憲法判断と合憲限定解釈の事例をわかりやすく説明してみた

そもそも憲法判断は事案の解決だ

憲法判断が問われるのはあくまでも、民事訴訟(あと行政訴訟)や刑事訴訟の中で違法性を主張していくものですが

憲法判断は正直、違憲判決をしたときの社会に与える影響とか変動が大きいです。変な話、原告一人がどうなろうと社会は変わらないので、なるべく避けようとしたり、

あとは原告を救済するにしても、法律を違憲とすると改正しなくてはならないので、

法令は憲法に適合しているけれども、原告に対する法律の当てはめが間違ってるよ

と判断をしたりするわけです

こうした事案解決に向けた判断の技術がいくつかありそのひとつが合憲限定解釈というものです。

法令は合憲であることが前提

本来、法令は合憲性が推定されるのが原則です。

しかし、精神的事由(とくに、表現の自由)については、例外として、違憲が推定されます

二重の基準論という、精神的自由については、経済的自由よりも厳しく審査しなければならないという考え方があるんですが、

このように「厳しく審査する」ということは、「違憲に傾く」ということを意味します。

この辺の理由は、さまざまですが、たとえば

表現の自由が侵害されるような規制法令があるとして、

合憲性が推定されてしまうのでは、司法はどうしようもなくなってしまいます。

法律を変えようにもそのための手段は言論であって表現の自由ですから、そもそもそれを制限されてて上手く変えることができなくなってるのということです。

こんな状態のことを「民主政の過程により回復できない」状態と説明されたりします。

合憲性が推定されないとすると、国(や公共団体)が、合憲であることを立証しなければならないです。

でまあ、本来は合憲が原則なんで、違憲を避けようとするわけです

ブランダイス・ルールとは?

ブランダイス・ルールとは、

憲法判断は事件の解決にとって必要な場合以外は行わないといういくつかのルールをまとめたもの

このうち、日本の場合、二つのルールを採用しています。

それが、ブランダイス第4ルールとブランダイス第7ルール

1.ブランダイス第4ルール

ブランダイス第4ルールとは、憲法判断そのものの回避。違憲の争点にふれず、事件の法的解決をしてしまい、違憲合憲の判断を行わない方法

たとえば、恵庭事件(札幌地判昭42.3.29)

被告人が自衛隊の電話線を切断して起訴されたんですが

これに対して、「自衛隊が9条違反だから無罪である」といって争った事例。

この判決で、

「そもそも、被告人は、自衛隊法121条の構成要件に該当しないから、

犯罪が成立しないとして無罪!

自衛隊については判断する必要がなし!」

こうして、9条の解釈には触れなかったものです

この方法の採用が許されるのか?というと次の二つを根拠に説明されます

私権保障の原則

具体的事件の当事者の権利を確保することを目的とする原則

司法消極主義

国民から選出されていないこと、

政治的紛争に巻き込まれないこと

このために司法が自粛するため、政治部門の判断を尊重し介入を控えるスタンスのこと

(なお、対概念として、司法積極主義がある。憲法理念を達成するために政治部門の判断に介入していく姿勢)

多数決原理に基づく民主政が機能していない場合、裁判所の関与が不可欠であるから

人権が侵害されたり、少数者の権利を強く保障すべきときは例外として司法積極主義をとるべきです。

2.ブランダイス第7ルールとは

ブランダイス第7ルールとは、憲法判断そのものは回避しないけれども、法令の文言とかの解釈を限定したりして憲法に適合するように解釈する方法

たとえば

■ 都教組事件(最大判昭44.4.2)

当該規定の「煽り行為」とは、煽り行為一般を指すのではなく、

特に違法性の強いものを指す、と狭く解釈するのが合憲限定解釈である。

■ 全農林警職法事件(最大判昭48.4.25)

「“争議行為“のうち、違法とされるものとそうでない者との区別があり、

さらにそこから違法とされる争議行為にも違法性の強いものと弱い者との区別を立てる。

したがって、処罰されるのは、違法性の強い争議行為に限られる」

違法になるものならないものと区別して、さらに違法性の強いもの弱いものに区別するので、二段階で範囲を限定していくから「二重のしぼり」

■ 税関検査事件(最大判昭59.12.12)

「“風俗を害すべき書籍、図画”は、

専らわいせつな書籍、図画を意味するので明確性に欠けることはない」

■ 福岡県青少年保護育成条例事件(最大判昭60.10.23)

「“淫行”とは、

青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいう」

こうして、規定は、合憲な解釈が成り立つ!として違憲判断にならないように救済するわけです。

さらに、事例によっては、原告を救済する必要もあったりするんで

「(適用が)法令の解釈を誤った違法がある

という処理をすることで実質的に違憲の判断を下してたり。

合憲限定解釈は、規定の解釈を狭めることで、規範を限定します。

そうすると、法令自体の違憲判断を避け、規定を合憲として救済するのと同時に、あてはめで本件の行為は、違憲とすることも可能になるのです。