北方ジャーナル事件とは?事前差止めが許される基準わかりやすく解説【憲法判例解説】

北方ジャーナル事件(最判昭61.6.11)は、裁判所の差止めが、問題視されました。

その絡みで、検閲について定義しています。

そして、名誉毀損と表現行為の衝突ですので、差止めが許される基準について重要な先例を示しました。

北方ジャーナル事件の事案とは?

「北方ジャーナル」という雑誌が、知事選挙の候補者を批判する記事を掲載しようとしました。

掲載内容が過激な言い方だったので、候補者は、裁判所による出版禁止の仮処分を求めました。

で、この仮処分が違法であると損害賠償請求したものです。

仮処分は、検閲となるのでしょうか?

北方ジャーナル事件の論点

仮処分では、表現物を事前に差し止めることになるため、これが検閲に当たるか?事前に差し止めることが許されるか?が問題となります。

検閲に当たるか?という問いに対しては、検閲には当たらないとしています。

ここでは、検閲の定義(要件)が示されました。

「検閲とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象に、その全部または一部を発表禁止を目的として、網羅的一般的に発表前にその内容を審査したうえで不適当と認めるものの発表禁止をするものを指す」

このような定義によれば、

裁判所により、権利の保全として必要性を審査した上で行われる仮処分は、

表現物を事前に差し止める性格ではありますが、検閲の条件に当たらないので検閲ではないということになります。

そうはいっても、「事前に差し止める行為」である点は同じです。そのため、表現に対しては大きな制約となります。

そこで、事前差し止めが許される基準が判断されました。

事前差止めが許容される基準とは?

仮処分は検閲ではないですが、事前抑制であるから厳格な要件が必要とされます。

やはり、個人の名誉の保護と表現の自由の衝突の場面で、いずれも重要な権利であるため慎重な比較衡量となります。

公職選挙の候補者に対する評価というだけで、公共の利害に当たるため、名誉権に優先され、原則、事前差し止めは許されないと評価していますが

例外として、判例いわく

・ 表現内容が真実ではなく、専ら公益を図る目的でもないことが明白であること

・ 重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあること

このような場合、例外的に事前差止めが認められると判断しています。

というわけで今回は以上となります。ありがとうございました。