持参債務と取立債務の処理手順【金銭債権の取り扱い方】

金銭債権の取扱いには独特の難しさがあります。

売買にしろお互いに債権者であり債務者であり、

このような契約を双務契約といい、どちらに懈怠があるのかによって扱い方が変わります。

こうしたお互いの立場による処理が求められるところに大きな特徴があります。

金銭債権の処理手順

検討する際の手順として、どちらのどんな債務かを確定していきます。

このとき、まずどちらが遅滞しているのかです。

・どちらが遅滞しているのか

続いて、遅滞が何の遅滞かです。この2つはほぼ同時に分かると思います。

・履行遅滞なのか、受領遅滞なのか

そして、遅滞している者が「債務者」として論点となりますので、遅滞している者の債務の内容、その履行方法です。これが、持参債務、取立債務です。

・持参債務なのか取立債務なのか

これらによって条文の選択が変わります。

そして、「持参債務なのか取立債務なのか」は、種類債権か特定物債権かをみていき、責任を負うかどうかは「期限」がいつで到来しているのかどうかで決まります。

・種類債権か特定物債権か

・期限はいつか

おおむねこのようなステップを踏んでいきますので、これらをチェックして問題文を読んでいけば良いことになります。

山となるのは、最後の(種類か特定物債権か)と(期限)の2つになってくると思います。

種類債権の場合

種類債権の場合、原則として持参債務となり債権者の現在の住所において弁済しなければならないとされています。(484条1項)

受け取る側が債権者であり、たいてい提供をする債務者の履行遅滞が問題となります。

そのため、債務の本旨に従った履行をしないと認められるとき、損害が発生すれば損害賠償責任が生じ、これを請求することができます。(415条1項前段)

どのタイミングで遅滞となるかは「期限」がいつかによります。

これは、期限の到来したときか、履行の請求を受けたとき、期限の到来を知った時の3つです。

・ 確定期限がある場合、期限が到来した時

・ 不確定期限である場合、請求を受けた時か、期限の到来を知った時

・ 期限がない場合、履行の請求を受けた時

以上の3つとなります。

特定物債権の場合

特定物債権の場合、債権発生の時にその物が存在した場所において弁済しなければなりません(484条1項)

債権者が受け取ることができない場合、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存していれば良いです(413条1項)

「履行の提供」とは、「弁済の提供」をすることで、弁済の提供の時から責任を免れることになります(492)

この「弁済の提供」は、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすればここで終わりです(493)

供託できる場合

債権者が受け取らない場合、困ってしまいますが、

供託することにより自身の責任を免れることができます。

1 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。

2 債権者が弁済を受領することができないとき。

3 弁済者が債権者を確知することができないとき

これらのとき、供託することができます。

注意点として、弁済者が債権者を確知することができないときについては、弁済者に過失があるときは供託しても債権(債務)は消滅しません。

探せということになります。

受領遅滞では解除ができない

債務不履行の場合、解除できます。これは解除権が発生するということになります。

これに対し、受領遅滞の場合、解除できるわけではありません。(S40.12.3)

あくまでも、責任を逃れるというもので、権利が発生するものではなく、解除原因ではないことになります。

ややこしいところで処理すると混乱してしまいがちですがひとつひとつ整理すれば難しい話ではないところでした。

といういことで今回は以上です。ありがとうございました。