今回は、「卑猥な発言や侮辱をした管理職」に対して、セクハラを理由として懲戒処分と降格がなされたのですが、その処分が有効かどうか争われた判例(最判平27.2.26)です。
判決の内容とは?
「セクハラをした管理職に対する懲戒処分は有効!」という判決でした。
懲戒処分の内容は、出勤停止処分なんで、規定としてはまあまあ重め。
それから、降格もされております。
事案の流れとしては、こちら
1.地裁は、セクハラ管理職の請求を棄却
2.それに対してセクハラ管理職が、控訴
3.高裁は、地裁の判決を変更して、管理職の請求を一部認めたため
4.被害者が上告
5.最高裁は、被害者が、敗訴した部分を破棄。セクハラ管理職の請求を棄却
6.被害者側が勝利
という流れです。
どんな事案だったか?
遊戯施設の経営を目的とする株式会社Yの従業員であるX1、X2が
セクシュアルハラスメントを理由として、会社から懲戒処分を受けました。
その内容は出勤停止でしたが、その無効、
それから降格処分も受けたので、その無効を主張しました。
それぞれについて、請求を立てています
〈1〉懲戒処分の無効確認
〈2〉降格前の地位の確認
〈3〉出勤日数の減少を原因として、減額された給与及び賞与の減額分の支払い請求
〈4〉降格を原因として、減額された給与の減額分の支払請求。
〈5〉無効な処分による不法行為として、慰謝料の支払請求を求めました。
どのような事をしてセクハラと認定されたのか?
二人いるので、それぞれを分けて整理すると
X1について
極めて露骨で卑わいな発言を繰り返すなどした。
とのこと。営業部サービスチームの責任者の立場にありながらということでしたので困りますね
こんな人が居たら、仕事どころではなさそうです。1年我慢したのもかわいそうですね
X2について
従業員Aの年齢や従業員Aらに対して、
「派遣社員であるから給与が少なく、夜間の副業が必要だ」などと、やゆする発言をした。
こっちの人は、すでに上司から言動について注意されていたもようです。
このように、判例いわく
いずれも女性従業員に対して強い不快感や嫌悪感ないし屈辱感等を与えるもの」
また、
従業員の就業意欲の低下や能力発揮の阻害を招来するものといえる」
と、評価されております。
会社はセクハラ防止にどれくらい取り組めばいいか?
本件の事例では、会社では以下の対策をしていました。
・職場におけるセクハラの防止を重要課題と位置付けていた
・セクハラ禁止文書を作成してこれを従業員らに周知させていた。
・セクハラに関する研修に毎年参加することを全従業員に義務付けてた
このように、比較的、セクハラの防止への理解があり取組みを行っていました。
すなわち、これくらいやっても、
セクハラをしてしまった人には「懲戒処分をしても不当ではない」ということを裏付けています。
まとめ
セクハラとは、定義があるわけではないので
どこまで?っていうのは実際の事例をみていかなければなりません。
そういう意味では、参考になる事例かと思います。
といっても、ぎりぎりのラインって、結局、「コミュニケーションの問題」です。
基準を決めちゃうと悪用されることになりかねません。
基準を求めるよりも目の前の人間関係に気を遣うのが優先になるかと思います
本件により、言葉だけで懲戒処分が認められてます。
「どんな発言があったか?」を証拠として残しておくといいと思います。
日にちや時間、状況、発言の内容を細かく記載してあれば、メモでも十分証拠になります。
ただ、もめたら働きにくくなるし、本来は、第一に労働環境を整えてほしいところですよね
でも実際、一緒にはたらいている私たちがどれだけアクションを起こせるか?がカギなのかなーと思います。
以上です、ありがとうございました。