【初心者向け】民法の制限行為能力者とは何か?4つの類型をわかりやすく解説

今回は制限行為能力者についてです。

民法の基本中の基本で、試験でもそこそこ出てきます。

内容がわからないというよりは混乱して覚えられないという場合が多いかもしれません。

一見、カンタンなものほど理解が甘くなります。しかし一度、理解を深めてしまえば混乱しなくなります。

※法律は一文が長くなります。スマートフォンの方は横画面にしていただくと読みやすいかもしれません。

制限行為能力者とは?

「制限行為能力者」とは、判断能力が弱いと考えられる人たちです。

契約(法律行為)を制限され、保護者の同意が無い場合、自由に取消すことができるという意味になります。

こういう人には取消が認められると法律に規定されています。

これらが本来自由であるはずの契約に一定の制限をかけて未熟な者を保護をしていく制度になるのです。

このような制限行為能力者には大きく4つの種類があります。

未成年、被後見人、被保佐人、被補助人です。

これは、保護する程度に応じて分類しています。

» 「法律行為とは?わかりやすく解説」はこちら

制限行為能力者それぞれのちがいとは?

制限行為能力者には4類型ありますが、中でも「未成年」の場合、家庭裁判所の審判による必要がありません

未成年というだけで法律上の行為が制限されています。

未成年かつ被後見人もありますが、未成年の保護が厚いためほぼ同じ扱いです。

被後見人は、だいたい成年として考えてよいかと思います。(なので、3+1と分けて考えた方が良いかもしれません。)

そして、3つのうち、後見は最も保護が強く、補助が最も弱い保護です。

そして、中間の保佐人がどちらともいえない場合をカバーするため、できることできないことがけっこう曖昧で、そのために試験でも、狙われやすいです。

「後見開始」、「保佐開始」、「補助開始」は、家庭裁判所の審判開始により始まります。

また、家庭裁判所に開始を請求できるのは身内のうち4親等まで。

4親等というと、祖父母の兄弟姉妹、兄弟姉妹の孫までが含まれるので、だいたいの身内が網羅されてるはずです。

家族に認知症が現れたら請求できるように設計されています。

まずはこの基本構造を理解すると分かりやすいです。

制限行為能力者と詐術

判断能力が乏しく未熟な者を保護するために、本来自由であるはずの契約に一定の制限をかけ法律で取消しを認めています。

保護に値しない場合にはこの規定も妥当しません。

詐術というのは、典型例は、「年齢詐称」でしょうか。

いわば自身が法律条制限されていることを知っているとも思えますし、契約を締結するため一定の判断能力があると考えられます。

したがって、取消すことができないことになります。

制限行為能力者1.未成年者

未成年者は、財産に関する行為は、法定代理人の同意を得る必要があります。

原則、同意を得ていない場合、「取消し」できます。

例外は以下3つです。

保護者の同意が無い場合でも、取消しできない例外

▣ 義務を免れ、権利を得る

▣ 行為処分を許された行為

▣ 営業を許された営業行為

※よく婚姻に同意が必要かという問題が出ますが、婚姻は父母の同意」です。

現実には、だいたい父母ですが、必ずしも父母が親権者ではないため異なりますので注意。

制限行為能力者2.被後見人

被後見人の財産に関する行為はだいたい都合よく取消しできます。

被後見人の場合、保護の要請が非常に強いです。

そのため、保護者が同意を与えていても、被後見人が個人でおこなった契約は取消すことができます。

とてもシンプルです。

原則、取消すことができ、例外として、日用品の購入といった非常に軽微なもののみ取り消すことができません。

制限行為能力者3.被補助人

だいたい自由で、基本的に契約などできます。

家庭裁判所の審判で定められた特定の行為のみ、同意を得る必要があります。

同意が無い場合、取消すことができます。

審判開始には本人の同意が必要となります

制限行為能力者4.被保佐人

被保佐人とは、被後見人ほど、なんでも取消しできるよう保護をせず、被補助人ほど、自由にするのは不安という、微妙な認知レベルに使われます。

これは程度に応じて柔軟に対応させるためで、かなりグレー。

したがって、一部の行為は、同意を得る必要があり、同意を得てなければ、取消しできます。

一部の行為の主な例とは以下の行為です。

▣ 保証人となる

▣建物3年、土地5年を超える賃借契約

▣新築・改築・大修繕

▣相続の放棄・承認・遺産分割

▣贈与を拒絶する

これ以外で家庭裁判所の審判で定めた行為も保護できます。これが中間に位置する所以です。

なお、財産行為が基本なので、離婚など身分にかかわる行為はここでは関係ありません。

つづいて、制限行為能力者が問題となる場面を考えてみます。

制限行為能力者の取消し

契約当事者関係の問題で「本人側の取消し」です

保護者である者も、制限行為能力者も取消しできる一方、相手方は取消しできません。

行為が制限されると言いますが、不利な契約に拘束されず保護されます。

次に、契約「相手方の催告」です。

原則、相手方が、行為能力者に向かって催告します。未成年、被後見人には催告できません。

なぜなら、行為能力者にしなければ、判断能力を理由とするこの制度の意味がないからです。

そのかわり、保護者には責任がありますから確答がなければ『追認』とされます。

例外として、被保佐人、被補助人については催告できます。この場合、確答がなければ『取消し』とみなされます。

(※ちなみに、代理の場面では、催告の確答がないとき追認拒絶となるあたりがひっかけです。)

対抗関係の問題

制限行為能力者がした契約に加えて新たに第三者が入ってきたときは対抗関係となりえます。

「本人側の取消し」では

原則、善意の第三者に対しても取消しを対抗することができます。

なぜなら、契約を取り消した場合は無効とされる(121条本文)からです。

契約が無効なので、取引が済んでしまっていたら代金や商品を返却し原状回復します。

ただし、制限行為能力は保護されるので、「現に利益を受けている限度で返還」すればよいとされています。(121条ただし書)

返ってこなくなるかもしれないので、不動産屋としては制限行為能力者との取引は気をつける必要があります。

※とくに、不動産業の場合ですと、資産家は相続税対策とかで高齢者のお客様が多かったりするので契約の有効性は重要なチェックポイントです。

試験などのポイント

簡単に試験のポイントをまとめてみました。

未成年に営業許可があれば、その営業についてのみ同意なく契約できる贈与の拒絶は、損と言えるから取消しできる

建物3年・土地5年の賃貸借は、保佐人の同意が必要日用品は、取消しできない

原則、保護者に催告するから確答がない場合は、追認とされる保佐人と補助人に催告した時のみ、取消しとされる

未成年者が、婚姻するときは、父母の同意で親権者法定代理人ではない

詐術を行った場合は、取り消すことができない。

こんなところでしょうか。

というわけで、今回は以上です。お読みいただきありがとうございました。