今回の判例は、法律を学んでいる学生や一部の弁護士の方々にとっては、他人事とは思えない事件です。
これは、運悪く法律やタイミングの狭間とか谷間に落ちてしまった人をどう扱うかの事例です。
学生無年金障害者事件の事案とは
本件の事案をカンタンにまとめるとこのようになります。
・20歳未満で障害を負ったものに対して障害福祉年金を支給している
・しかし、20歳を過ぎてしまうと救済措置がなかった
・障害福祉年金は、昭和34年法にて、障害基礎年金となり任意加入であった
(※平成元年法にて義務となる)
原告は、国民年金に任意加入しておらず、被保険者資格が無いために、障害基礎年金の不支給処分を受けました
そのため、処分の取消訴訟と国賠請求訴訟を提起します。
障害年金受給対象から学生の除外は違法か?
国民年金制度は立法府の裁量が認められますので
「受給権者の範囲や支給要件については、合理的な理由のない不当な差別は14条違反となる」
というお馴染みの判断基準
判例いわく
と評されました。
受給できない者に対する措置を講じない不作為は違法か?
20歳以上の学生につき差異があり、原告のような者に対し措置を講じていないことについて
立法措置を講じなかったことが著しく合理性を欠くという事は出来ないとされました
そのため、違法とはなりません。
また、原告のような者と20歳前に障害者となった者に差異が生じることも不当な差別的取り扱いにはならないとしています。
こうして、学生をグループ分けして扱うことも不合理とはいえず、違法ではないという判断となりました。
これは、障害の状態になったときが20歳以上の学生で、国民年金の任意加入をしていなかったため、障害基礎年金を受給することができなかったという問題です。
ちょうど、制度の穴に転落してしまったというもので「はざま差別」論です。司法修習の給付と貸与のはざま世代にも似たような法律が変わると起きる現象ですね。無視できません。
というわけで、今回は以上です。
ありがとうございました。