2017年(平成29年度)宅建 権利関係 解答・解説

 

民法改正については「結論が変化するものまとめ」で宅建に関わりそうなところをカンタンにまとめてるのでどうぞ

 

 

平成29年度

 

【問1】 代理に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 

 

1 売買契約を締結する権限を与えられた代理人は、特段の事情がない限り、相手方からその売買契約を取り消す旨の意思表示を受領する権限を有する。

最判昭34.2.13によると、代理人は、相手方から取消しの意思表示を受ける権利を有します

2 委任による代理人は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復代理人を選任することができる。

条文の通りです(104条)

3 復代理人が委任事務を処理するに当たり金銭を受領し、これを代理人に引き渡したときは、特段の事情がない限り、代理人に対する受領物引渡義務は消滅するが、本人に対する受領物引渡義務は消滅しない。

復代理人は、代理人と同一の権利義務を負います(107条2項)そして、最判昭51.4.9によると、金銭等を受領したときは本人に引き渡す義務を負います。さらに、代理人にも引渡す義務を負い、代理人に引き渡した時は本人に引き渡す義務は消滅します。

いずれにも引き渡す義務がありいずれかに引き渡せば足りるということです。

4 夫婦の一方は、個別に代理権の授権がなくとも、日常家事に関する事項について、他の一方を代理して法律行為をすることができる。

夫婦は、日常の家事に関する法律行為について連帯して責任を負います(761条本文)

そして、最判昭44.12.18によると、同条は、相互に他方を代理する権限を有することを規定しているとしています。

こたえ 3

 

【問2】 所有権の移転又は取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 

 

1 Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合、Bが甲土地の所有権を取得するのは、取得 時効の完成時である。

時効の効力は起算点にさかのぼります(144条)そして、最判昭35.7.27によると、所得時効完成の時期を定めるにあたっては、必ず時効の基礎たる事実の開始した時を起算点として決定すべきとしています。土地所有権の取得時効の基礎たる事実は「占有した」ことです(162条1項、2項)

2 Aを売主、Bを買主としてCの所有する乙建物の売買契約が締結された場合、BがAの無権利について善意無過失であれば、AB間で売買契約が成立した時点で、Bは乙建物の所有権を取得する。

Aに所有権が無い以上移転は観念し得ず、ただちに所有権を取得するわけではありません

このように他人の権利を売買の目的としたときは、売主は買主に権利を取得して移転する義務を負います(560条)そして、最判昭40.11.19によれば、売主がその物件の所有権を取得すると同時に買主は所有権を取得します

3 .Aを売主、Bを買主として、丙土地の売買契約が締結され、代金の完済までは丙土地の所有権は移転しないとの特約が付された場合であっても、当該売買契約締結の時点で丙土地の所有権はBに移転する。

物権の移転は、当事者の意思表示のみによって効力を生じます(176条)そして、最判昭38.5.31によると、常に契約締結と同時に移転しなければならないものではないとしており、代金の完済までなお買主に移転しないとすることが可能です。

4 AがBに丁土地を売却したが、AがBの強迫を理由に売買契約を取り消した場合、丁土地の所有権はAに復帰し、初めからBに移転しなかったことになる。

強迫による意思表示は取消すことができます(96条1項)取消された行為は初めから無効であったものとみなされます(121条)この場合、大判昭17.9.30によると、物権変動について、土地所有権は売主に復帰し、始めから買主に移転しなかったことになるとしています。正しいです。

こたえ 4

 

【問3】 次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。

 

 

(判決文)

共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできないが、現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので、第三者の占有使用を承認しなかった共有者は右第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないと解するのが相当である。

 

最判昭63.5.20の判例です。以下、読みやすくして分析

(判決文) 

