量的過剰防衛の論証とは?論文答案の書き方をわかりやすく解説

量的過剰防衛の論証や解説は参考となるものが少ないので解説します。

そもそも体系の部分から判例の争点、考え方といったところも

整理されておらず予備校論証テキストでもボリュームが少ないので

真正面から問われた際、書くことが少ないと感じた方も多いかもしれません。

まずは、順番にできごとを整理していくことがポイントです。

量的過剰防衛の論点とは

急迫不正の侵害がある場合に行った反撃行為は正当防衛になり得ます。

しかし、急迫不正の侵害が終わった後にも反撃をした場合、この反撃行為はどのように評価されるでしょうか。

急迫不正の侵害が終了した時点の前後で、反撃行為を分けるか、分けずに一体のものとするかの二つの考え方ができます。

・ 急迫不正の侵害が終了する前の行為と後の行為を分ける

・ 急迫不正の侵害が終了する前の行為と後の行為を分けず一体の行為とする

これは、一連の行為(= できごと・状況)を3つのフェーズに分析するとわかりやすいです。

【防衛】・【反撃】・【追撃】です。

正当防衛と過剰防衛

正当防衛も過剰防衛も急迫不正の侵害が存在しなければ成立せず誤想となります。

もっとも、急迫不正の侵害があっても終わった後に攻撃していればそれは過剰になるのではないかとだれでも思います。

すなわち、ここが正当防衛か過剰防衛かを分ける基準になり得るわけです。

ことばの問題ですが評価としては

正当防衛となるのは【防衛・反撃】

過剰防衛となるのが【追撃】です。

【防衛・反撃】は、急迫不正の侵害が続いている状況によって括られます。

こちらは通常の正当防衛の要件にあてていけば良いので簡単かと思います。

【追撃】ではない、追撃ががないような場合は問題です。

急迫不正の侵害が終わった後にも反撃をした場合のうち、

【防衛・反撃】を一体のものと考える場合、急迫不正の侵害が終了した後の反撃は、

防衛行為に含めて考えられます

しかし、それが量的に過剰(手を出した回数が多いなど)であるため、「量的過剰防衛」となります。

ここで、量的過剰防衛となるか否かによって「違法性が阻却されるか」が検討されることになります。

これが、「量的過剰防衛」と言われるものの論点です。

難しそうに考えられるけれど、急迫不正の侵害が終了した時点で反撃行為を前後に分ける場合、

急迫不正の侵害は正当防衛の成立要件であるため、

正当防衛と別個の単純な加害行為となります。

そうすると論点とならないので、試験では一体の行為ととらえることが前提となると考えることができます。

決め打ちしちゃった方がラクです。

そうすると、「一体の行為とみることができるのか?」が問題意識となります。

量的過剰防衛の問題が難しいのはなぜか

では、なぜこの論点が難しく感じられるのでしょうか。

それは、ここに、「共同正犯」の問題があるからです。

これは整理すればなんてことはないですが、判例を読んで論証とかをみると、このあたりが混ざってて理解しがたくなっていると思われます。

注意点としては、

・ 防衛行為(あるいは防衛としての反撃行為)と追撃行為があるということ

・ その行為を行ったものとその場にいながら行為はしていない者がいるということ

この2つです。

そして、行為者に量的過剰防衛が成立するとなった上で、その行為をしていない者に共同正犯が成立するのかという次の論点へ移るのです。

そのため、行為を一体としてみるという結論になります。

量的過剰防衛となることは基本的には前提です。

論点を整理してみると、

・ 防衛行為と追撃行為があり、この行為者の行為は一体としてみることができるか

・ 一体としてみた上で、行為者は過剰防衛となるか

・ 行為者が過剰防衛となった上で、その場にいた者が共同正犯となるか

この3つです。

なお、ひとつめふたつめはまとめてしまってもさほど変わらず3つの方が丁寧というだけです。

行為を一体としてみるかどうか?

一体としてみるかどうかについて、感覚としては急迫不正の侵害が続いている状況なのかを手掛かりにしていけばいいと思います。

そういう具合に事実関係が並べられているはずです。

そうでなければ、一体ではなく終わってしまうからです。

判例では、

急迫不正の侵害がある間の反撃行為と急迫不正の侵害が終了した後の反撃行為の2つの行為がある場合、

これを一体の行為とみるかどうかは、以下の手掛かりから判断するよう述べられています。

「行為の時間的場所的連続性、侵害継続の有無、防衛の意思、侵害終了後の行為態様を考慮すべきであるとしている」
(最決平20.6.25)

これは、急迫不正の侵害の要件の範囲内と思えばいいでしょう。

状況をみていくという姿勢でありだいたいそんな感じです。

防衛の意思は認められるか

そして、「防衛の意思」が認められるかについて判例では、

「侵害現在時の時点における恐怖、興奮、狼狽といった心理的動揺が侵害終了後の行為の時点で継続していれば(防衛の意思があるから)量的過剰防衛は認められる」(最判平6.12.6)

こっちも明言してないけれど、意思を検討しているので防衛の意思の要件としておきます。行為者(正犯)はこれでよいでしょう。

量的過剰防衛の共同正犯について

こうして、はれて「正犯」が成立しました。

この次の論点に移ると、「行為を行っていないものが共同正犯となるのか?」です。

区別するととてもシンプルで簡単になります。

量的過剰防衛の共同正犯が成立するか?

判例では、共同正犯であるからやはり「意思の連絡」を検討しています。

これを「新たな共謀があるか」という評価基準で示しているのです。
(あくまでも要件は意思の連絡。評価があらたな共謀)

「正当防衛の共同者の一部が量的過剰防衛を行った場合、侵害終了後の行為についてあらたな共謀が成立した場合にはじめて一連の行為全体について共同正犯が成立する」(最判平6.12.6)

新たな共謀があるかがキーワードとして挙げられている教科書の説明が多いですが、

それ以外は特段覚えることではないからです。(ケースとして○○~という場合、は必然的に覚えるのだろうが)

それほどむずかしいものではないことがわかります。

ただ、体系的な理解が必要にはなっていて、教科書を書くひとたちにとっては前提であっても学ぶ人たちからしたらそこを丁寧に説明してよと思うかもしれません。

覚えるべきフレーズは、「新たな共謀があると言える場合、一連の行為に共同正犯が成立する」くらいで、あとは理解すればよいです。

ここは抑える必要がありますが、あとはかっこよく書きたいかどうかの意識で覚えればよいのではないかとおもいます。

ということで、今回は以上です。お読みいただきありがとうございました。