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刑法学における最大の対立というと結果無価値論/行為無価値論で、受験生をおおいに悩ませます。
これは、試験として論点となるわけではなく、
具体的な事例の処理において採用する立場が違い、説明説得の仕方が異なるというものです
結果無価値論と行為無価値論の対立とは
刑法は、「盗んではいけない」など、やってはいけないことであるという評価を前提にして、盗むという行為を禁止する命令をしています。
禁止規範を集めてまとめた法典が刑法典ということになります。
これは、行為を制限する「行為規範」と言われます。
行為規範はいつ機能しているのか
しかし、現実には犯罪をする人の「行為の時」に機能しているのではなく、「裁判の時」認定する規範として機能しています。
これが結果無価値行為無価値の対立の原因となっています。
問題意識は、刑法とは、事前判断であるか、事後判断であるか?
という法律としての機能の話です。
これは結果的に、違法となる範囲が大きく変わるので、処罰範囲の問題が指摘されます。
ただ、違法というのは体系の話なので、責任の段階で処罰範囲を限定できます
そのため、最終的には妥当な結論に落ち着きくはずで、学問的にとても重要ですが、試験や実務ではそれほど困りません。
規範に違反したプロセスとして行為が問題なのか、
それとも、法益を侵害した事実が結果として問題になるのか
そのポイントは、「規範に違反していない人の行為や、モノなどのヒト以外の行為」をどう判断するか?です
結果無価値論・行為無価値論ふたつの論点
「違法性の実質論」と「違法性の本質論」という2つの論点があります。
この2つの論点は、何がどう違うのかややこしいのですが、平たく言えば、次のように整理できます
・違法性の実質=具体論
刑法規範に反するとはどういう意味か?
具体的にどんなことをすると違法なのか
・違法性の本質=抽象論
刑法規範はどんな規範と言えるのか?
(どんな規範に反すると違法なのか?)
違法性の実質とは?
違法性の実質とは、刑法規範に反するとはどういう意味か?という論点です
これはいずれにしても(危険性も含め)法益侵害です。
ただ、結果無価値論が、法益侵害全般を指すのに対し、行為無価値論では、あくまでも行為規範という枠を意識しています。
これは刑法が、「人間の行動(行為)」を、制限するものと考えるからです。
結果無価値論からは、
⇒法益侵害及びその危険
行為無価値論からは、
⇒法益保護を目的とした行為規範に違反すること
というように説明されます。
そういうわけで、人の行為に限定するかどうかで、「範囲が変わる」というわけです。
違法性の本質とは?
=刑法はどんな規範なのか?
これは、違法性の実質で議論した、「具体的に何に違反することが違法なのか?」について抽象的に表現するとどうなるか?です。
そのため、どんな規範のことを指すのかという問いを立てることになります
結果無価値論からは、
⇒「評価規範」です(評価に基づく禁止命令)
刑法とは、禁止や命令の規範ですが、それは、○○することは悪いといったような「評価」が前提にあります。
端的に評価規範に反していることが違法となると考え
したがって、客観的であり、動物による行為なども違法状態ということになります。
行為無価値論からは、
⇒「国民を名あて人とした評価規範」です
こちらはもう少し限定して人間の行為に絞ります。
そのため「違法な状態」は否定されるのです
※ただ、違法では一般人を基準として、責任では具体的な行為者を基準とする、という分け方をするので、その辺りは注意
結果無価値論・行為無価値論の論点ごとの帰結の違い
こちらは不完全ですが、学習当時に自分がまとめていたものです。
見直していないため、間違いもあると思うので修正するかもしれません。
参照していたものは主に井田先生の講義刑法学、あと山口先生です。(リークエもすこし。)
というわけで以上になります。
ありがとうございました。