昭和女子大事件とは?わかりやすく憲法判例解説

今回は、私立大学における学生の自由というお話です。

これは、昭和女子大事件(最判昭49.7.19)といわれています。

無許可で政治活動し登校禁止となったため、これをマスコミに公表したら、退学処分となったので学生たる地位の確認訴訟を提起したという事案です。

昭和女子大事件の事案とは

原告は、昼休みや放課後に法律に反対する署名を集めていました。

学校の生活要録の規定ではそのような活動は学生課に届出て指示を受けることが規定されていたためこれに反する。

被告である大学は、学生手帳に記載されている生活要録に反しているとして、原告を取調べをしました。その取調べの中で、共産党と関わりのある組織「民主青年同盟」に加入していることが判明しています。

生活要録違反を理由に補導、自宅謹慎といった処分を行いましたがその後も週刊誌への寄稿やラジオでの発言を行ったため、退学処分をしました。

これに対して、原告は、被告に対し、学生の地位の確認請求を提起しました。

控訴審では、大学が、学生の思想内容に干渉したとは認められない、退学処分にあたって社会観念上著しく不当であり、裁量権の範囲を超えるものとは解することはできないとしたため原告は上告しています。

昭和女子大事件の判断基準とは

政治的活動を禁止する学則は憲法に違反するか?

権利の保障について、三菱樹脂事件(最判昭48.12.12)を引用し、憲法の自由権規定は私人相互の関係に当然には適用されるものではないとし、直接適用説を否定しあくまでも裁量論にもっていきました

「学則の生活要録の規定は、三菱樹脂事件(昭和48.12.12)の趣旨に徴して自由権などの規定は、私人間に当然には適用はされない。」

憲法19条、21条、23条は、国又は公共団体の統治行動似た敷いて個人の自由と平等を保障することを目的とした規定であり、専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するもので私人相互観の関係について当然に適用ないし類推適用されるものではないというものです。

そして、学校には裁量があることを確認しています。

「大学は、国公立私立を問わず、法律に格別の規定がなくても設置目的を達成するために必要な事項を学則として一方的に制定する包括的権能を有する。学生においても大学で教育を受けるかぎり、規律に服することを義務づけられている。」

本件については、大学側の制約が不合理な制限ではないと結論しています。

「大学が、教育方針に照らし学生の政治的活動はできるだけ制限するのが教育上適切であるとの見地から学内及び学外における学生の政治的活動につきかなり広範な規律を及ぼすこととしても直ちに社会通念上学生の自由に対する不合理な制限であるということはできない。」

教育機関は学生に反省を促す手続きをとる法的義務があるか?

本件では、学則である生活要録への違反を理由に、補導、自宅謹慎をさせ、これに反対したところで、ただちに(他の懲戒処分を行わずにという意味でただちに)退学処分をしています。

この点については、退学処分の前に、本人に反省を促す過程を経るべきであるという主張について、常に補導の過程を経ることが退学処分をする上での法的義務ではないといって、認めませんでした。

「退学処分は、学生の身分を剥奪する重大な措置であることから、学生に改善の見込みがなく学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合にかぎって選択されるべき処分である。そして、退学処分を選択する際、要件の認定にあたっては他の処分の選択に比べて特に慎重な配慮が必要となる。しかし、常に退学処分を行うにあたっての学校に求められる法的義務とまでは解することができない」

ということで、マイナーではありますが私人間効力、大学の包括的権能、政治的活動の自由とわりと憲法のエッセンスが詰まった判例でした。

今回は以上になります。お読みいただきありがとうございました。