共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して、

共有物を排他的に占有する権原を主張することはできない。

しかし、現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有する。

そのため、第三者の占有使用を承認しなかった共有者は、その第三者に対して、

当然には共有物の明渡しを請求することはできないと解するのが相当である。

登場人物が3人いると思ってください。①共有物の使用を承認した者、②承認していない者、③承認してもらった第三者です。

協議に基づかないため、勝手に話し合って承認を受けていますので、第三者は、全部を占有する権原を主張することはできません。

しかし、一方で共有者には持分があります。第三者は、承認した共有者の持分については、権原を認めてよさそうです。

そうすると、不法占有ではないですし、今度は、承認していない者も、第三者に対して、明渡しを求めることができません。

1 共有者は、他の共有者との協議に基づかないで当然に共有物を排他的に占有する権原を有するものではない。

正しいです

2 AとBが共有する建物につき、AB間で協議することなくAがCと使用貸借契約を締結した場合、Bは当然にはCに対して当該建物の明渡しを請求することはできない。

正しいです

3 DとEが共有する建物につき、DE間で協議することなくDがFと使用貸借契約を締結した場合、Fは、使用貸借契約を承認しなかったEに対して当該建物全体を排他的に占有する権原を主張することができる。

承認しなかった者に対して排他的に占有する権原はありませんので主張できません

4 GとHが共有する建物につき、Gがその持分を放棄した場合は、その持分はHに帰属する。

判例とは関係ないものです。持分を放棄したときはまず、共有者に帰属します(255条)

こたえ 3

 

 

 

【問4】 次の記述のうち、平成29年4月1日現在施行されている民法の条文に規定されているものはどれか。

 

 

1 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、その合意があった時から1年を経過した時までは、時効は完成しない旨

時効の停止についての規定です。権利についての協議が何を指したいのか不明で意図が見えませんが、いずれにしても端的に表す条文はありません。

なお、相続、婚姻解消、天災、制限行為能力者の法定代理人がいないときが法定されています

2 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる旨

条文の規定です(210条)

3 売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う旨

登記については所有権移転を目的とする不動産の売買ですが、民法上は意志表示によって権利は移転します(176条)また、債権の移転についても対抗要件は債務者への通知又は債務者の承諾ですが義務はありません。

対抗要件はあくまでも第三者に対抗できる効果を付与するものにすぎません

もっとも、最判昭36.11.24によると、登記を真実に合致せしめるために協力する義務が認められてはいます。(実務的には登記は必須なのですが)

設問意図が読み取りにくいです。オリジナル問題を作ろうとして失敗してます

4 賃借入の原状回復義務の対象となる損傷からは、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年劣化を除く旨

改正により新設されました。旧法には条文のないところでした。

借主は借用物の原状回復、附属物の収去ができる(598条)という使用貸借の規定を準用(616条)し原状回復義務を負うものと解していました。また、最判平17.12.16によると、通常損耗及び経年変化は対象に含まれないとしていました。

そこで、改正により、原状回復義務とその範囲に通常損耗及び経年変化が含まれないことを明文化しました。(良い問題です)

条文問題は、民法改正について論点となっているところを中心に出題されていました。オリジナル問題を作ろうとして迷走している感じがひしひし伝わります。たしかに、法改正を追っていくのは大事な事かもしれませんが

民法改正により、実益なくなりました

こたえ 2

 

【問5】 Aは、中古自動車を売却するため、Bに売買の媒介を依頼し、報酬として売買代金の3%を支払うことを約した。Bの媒介によりAは当該自動車をCに100万円で売却した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 

 

1 Bが報酬を得て売買の媒介を行っているので、CはAから当該自動車の引渡しを受ける前に、100万円をAに支払わなければならない。

売買契約は代金支払いと目的物引渡しの双務契約です。双務契約の一方は、相手方が履行を提供するまで自己の債務の履行を拒むことができます(533条1項)これを同時履行の抗弁と呼びます。したがって、引渡し前に支払う必要はありません。

