承継的共同正犯とは?判例の考え方【刑法解説】

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今回は「承継的共同正犯」についてです。

承継的共同正犯は最高裁では判断(平成28年決定)はあるものの、まだ明確な判断を下したものはないようです。

※なお、下級審裁判例では承継共を認めるものが多いです

リーディングケース(大判昭和13.11.18「夫唱婦随事件」)

承継的共同正犯のリーディングケースと考えられているものです。

事案は以下となります。

・夫が強盗のため、とある居宅に行き、殺人をした

・妻が、後から夫のもとに着く

・夫が、殺人したことを告げる

・金品強取の協力を求められる

・妻は、これを承諾し、金品強取を容易になるよう協力した

判例曰く、

「強盗殺人罪は、強盗罪と殺人罪もしくは傷害致死罪が結合して、単純一罪を構成するから、殺人を知り、強取行為を容易にしているのは、強盗殺人の一部に加担しているといえる。

したがって、強盗殺人罪の従犯として問擬するべきである」

このように言い、強盗の「従犯」というかたちで、承継的共同正犯をみとめるような方向に判断しました。

はっきりと「承継的共同正犯を認めた」と明言はしていません。

しかし、考え方として認めていると評価されています。

承継的共同正犯を否定する裁判例

責任主義に反する側面があることから承継共を否定するものもあります。

たとえば、共謀の上、こもごも暴行をしたという判例です

これは、部分的肯定説に立ちつつ、「加功前に生じていた結果」について責任を否定しました。

事案としては

まず、A、Bがタクシー内で暴行した。

次に、Cが加わり、事務所内で暴行した。

そして、被告人が事務所に現れ、なりゆきを察知して暴行した。

というもの。

第一審では、共同正犯が認められたんですが高裁で、ひっくり返しました。

判例曰く

「承継的共同正犯が成立するのは、後行者が自己の犯罪を遂行する手段として積極的に利用する意思のもとに、共謀加担し、先行行為をその犯罪遂行の手段として利用した場合に限られる。」

という判断を示しました。

本件でのあてはめは、

「被告人が先行者の暴行を自己の犯罪遂行の手段として利用しているとはいえない」

こうして、全体の暴行については責任を認めませんでした。

共謀成立後の暴行についてのみ共同正犯として認められます。

死傷結果が、だれの暴行によるものか不明な場合

複数の暴行がある場合、だれのどの暴行行為によってけがをしたのかよくわからないことが多いです

本来、「だれのどの暴行からどの傷害結果が生じたのか」、ピンポイントで認定されなければならないはずです。

暴行行為というのは、行為をした瞬間、行為が終わります。

痛みは続くかもしれませんが他の人に承継することがないものです

こういった場合に同時傷害の特例があると思うのですが、これは「共犯関係にない者」に適用される規定で、使えません。

一つの犯罪を分割することができるのか?

承継的共同正犯成立の肯定説は、完全犯罪共同説から導かれます。

完全犯罪共同説は「一つの犯罪を共同して実現することが共同正犯である」と考えるため、

これを根拠にすると、一つの罪名で処罰すべきであるから先行者の行為を認識していれば、承継共を成立してもよいとなります

なぜなら、途中から関与した行為にのみ、共同正犯が成立するのは一罪を分割することになってしまうから。

後行者は、「先行行為と関係アリ」と言ってよいのか?

承継的共同正犯成立の否定説は、因果的共犯論から導かれます

根拠の因果的共犯論によれば、「後行者は先行行為については、物理的・心理的因果性がないので承継共は成立し得ない」のです。

暴行であれば、その瞬間で終わる行為態様なので、そうかもしれせん

もっとも、必ずしも因果性がないとは言い切れないです。

たとえば、強盗罪や詐欺罪といった類型は、因果性があるのではないか?

暴行+窃盗みたいな実質ふたつの行為が必要な類型の場合、因果性がありそうです。

ほかの人間が暴行し、犯行抑圧となり、これを利用して窃盗を行ったりする場合、結論の具体的妥当性を考えると、承継共の成立を肯定すべき場合もありえます。

この「先行行為を利用したか?」という考え方は、さきほどの大阪高裁の判例と近い考え方ですね

基準が明確ではなく、その辺がまだ問題ですが、承継的共同正犯をいかに考えるかは重要なテーマですので、引き続き、判例の動きを待ちたいと思います。

というわけで、以上になります。お読みくださりありがとうございます。