債権者代位権の転用とは?わかりやすく判例まとめ

※法律は一文が長くなります。スマートフォンの方は横画面にしていただくと読みやすいかもしれません。

今回は、「債権者代位権の転用」というテーマです。

債権者代位権は、詐害行為取消権と並び、苦手とする方が多い気がします。

債権者代位権の転用とは?

債権者代位権の転用とは、債務者の無資力に関わらず、金銭以外の債権を保全するために、債務者が持っている債権を行使してしまうことを指します。

本来は、債権者代位権が保全しようとする債権とは、原則、自分が持っている「金銭債権」です。

そのため、金銭債権以外の債権を保全する必要があり、債務者の債権を行使するという場面では、「転用」することになります。

(なお、被代位権利については、一身専属権を除き、原則すべての権利が対象となります。)

債権者代位権の転用の特徴とは?

債権者代位権の転用では3つが特徴となります。

・特定の権利を実現することが目的となる

・金銭以外の債権を保全する

・債務者の無資力を問わない

この3つが特徴となるとされていますが、正確にはこの辺の分類、まだ答えがはっきりでていません。

基本的には「被保全債権が金銭か?」という点を抑えておけば良いかと思われます。

債権者代位権を転用が判例で認められたケースとは?

債権者代位権は、債務者の権利を行使してしまうものですが、他人の財産管理権に介入することになります。

そのため、最小限にとどめておかなければならないという歯止めがかかります。

そこで、債権者代位権の転用によって、債務者の権利を代位行使できるかを判例で確認する必要があります。

債権者代位権の転用の問題意識とは?

この問題意識は、「債務者に過剰な干渉をしていないか?という点です。

債権者が、保全する権利は、代位行使が許されるだけの権利といえるかどうかが価値判断がはたらくポイントです。

判例では以下のようになっています。

・「登記請求権の保全」は、代位行使ができるか?

『実体的な権利関係を反映する登記法の要請に反するから、直接自己への登記ができないため、無資力でも代位行使が認められる。』
(大判明43.7.6)

・「債権譲渡の通知」は、代位行使できるか?

『債権の譲受人による債権譲渡の通知は、代位行使できない。』
(大判昭5.10.10)

・「建物明渡請求」は、代位行使できるか?

『建物賃借人が、所有者に代位して不法占有者に対して明渡しを請求する代位行使できる』
(最判昭29.9.24)

・「妨害排除請求権」は、代位行使できるか?

『不法占有者に対して、賃借人が、所有者に代位して妨害排除請求権を代位行使できる』
(大判昭4.12.16)

・「建物買取請求権」は、代位行使できるか?

『建物代金が利益となり、それによって賃借権は保全されないため、借地上の建物賃借人は、代位行使できない。』
(最判昭38.4.23)

これは、債務者の利益により権利が保全される関係が必要です。

・「侵害状態是正請求権」は代位行使できるか?

『優先弁済請求権の行使が困難となる状態があるときは、抵当権侵害となる。

そのため、抵当権の効力として、所有者に対し抵当不動産を適切に管理するよう求める権利を有する。したがって、代位行使は認められる』
(最判平11.11.24)

これは、債権とは言えず、423条の法意に従うとされており、その後(H17.3.10)にて、正式に抵当権に基づく妨害排除請求を認めたので転用事例とはならなくなりました。

債権者代位権の特殊な転用事例とは?

判例で、債権者代位権の転用事例でも、特殊な事例があります。

それは、被保全債権が金銭債権だけど、無資力を問わない事例です。

『被相続人を売主とする売買について、相続人の一人が移転登記に協力しないときに、もう片方の相続人が買主に代位して移転登記請求権を行使することが認められる』
(最判昭50.3.6)

共同相続が絡んだため、どうすることもできなくなり、債権保全のために被代位権利を行使するしか手段がなくなってしまったのです。

登記もできず、代金の支払いも受けられなくなったので、登記請求権の代位行使認められるとされました。

というわけで、今回は以上です。

お読みいただきありがとうございました。