2 当該自動車に隠れた瑕疵があった場合には、CはAに対しても、Bに対しても、瑕疵担保責任を追及することができる。

瑕疵担保責任は、売主の担保責任(570条)のためBにはできません。担保責任というのは、家電を買うと保証があると思いますが、あのイメージです。

民法改正により、瑕疵ではなく、契約内容の不適合になりました。最判平22.6.1及び最判平25.3.22によると、瑕疵の意味合いとしては契約の内容に適合しないことと解釈していましたので成立範囲は実務的にあまり変化がありません。なぜ、文言が変わったかというと、瑕疵だと、目的物に客観的な傷があれば契約内容にかかわらず担保責任を負うという誤解を招くおそれがあるためです

3 売買契約が締結された際に、Cが解約手付として手付金10万円をAに支払っている場合には、Aはいつでも20万円を償還して売買契約を解除することができる。

買主が手付を交付したときは、一方が履行に着手するまでは解除することができます(557条1項)いつでもではないです。

なお、民法改正により、「一方が」から「相手方が」という趣旨の文言になり、解除する側が履行に着手しても解除ができます。もっとも、判例法理の明文化なので結論はこれまでと変わっていません。

4 売買契約締結時には当該自動車がAの所有物ではなく、Aの父親の所有物であったとしても、AC間の売買契約は有効に成立する。

他人の権利を売買の目的とする契約も有効に成立します。売主は買主に対して、権利を取得して移転する義務を負います(560条)

こたえ 4

 

【問6】 Aが死亡し、相続人がBとCの2名であった場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 

 

1 ①BがAの配偶者でCがAの子である場合と、②BとCがいずれもAの子である場合とでは、Bの法定相続分は①の方が大きい。

①の場合、子及び配偶者が相続人であるときは各2分の1です(900条1号)

②の場合、子が数人あるときは各自の相続分は相等しいものとされます(900条4号)

両者は同じです

2 Aの死亡後、いずれもAの子であるBとCとの間の遺産分割協議が成立しないうちにBが死亡したときは、Bに配偶者Dと子Eがいる場合であっても、Aの遺産分割についてはEが代襲相続人として分割協議を行う。

相続開始以前に死亡し、相続権を失ったときはその者の子が代襲して相続します(887条2項)被相続人であるAの死亡後には代襲しません

3 遺産分割協議が成立するまでの間に遺産である不動産から賃料債権が生じていて、BとCがその相続分に応じて当該賃料債権を分割単独債権として確定的に取得している場合、遺産分割協議で当該不動産をBが取得することになっても、Cが既に取得した賃料債権につき清算する必要はない。

相続人が数人いるときは、相続財産は共有となります(898条)ので不動産も共有となります。最判平17.9.8によると、遺産分割までの間に不動産から生じた賃料債権は、各自、相続分に応じて確定的に取得して、後に行われる遺産分割の影響を受けません。正しいです。

4 Bが自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に対して、相続によって得た財産の限度においてのみAの債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続を承認する限定承認をする旨を申述すれば、Cも限定承認をする旨を申述したとみなされる。

「相続によって得た財産の限度においてのみAの債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続を承認すること」を限定承認と呼びます(922条)

相続人は、相続開始を知った時から3ヶ月以内に(選択して)この限定承認をしなければなりません(915条本文)

そして、相続人が数人いるときは、全員が共同して限定承認しなければならない(923条)ため一人が申述しても認められません。

こたえ 3

 

【問7】 請負契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 

1 請負契約が請負人の責めに帰すべき事由によって中途で終了し、請負人が施工済みの部分に相当する報酬に限ってその支払を請求することができる場合、注文者が請負人に請求できるのは、注文者が残工事の施工に要した費用のうち、請負人の未施工部分に相当する請負代金額を超える額に限られる。

最判昭60.5.17の通りで正しいです。(未施工部分の残工事に相当する費用は賠償請求できないとされています。)

2 請負契約が注文者の責めに帰すべき事由によって中途で終了した場合、請負人は、残債務を免れるとともに、注文者に請負代金全額を請求できるが、自己の債務を免れたことによる利益を注文者に償還しなければならない。

