今回おすすめするのは、道垣内弘人教授の「担保物権法 第4版 有斐閣」です。おすすめする人
・司法試験生
・司法書士試験生
・不動産や金融にかかわる仕事をする人
宅建とか行政書士の場合はそれほど使うことはありません。
しかし、将来的に不動産とか金融に携わるのであれば、おすすめできる教科書です。
「道垣内弘人」 担保物権法(第4版)有斐閣
自分の場合は、最初からこれでした。
参考文献として、試験の分からないところの調べものとして利用してきました
といっても、はじめは読めなかったから放置していて、勉強が進むにつれて読めるようになってきたというもの。
長い目でみればコスパは良いはずです。
そのほか、松井先生と安永先生の担保物権法も使ってみましたが、結局こっちに落ち着きました。
本書の構成
この本の目次をみるととてもきれいに整理されてまとまっていることがわかります
体系としては、以下のようになります
留置権
先取特権
質権
抵当権
仮登記担保
譲渡担保
所有権留保
本書の特徴
本書の特徴をメリットとデメリットであげてみるとこんな感じになります。
メリット
‣私見も交えて幅広く解説している
‣シンプルな立場
‣読み始めれば読みやすい
‣引用も多く、しかも最小限の脚注で本文を邪魔しない
‣比較的、金融の実務的な視点に言及しているところは助かる
デメリット
‣レイアウトなどはそれほど見やすくはないのでやる気は必要
‣司法試験でもややオーバースペック
‣前述のとかが、でてくるため、とばし読みしにくい
※(私見はことなる315頁と315の記述)
このように、私見について見解を示されているのも特徴です
読み飛ばしても良いですが、理解を深める場合にはとても有意義です。
行政書士、司法書士、宅建を目指す人にとって基本書は必要か?
結局、不動産や金融にかかわる仕事をする人はあって良いと思います。
なくても仕事にはなるけど、勉強になるし参考になるし、分かりみは深くないですが、深みと正確性は高い
普通に読むのではなく、調べる目的で使えば良いし
また、工場抵当とか船舶とか担保物権の歴史とかも触れてるからコラムとして息抜きに眺めるのも楽しいです。
例えば、ここのコラムでは、担保機能は、債務者がお金を借りるために生まれ、信用を与えることによって発達したとされ、典型的な特徴は、優先弁済を受けられることである、というものです
ところが、一人の債権者が優先されると、他の債権者はそれだけ「回収できないリスク」が高まります
そこで担保物権のあり方について捉え直す議論が進んでおり
その一つの成果が、いわゆる不動産の証券化とか、ジョイントベンチャーとか○○スキームといったもの。
とくに、「倒産離隔」といった高い価値をもつ財産を債務者から切り離して法人化させて所有したりプロジェクトとしたりする方法が生れました。
信託などの発達も分析することができます。
基本書不要論について
結局は、役割の違いがあるため、必要不要で語るのは本質から外れると思っています。
ただ、個人的には、司法試験向けにつくられた本はやっぱり質が劣る印象です。
分かりやすさを重視みたいに言ってますが、覚えるべきフレーズみたいに消化されてるし、表現そのものは格調高い言い回しとか判例条文をそのまま貼り付けてるだけだったり。
たしかに太字にしたり、レイアウトはよいので、「見やすい」ですが、文章の「読みやすさ」はさして変わらないです。
受験生の試験答案という限定された場面では、判例・通説・多数説だけで十分です
しかし、勉強する上では、争点を慎重に検討して理解することはとても重要なことだと思っていますし、それは、試験的にも実務的にも同じです。
この本は、薄くてすっきりしているので、刑法でいえば山口先生の青本に近いものがあり個人的には好きです
というわけで以上です、ありがとうございました。