども、500万借入れた
とかです
表見代理の相手方からはどう見えるか?
基本的には取引の相手方からすれば代理権があるんだろうなと思うものですが、
代理権があると信じることができるくらい正当な理由があればそのまま取引が進みますので、本人に取引の効果が帰属します。
逆に、以下のような怪しい場合もあります。
・ 高額な買い物
・ 連帯保証
・ 代理人だと言ってるけど、一方的に儲かるうまい話
したがって、この辺りを事案によって見極める必要があります。
おわりに
というわけでかんたんにまとめです。
実務では、金融機関や不動産業者は、書類が揃っているだけでは注意を尽くしたとは言い難く正当な理由は無いと判断されてしまうと考えられています。
というわけで、以上です。お読みいただきありがとうございました。