第三者所有物没収事件とは?
第三者所有物没収事件の事案とは、被告人に対する刑罰なのに、被告人ではなく第三者の所有物を没収するという刑罰を科すことができるのかという事案です。
刑とは、(刑罰とは呼んでいないが)犯罪に対する法律上の効果として行為者に科せられる法益の剥奪という制裁を内容とする処分です。
本来は、犯罪行為の主体が刑罰を受け、不利益を受忍しなければなりません。
しかし、本件では、第三者所有物の没収であり、犯罪行為主体と刑罰受忍主体が一致していないという特徴があります。
そういうことが認められるのかという問題意識が背景にあるのでした。
また、本件の「没収」という刑は、附加刑というものです
附加刑とは、主刑に付加してのみ科することができる刑罰で、没収のみである。
主刑を言い渡すときだけ言い渡すことができる。
主刑とは、独立して科すことができる刑である。
違憲の主張適格
これは上告することができるのか?というかたちであらわれました。
被告人としてもその物の占有権を剥奪され、使用・収益できない状態におかれれば、第三者から所有権を剥奪されたことを理由に賠償請求される危険があります。
そうすると、利害関係を有することが明らかであるから、上告により救済を求めることができるとのことです。
これには、反対意見があります。
反対意見
おおむね、以下のような主張があります。
・ 被告人自身は現実の具体的不利益を被っていない。
そのため、被告人の申立に基づき、没収の違憲性に判断を加えることは将来を予想した抽象的判断を下すものにほかならず81条の範囲を逸脱する
・ 刑事訴訟法では、被告人に対して言い渡される判決の効力が第三者に及ぶことは認められていない
そうである以上、第三者の所有権が侵害されているとは言えない。
これらは、どちらかというと理論というか理屈っぽいので深入りしない方がいいかと思います。
第三者所有物を没収する場合、防御の機会を与える必要があるか?
第三者所有物を没収する場合、防御の機会を与える必要があるか?という問題意識もあります
これは、必要であるとされています。理由は以下です。
・その処分の効果は第三者に及ぶものである
このような理由から、防御の機会が必要で
したがって、29条1項、31条に反する。としました。
こうして、没収の言い渡しを受けた被告人は、防御の機会が無いことを理由に上告することができます。
ということで、今回は以上となります。お読みいただきありがとうございました。