刑法おすすめの概説書・基本書をランク付けしてみた

1位 井田良「講義刑法学・総論」

この本は、とにかく詳細です。自分が何度も繰り返し使ったもの。

網羅性、詳細な内容、中立性を保ちながらの論点の考察がよくされているなという印象です。

もちろん、論証とかも作りやすいんじゃないかと思います

そして、違法性ってなんだっけ?刑法の目的って何?っていうのを何度も考えさせられました。

難しい部分もあるんですけど、刑法って試験だけを意識しちゃうとどうしても刑法の最も大事な部分、哲学的なところがなおざりになっちゃうんで

学説の対立って避けては通れないよなーと改めて思ってます

井田先生って、ほんとにいろいろな本出されてます

執筆に非常に熱心な方で、とても読み手を意識した記述をこころがけているのではないかと思ったり。物書きとしてプロだなあと感じます。

しかし、その表現というかレトリックそれが逆に難しくしちゃってるかなーと思う面はわりとあります。

「難しく言ってるな」、とかこれは「小説を気取ってるのか?」というのはあると思います。

刑法をある程度深く学ぶこと、そしてそれが比較的わかりやすいことのバランスとかを考えて自分がよく使っていたなーと思います。

2位 大谷實「刑法講義総論」

ご存じ刑法の大先生です

ハッキリした見出し、太字、青字、グレーの網掛け、スペースをとらない注釈など、読みやすさNo.1で1位にしたかったんですが、井田先生の方が深い考察で中立性が高かったんで2位にしております

ただ、主張はありますが自身の学説に偏ってるわけではなくて、それぞれの学説をちゃんと挙げてくれてますし、判例も抑えてます

とくに申し分ないんですが

あ、ひとつだけあるとすれば、たまーにもう少し説明がほしいなということはあります。

わかりやすいたとえでいうと、共犯と各論なんですけど

業務上横領罪って業務者に加わった場合どう考えるか?って論点があります。

「真正身分犯だから65条の趣旨に照らし1項で共犯成立し、2項で業務上横領、単純横領が成立する」

とあっさり終わっていて、そしたら、総論の65条に戻らないといけないじゃないですか。

いや、戻れよって感じですが、面倒だから理由付けもつけてくれよって思ったり(笑)

それくらいです

いずれも基本的に丁寧で分かりやすい記述なんですが、意外にも出身大学は同志社でして、なるほどだからかと思ったりしました。(笑)

関西圏の教授って気取った?感じが少なくて親近感を抱かせてくれる気がします(笑)

ただ、この先生は法制審議会、人権センター理事長と華々しい経歴の持ち主

刑法だけでなく、刑事政策についても熱心でして、著書の「刑事政策講義」も

「刑法犯検挙人員における精神障害者比率は0.7%で少ないよ!」

「空き巣は午前10時から午後4時、殺人は午前2時から午前4時、性犯罪は午後4時から午後6時に多く、犯罪と時刻は関係があるよ!」とか

科学的なアプローチから、犯罪を考察したり、刑事政策を問い直してくれておりましてなかなかおもしろくておすすめです

3位 今井 猛嘉, 小林 憲太郎, 島田 聡一郎 , 橋爪 隆 共著「リーガルクエスト刑法総論」

ご存知リーガルクエストシリーズの刑法総論です。

中堅学者が刑法の解説というか紹介をする本です。

そして、なんといっても薄くて気軽に読めます。

レイアウトの美しさや読みやすさ、説明のやさしさは随一です

個人的にはあまり使ったことがないんですが、他の法学部の人に絶大な支持を得ているようなのでいれときました。(自分は共著で初学者向けだったら下にある佐久間先生の刑法が好きです)

リークエのいいとこは薄くて手軽なところなんですが薄いがゆえにカットされているのか共犯のところは整理がついてないなーという印象

いろんな説があって、どれからどれが導かれるのか?が混乱すると思うんですが、私は賢くないのでけっこうあっちいったりこっちいったりで(笑)

統一感がなくて本文で○○説である。といったり、かっこ書きで△△説と呼ぶとなっていたり、なんでかっこ書きにしたの?みたいな

でもそれは細かいはなしなんで、ふつうに使う分には十分すぎる内容ととっつきやすさがあります。

4位 山口厚「刑法総論」

3位までにしようと思ったけど外せませんでしたねー

個人的には一番好きです。

薄いのにとてつもないボリュームが詰まっている濃縮還元100%

⇓下にもある青本に比べて、見出しが見やすくなってます。

それから、判例や論文の引用がすさまじい(笑)

青本は総論・各論あわせてこの本くらいの薄さなんで、カットされていたような部分もありますが、この本は丁寧に論理展開してくれています。

たとえば、

共同義務違反について

「二人以上の者が犯罪的結果を生じさせやすい高度の危険性を含んだ共同行為を行うに際して

共同者の各人に共通の注意義務が課せられていると認められる場合に

各人がその注意義務に違反したことによって犯罪的結果を生じさせたときは

共同した過失を認めることができる」

青本は

「過失犯の共同正犯は

犯罪共同説から肯定され、

そこでは共同義務の共同違反を成立要件とすることによって

限定的に肯定しようとする」

その通りなんですが、さすがに行間が広すぎて試験的にもキツイと思います

なので、青本より丁寧に論じてくれていて使いやすいです。

(この薄さでこのボリュームをまとめるなんておそろしいのですが…)

番外編(初学者におすすめ) 佐久間修・橋本正博・上嶌一高 「刑法基本講義」

こいつは、民法では超有名な佐久間先生の「民法の基礎」の刑法ver.として企画されたもの。

一冊で総論・各論をまとめてくれております。ちなみに、民法の佐久間先生とは関係がないそうです。

わたしは、共著は記述がぶれるんであまり好きではないですが、リークエよろしくわかりやすさはピカイチです。

とくに、佐久間先生はもともと経済学を学んでいて転部したようで最初のうちは

「さっぱり意味がわからなかった」「何度教科書を読んでも、他の教科書を読んでみても分からない」「あきらめずに何種類かの教科書を比較した苦い経験」などと苦労されたみたいです。同じく他学部から参入した自分を安心させてくれます(笑)

そのおかげか、とても読み手を意識した記述、文章表現や具体例だったり、タイトルの付け方を工夫されているナイスな一冊。

個人的には、見出しの付け方や段落のまとめ方がほかの教科書よりわかりやすくていいです

著者も自分の本を「踏み台」にしてほしいと言ってくれており、はじめの一冊としては最適かなと思います

そのわりには十分すぎるくらい詳しくて濃い内容なんですけどね

たとえば、本文では簡潔に記述し、かっこ書きで学術的な表現を使って、発展学習のコラムで詳細な背景などを書いてくれてたり。

番外編 (刑法各論で最もおすすめ)山口厚 「刑法」青本

各論についても基本的には上の本の各論編を選べばよいかと思います。

しかし、各論って総論に比べてあっさりしているので山口先生の青本がよくまとまっていていい感じです。

各論部分は、初学者でも読みやすいかなと思っており、個人的にも好きなんでおすすめです。

それにしても、一冊のこの薄さでまとめるなんてすごい…

この本自体は、読みこなすのが大変なんで一通り学んだ人が改めて山口先生のすごさに気づくような本なのかなーと思ってます。

結果無価値論てどうよ?と思っていたんですが、何度読んでも勉強になります。

一通り学んだら刑法入門にもチャレンジしてみてください。味わいが深いです