刑法学における最大の対立というと結果無価値論/行為無価値論で、受験生をおおいに悩ませます。
これは、試験として論点となるわけではなく、
具体的な事例の処理において採用する立場が違い、説明説得の仕方が異なるというものです
あらかじめ注意を促しておくと、この対立は、刑法の存在意義、そもそも私たちは同じ人間に対して刑罰を科してもよいのだろうか、どうして刑罰を科してもよいのだろうかという非常に根が深く重要な論点です。そして、おそらく結論は出ないと思います。
試験という短期的な視点から言えば、深入りすることではないかもしれません。
それでも、しかし、決して事案解決で差が出ないなら…と、軽くみるべきものではないと思っています。
私自身はこの問題を非常に重要な法律を学ぶ者の責任ですらあると考えています。
※法律はどうしても一文が長くなります。スマートフォンの方は横画面にしていただくと読みやすいかもしれません。
結果無価値論と行為無価値論の対立とは?
刑法は、「盗んではいけない」など、やってはいけないことであるという評価を前提にして、盗むという行為を禁止する命令をしています。
禁止規範を集めてまとめた法典が刑法典ということになります。
これは、行為を制限する「行為規範」と言われます。
刑法が施行、公布され行為規範が条文として告知されていることになっていますが、この段階で行為規範が違法判断する際の対象に含まれるのかというのが
両論の対立のポイントです。
行為規範はいつ機能しているのか
しかし、現実には犯罪をする人の「行為の時」に機能しているのではなく、「裁判の時」認定する規範として機能しています。
これが結果無価値・行為無価値の対立の原因となっています。
問題意識は、刑法とは、事前判断であるか、事後判断であるか?
という法律としての機能の話です。
言い換えると、行為規範としての告知機能を持つのか?とも言えます。
事後判断とは、行為後に明らかになったすべての事情をいいます。
他方、事前判断は、行為後に明らかになったすべての事情のうち、行為時に認識し得た事情」をいいます。
これは結果的に、違法となる範囲が大きく変わるので、処罰範囲の問題が指摘されます。
ただ、違法というのは体系の話なので、責任の段階で処罰範囲を限定できます
そのため、最終的には妥当な結論に落ち着くはずで、学問的にとても重要ですが、試験や実務ではそれほど困りません。
規範に違反したプロセスとして行為が問題なのか、
それとも、法益を侵害した事実が結果として問題になるのか
そのポイントは、「規範に違反していない人の行為や、モノなどのヒト以外の行為」をどう判断するか?です
結果無価値論・行為無価値論ふたつの論点
「違法性の実質論」と「違法性の本質論」という2つの論点があります。
この2つの論点は、何がどう違うのかややこしいのですが、平たく言えば、次のように整理できます
・違法性の実質=具体論
刑法規範に反するとはどういう意味か?
具体的にどんなことをすると違法なのか
・違法性の本質=抽象論
刑法規範はどんな規範と言えるのか?
(どんな規範に反すると違法なのか?)
違法性の実質とは?
違法性の実質とは、刑法規範に反するとはどういう意味か?という論点です
これはいずれにしても(危険性も含め)法益侵害です。
ただ、結果無価値論が、法益侵害全般を指すのに対し、行為無価値論では、あくまでも行為規範という枠を意識しています。
これは刑法が、「人間の行動(行為)」を、制限するものと考えるからです。
結果無価値論からは、
⇒法益侵害及びその危険
行為無価値論からは、
⇒法益保護を目的とした行為規範に違反すること
というように説明されます。
そういうわけで、人の行為に限定するかどうかで、「範囲が変わる」というわけです。
違法性の本質とは?
違法性の本質とは、刑法はどんな規範なのか?で
これは、違法性の実質で議論した、「具体的に何に違反することが違法なのか?」について抽象的に表現するとどうなるか、です。
そのため、「どんな規範のことを指すのか?」という問いを立てることになります
結果無価値論からは、
⇒「評価規範」です(評価に基づく禁止命令)
刑法とは、禁止や命令の規範ですが、それは、○○することは悪いといったような「評価」が前提にあります。
端的に評価規範に反していることが違法となると考え
したがって、客観的であり、動物による行為なども違法状態ということになります。
行為無価値論からは、
⇒「国民を名あて人とした評価規範」です
こちらはもう少し限定して人間の行為に絞ります。
そのため「違法な状態」は否定されるのです
※ただ、違法では一般人を基準として、責任では具体的な行為者を基準とする、という分け方をするので、その辺りは注意
結果無価値論・行為無価値論の論点ごとの帰結の違い
こちらは不完全ですが、結果無価値論・行為無価値論の論点ごとの帰結の違いについて学習当時に自分がまとめていたものです。
見直していないため、間違いもあると思うので修正するかもしれません。
参照していたものは主に、井田先生の「講義刑法学」、あと山口先生の「刑法総論」です。(リークエもすこし。)
私たちは、法律を学ぶ法学徒であり、豊かな社会を守る法律家です。
世の中を生きる私たちの安心や生活を守るためには公正な手続きが欠かせません。その大切な生活基盤を担保するのが仕事なのです。
私たちには強い信念と知識が必要で、これらなくしてはたたかい生き残ることはできません。
勉強熱心な皆さんにもそれだけの才能と責任があると信じています。向上心と謙虚な気持ちを忘れず共ににがんばりましょうー
というわけで以上になります。ありがとうございました。