最判昭52.2.22によると、注文者の責任で完成不能となったときは、請負人は残債務を免れ、請負代金を全額請求できます。もっとも、残債務を免れることで利益を受けたものは償還しなければなりません

3 請負契約の目的物に瑕疵がある場合、注文者は、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けていなくとも、特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。

最判平9.2.14によると、請負契約の目的物に瑕疵がある場合、注文者は信義則に反する場合を除き、請負人からの賠償を受けるまでは、報酬全額の支払いを拒むことができます。

4 請負人が瑕疵担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることはできない。

条文の通りです(640条)

なお、民法改正により、条文が整理され572条に規定されるとともに重複のため640条は削除されました。

こたえ 3

【問8】 A、B、Cの3人がDに対して900万円の連帯債務を負っている場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、A、B、Cの負担部分は等しいものとする。

 

 

1 DがAに対して履行の請求をした場合、B及びCがそのことを知らなければ、B及びCについては、その効力が生じない。

連帯債務者の一人に対する履行の請求は他の連帯債務者に対しても効力を生じます(434条)

2 Aが、Dに対する債務と、Dに対して有する200万円の債権を対当額で相殺する旨の意思表示をDにした場合、B及びCのDに対する連帯債務も200万円が消滅する。

相殺をした場合、対等額において消滅します。すべての債務者の利益のためにと表現します(436条1項)

なお、他の連帯債務者が相殺を援用する場合は、負担部分のみ消滅です(同条2項)

3 Bのために時効が完成した場合、A及びCのDに対する連帯債務も時効によって全部消滅する。

全部ではなく、完成した連帯債務者の負担部分については消滅します(439条)

4 CがDに対して100万円を弁済した場合は、Cの負担部分の範囲内であるから、Cは、A及びBに対して求償することはできない。

弁済したときは、他の連帯債務者に対して求償権を有します(442条1項)さらに、大判大6.5.3によると、その弁済額が自己の負担部分の範囲内であっても、負担部分の割合に応じた額について求償することができるとされています。

こたえ 2

【問9】 1億2,000万円の財産を有するAが死亡した。Aには、配偶者はなく、子B、C、Dがおり、Bには子Eが、Cには子Fがいる。Bは相続を放棄した。また、Cは生前のAを強迫して遺言作成を妨害したため、相続人となることができない。この場合における法定相続分に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 

 

1 Dが4,000万円、Eが4,000万円、Fが4,000万円となる。

2 Dが1億2,000万円となる。

3 Dが6,000万円、Fが6,000万円となる。

4 Dが6,000万円、Eが6,000万円となる。

Bが相続を放棄しており、初めから相続人とならなかったものとみなされます(939条)

Cは強迫によって遺言を妨げた者(891条3号)として欠格事由に当たり、相続人となることができません(891条柱書)

もっとも、欠格事由に該当して、相続権を失ったときは、その子が代襲して相続人となります(887条2項)

そうすると、相続人は子D、Cの子Fとなります

代襲相続人Fの相続分は、直系尊属が本来受け取るべきであったものと同一です(901条1項本文)

DとFの相続分は、子が数人あるときは、各自相等しいものとされます(900条4号)

したがって、DとFは等しく6000万となります。

こたえ 3

 

【問10】 ①不動産質権と②抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 

 

1 ①では、被担保債権の利息のうち、満期となった最後の2年分についてのみ担保されるが、②では、設定行為に別段の定めがない限り、被担保債権の利息は担保されない。

①について、利息のうち、満期となった最後の2年分のみ担保されるというのは、抵当権者です(375条1項)不動産質権者は、利息を請求することができません(358条)

②について、前述のように法定されています

2 ①は、10年を超える存続期間を定めたときであっても、その期間は10年となるのに対し、②は、存続期間に関する制限はない。

①について、不動産質権の存続期間は10年を超えることができません(360条1項)

