■ 法定利率
法定利率の改正は以下です。
旧:年5%
新:年3%(3年ごと見直す)
法定利率は金利とバランスがとれていないと合法的に法外な金額を請求できることになり得ます。
近時だと、市中金利は低いので、法定利率が金利を上回っています。この場合、遅延損害金は高額となり、中間利息控除により、損害賠償請求は不当に低い額となります。
複利はおそろしいという話は有名ですが
これは利息がおそろしいほど膨れ上がるということで
もちろんその逆もしかりで、おそろしいほど膨れ上がるということはおそろしいほど減るパターンがあるということです。
それが、中間利息の控除でして
時間がかかるものほど減額が大きいということです。
裁判では損害賠償額を計算するのに、逸失利益というものを考えます。
これは、もし、定年まで生きて働いていたらだいたいいくら稼げたかを平均年収をもとに概算します。
ここからが問題なんですが、定年まで時間をかけて私たちは稼ぎ、蓄積される金額です。
これを賠償金として「今」受け取ることになると、本来なら長い時間をかけて受け取れるはずの大金をすぐに得られることになるため、その時間がかからない分価値が高い金額と考えられます。
つまり、残り10年で、3,000万稼げたとしても、10年分の時間コストを引かなければならないのです。
その時間をお金に換えたものが何かと言うと利息です。この利息が法定利率をもとに計算されることになるのでこの利率が高いとそれだけ引くものも増えて、受け取れる賠償金が少なくなるということです。
時間に応じて発生した分を利息に相当する金額として控除しようと考えるこの中間利息控除が、わたしたちが若ければ若いほど、おそろしいほどに減額されていくのです。
たとえば、(最判平17.6.14)
9歳で死亡したこどもの逸失利益についての判例です。
・計算の基礎とすべき収入は566万円
・稼働年数は18歳から67歳までの49年間
・生活費控除が50%
・法定利率は5%
年間キャッシュフローは
566万×50%=283万/年で、
283万×49年=1億3867万となるはずです
ところが、法定利率5%で割り引くため、3300万となってしまいます。
ちなみに、3%で計算すると、5500万です。
当時の国債利回り1.165%で計算すると、9480万です。
さらに、18歳で死亡していたら、初項1、末項49ですので、5000万になります。
このように、金利の力はとてつもなく、偶然の事情で大きくかわってしまうのです。
わずか1~2%、数年と思うかもしれませんが、この「差」をどう捉えますか。
遅延損害金のような賠償であれば比較的短時間で済みますが
人間が亡くなった場合は期間が長くなりがちです。
その分割引く賠償請求できる金額が減ることになります
法定利率はふだんこそあまり意識しないものかもしれないのですが、とてもセンシティブな時に問題となるためとても大切なことなのです。
たしかに、これまでの固定5%よりは引き下げられ、見直しもあり改善はされましたが、引き続き残る課題ではないかと思われます