今回は弁済ですが、弁済はボリュームが多かったのでひたすら逃げていました(笑)
一応、条文は指摘していますが、別に読まなくていいと思っています。気になればどうぞ
改正のポイント
・弁済の法律効果は債務の消滅であることが条文となる
・第三者弁済できない場合を明確化
・準占有者という文言が変わった
・受取証書の持参人に対する弁済について削除
・代物弁済の法的性質は諾成契約
・弁済充当できる場合を明確化
・弁済供託できる場合を明確化
・弁済による代位
・一部弁済による代位
・担保保存義務、免責を主張できる者の範囲を広げた
すこし多いですが、内容は難しくはないし、たいして大きく変化したものでもありません。
それほど身構える必要は無いと思います。
弁済の法律効果は債務の消滅であることが条文となる
ついに明文化されました。
債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する。
第三者弁済できない場合を明確化
正当な利益を有する者は、債務者の意思に反していたとしても弁済はできますので
「債務者の意思に反して弁済することができない第三者」の範囲について
旧:第474条(第三者の弁済)
① 債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
② 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。(第3項・第4項は新設)
①債務の弁済は、第三者もすることができる。
②弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。
③前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。
④前3項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。
準占有者という文言が変わった>
準占有者に弁済した場合です。
内容は変わらないので、「善意無過失で弁済したのであれば弁済は有効!」でした。
改正により、準占有者の意味をすこしわかりやすくしてます。
債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
受領権者以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
ここでいう受領権者とは、債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって、「弁済を受領する権限を付与された第三者」をいいます
受取証書の持参人に対する弁済について削除
受取証書というのは「領収書」です。
これがあれば、外観上、権利者とみることができるため、上記478条と同じ結論で、意味がないので削除されました。
ようは、善意無過失で弁済したのであれば有効と考えればいいですね。
受取証書の持参人は、弁済を受領する権限があるものとみなす。ただし、弁済をした者がその権限がないことを知っていたとき、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
⇒ 新:削除
代物弁済の法的性質は諾成契約
これは判例(最判昭60.12.20)(最判昭57.6.4)で、
代物弁済の合意があれば、所有権移転の効力が生じるとされていました。
したがって、代物弁済の法的性質は「諾成契約」とされています。
弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。
弁済充当できる場合を明確化
債務者が、同一の債権者に対して、金銭債務をいくつか負担している場合、弁済として提供した給付が、負担している全ての債務を消滅させるには足りない、というとき、その弁済した給付を、どの債務の弁済に充てるのか指定して充当することができるというもの。
当事者の指定が無い場合は、法律に指定があるのでその方法により充当されます。
①債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。②③ (略)
①債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき(次条第一項に規定する場合を除く。)は、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
②弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
③前2項の場合における弁済の充当の指定は、相手方に対する意思表示によってする。
④弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも第一項又は第二項の規定による指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
1 債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
2 全ての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
3 債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
4 前2号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。(元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当)
債務者が、元本利息等支払うべき場合、全部の消滅させるのに足りない給付をしたとき、費用、利息、元本で支払われるため、指定充当できない
弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも前条の規定による弁済の充当の指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
1 債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
2 すべての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
3 債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
4 前2号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。
①債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限る。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
②前条の規定は、前項の場合において、費用、利息又は元本のいずれかの全てを消滅させるのに足りない給付をしたときについて準用する。
弁済供託できる場合を明確化
受領不能
受領拒否
債権者不確知
この場合、弁済の目的物を供託できるとされていたところ、一部見直しされました。
1.受領不能とは
「弁済の提供をした場合に、債権者が受領を拒んだとき」
でしたが、判例(大判大10.4.30)にしたがい
「弁済者が弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだときに弁済供託をすることができる」旨を明確にしました。
債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(「弁済者」)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。
①弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
1 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
2 債権者が弁済を受領することができないとき。
2.受領拒否とは、
「債権者が弁済を受領することができないとき」
こちらは、旧法維持のため変化なしです。
3.債権者不確知とは、
「弁済者が過失なく債権者を確知することができないとき」
こちらは、弁済者に関りのない事情によって生じているから弁済者に過失があることを債権者に主張立証させるもの
②弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。
※なお、判例(大判大9.6.2)にしたがい、「供託時に債権は消滅する」とされました。
弁済による代位の要件を整理
弁済するについて正当な利益を有する者以外の者が代位する場合、債権者の承諾を必要としていたが、これを不要としています。
① 債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。(改正後の本条)
旧:第500条(法定代位)
弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。
代位を認めるため、被担保債権が消滅したことを登記に公示して表すための制度でした。
しかし、登記を見たときに、抵当権が抹消されていなければ債権が消滅したとは考えないのが自然であるためわざわざこれをする合理性が乏しいとして、保証人の代位の付記登記は削除されました。
一部弁済による代位
(大決昭6.4.7)によると
とされていました。これを、一部弁済をした代位者は、債権者の同意を得て、債権者とともに権利行使できるとしました。
また、一部弁済をした者がいても、債権者は単独で権利行使できる。
判例(最判昭60.5.23)によれば
「債権者と代位者の間の優劣関係については、債権者が優先する」
① 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使する。
② 前項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。(改正後の④)
(新法の第2項・第3項は新設)
①債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる。
②前項の場合であっても、債権者は、単独でその権利を行使することができる。
③前2項の場合に債権者が行使する権利は、その債権の担保の目的となっている財産の売却代金その他の当該権利の行使によって得られる金銭について、代位者が行使する権利に優先する。
④(略)
担保保存義務、免責を主張できる者の範囲を広げた
判例(最判平3.9.3)によれば、
「代位権者が物上保証人である場合、免責後にその物上保証人から目的物を譲り受けた第三者やその特定承継人も免責を主張することができる」とされておりこれを明文化し、例外として免責が生じない場合を規定。
金融機関が融資において、第三者が担保を設定(保証)している場合、債務者の経営状況が怪しくなったりその状況に応じて、担保の差替えや一部解除をおこなう必要がでてきます。
ところが、これは金融機関が担保の損失・減少をしたこととなってしまうため、すべての代位者の同意がなければ担保の差替えができませんでした。
保証人との間で、この担保保存義務を免除する特約を盛り込んでおくなど工夫ができますが、担保不動産の第三取得者とは特約できず問題になったりします。
そこで、「取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、担保損失・減少となっても免責は生じないこととなりました。
なお、判例(最判平7.6.23)では、担保保存義務の免除特約がない場合、債権者が合理的な理由を立証するとして解しているため、引き続き、金融機関としては、特約をつけるはずですので代位権者は、権利濫用の主張で対抗することになるかと思われます。
長くなってしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。