②について、抵当権の存続期間は定めがありません。被担保債権に委ねられているからです

3 ①は、目的物の引渡しが効力の発生要件であるのに対し、②は、目的物の引渡しは効力の発生要件ではない。

①について、不動産質権の設定は引渡しが効力の発生要件です(344条)

②について、抵当権は占有を移転しないで弁済を受ける権利を有します(369条1項)

4 ①も②も不動産に関する物権であり、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。

不動産に関する物権の得喪及び変更は不動産登記法に従い、登記をしなければ第三者に対抗することができません。そして、質権及び抵当権ともに登記をすることができます(不動産登記法3条)

残念ながらこれ以上は明言できないので、積極的な理由付けはできません。しかし、抵当権が公示されているからこそ、不動産の価値を測定し信用供与と担保取得ができます。そのため、登記が求められるということは言えそうです。

ちなみに、結論として、登記が対抗要件になります。しかし、抵当権が物権とは言い切れません。物権の原則がただちに当てはまらないからです。ただ、抵当権設定契約は物権契約と解するのが有力説です

なお、設問では明示していないためセーフかもしれませんが、いずれにしても物権であるから登記を備えなければ対抗することができないという論理展開は誤りです。

こたえ 1

 

【問11】 A所有の甲土地につき、平成29年10月1日にBとの間で賃貸借契約(以下「本 件契約」という。)が締結された場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

 

 

1 Aが甲土地につき、本件契約とは別に、平成29年9月1日にCとの間で建物所有を目的として賃貸借契約を締結していた場合、本件契約が資材置場として更地で利用することを目的とするものであるときは、本件契約よりもCとの契約が優先する。

Cとの間で建物所有を目的としているので、賃貸借契約は借地借家法が適用されます(借地借家法1条)Bとの本件契約は、資材置場としての更地であるから借地借家法が適用されず、民法が適用となります。

もっとも、両契約とも有効に成立します。何が優先するのか見えません。あくまでも対貸主との関係で、民法より借主を手厚く保護するというのが借地借家法です。

土地については、二重賃貸借のためいずれに占有権原があるかという対抗関係に立ち、賃借権の登記(605条)か、借地権者名義の建物の登記(借地借家法10条1項)の有無・前後によります。

これでいいのか不明ですが、ちょっと設問の意図が読めない意味不明な設問です。

2 賃借権の存続期間を10年と定めた場合、本件契約が居住の用に供する建物を所有することを目的とするものであるときは存続期間が30年となるのに対し、本件契約が資材置場として更地で利用することを目的とするものであるときは存続期間は10年である。

建物所有を目的の場合、存続期間は30年となります(3条)

更地利用の目的の場合、借地借家法が適用されないため10年のままです。正しいです

3 本件契約が建物所有を目的として存続期間60年とし、賃料につき3年ごとに1%ずつ増額する旨を公正証書で定めたものである場合、社会情勢の変化により賃料が不相当となったときであっても、AもBも期間満了まで賃料の増減額請求をすることができない。

経済事情の変動により、契約の条件にかかわらず増減を請求することができます(11条1項本文)

そして、最判昭56.4.20及び最判平15.6.12によると、11条1項は、強行規定とされているため、特約にかかわらず請求できます。

4 本件契約が建物所有を目的としている場合、契約の更新がなく、建物の買取りの請求をしないこととする旨を定めるには、AはあらかじめBに対してその旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

建物所有を目的とした土地の賃貸借契約で一定の期間を定め、契約の更新がなく、建物の買取りの請求をしないこととする旨を定めたりするものを定期借地契約と呼びます。(22条)

これは説明までは不要です。借家契約とは異なり、規定はありません。

こたえ 2

 

【問12】 Aが所有する甲建物をBに対して3年間賃貸する旨の契約をした場合における次の記述のうち、借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。

 

1 AがBに対し、甲建物の賃貸借契約の期間満了の1年前に更新をしない旨の通知をしていれば、AB間の賃貸借契約は期間満了によって当然に終了し、更新されない。

期間の定めのある借家契約なので、6ヶ月前までに通知をしなければ更新されます。(借地借家法26条1項)1年前に通知をしていますのでクリアしています。次に、当該通知には正当事由が認められなければなりません(28条)したがって、当然に終了しません

2 Aが甲建物の賃貸借契約の解約の申入れをした場合には申入れ日から3月で賃貸借契約が終了する旨を定めた特約は、Bがあらかじめ同意していれば、有効となる。

賃貸人が解約の申入れをした場合、申入れの日から6ヶ月を経過することによって終了します(27条1項)この規定は強行規定のため、賃借人に不利な特約は無効となります。

3 Cが甲建物を適法に転借している場合、AB間の賃貸借契約が期間満了によって終了するときに、Cがその旨をBから聞かされていれば、AはCに対して、賃貸借契約の期間満了による終了を対抗することができる。

適法に転貸されている場合、賃貸人は、転借人に対して通知をしなければ終了を対抗することができません(34条1項)

なお、当該通知がされた日から6ヶ月を経過することによって終了します(同条2項)

4 AB間の賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借で、契約の更新がない旨を定めるものである場合、当該契約前にAがBに契約の更新がなく期間の満了により終了する旨を記載した書面を交付して説明しなければ、契約の更新がない旨の約定は無効となる。

条文の通りで、期間の定めがある借家契約において書面によって契約するときは更新が無い旨を定めることができます(38条1項)このとき、更新がなく期間満了で終了することにつき、書面を交付して説明が必要です(同条2項)この説明がないと更新がないという定めが無効となります。

こたえ 4

 

【問13】 建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち、誤っているものはどれ か。

 

 

1 管理者は、少なくとも毎年1回集会を招集しなければならない。

条文の通りです(34条2項)

2 区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができるが、この定数は規約で減ずることはできない。

誤りです。定数は規約で減ずることができます(34条3項)

3 集会の招集の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受け取る場所をあらかじめ通知した場合には、管理者はその場所にあててすれば足りる。

招集通知は、区分所有者が指定している場合そこに送ればよいです(35条3項前段)

4 集会は、区分所有者全員の同意があれば、招集の手続を経ないで開くことができる。

集会招集通知は1週間前に通知しなければなりません(35条)もっとも、全員の同意があれば招集手続きを取る必要はありません(36条)

こたえ 3

 

【問14】 不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 

 

1 建物の名称があるときは、その名称も当該建物の表示に関する登記の登記事項となる。

表示に関する登記の登記事項(不動産登記法27条各号)は、

①登記原因及び日付 ②登記の年月日 ③所有者の氏名・名称・住所・持分

さらに、建物の表示(44条1項各号)は

①家屋番号 ②建物の種類・構造・床面積 ③建物の名称

が主な登記事項です(あと区分とか団地とかでこまごましたものがあります。)

2 地上権の設定の登記をする場合において、地上権の存続期間の定めがあるときは、その定めも登記事項となる。

正しいです(78条3号)。地上権はじめ用益権の場合、建物等がいつまで存続しているかがわかる必要があり重要な情報です

3 賃借権の設定の登記をする場合において、敷金があるときであっても、その旨は登記事項とならない。

誤りです。敷金があるときは登記事項です(81条4号)

4 事業用定期借地権として借地借家法第23条第1項の定めのある賃借権の設定の登記をする場合、その定める登記事項となる。

事業用定期借地権、普通定期借地権、定期借家権は登記事項です(81条8号)

こたえ 3

 

ということで、過去問解説やってみました。

やはり、宅建の権利関係は難しいです。やればやるほど難しいような気がします。自分の未熟さを痛感しますね…。だからこそ、私たちは過去問くりかえしで暗記して乗り切るんですよね。それが一番賢い方法だと思います。