因果関係論
については、最近落ち着いているのですが、司法試験受験生の間ではわりと、迷走しているようですね。(こればっかりは、資格予備校の大罪かもしれませんが…)
因果の流れに異常な経過があった場合の判例について、簡潔にまとめていこうかと思います。因果関係の論証や学説についてはコチラの記事でまとめております
対象読者
□ 法学部生で刑法がよくわからないという方
□ 刑法理論について、くわしく勉強したい方
□ 刑法の基本書を読めるようになりたいという方
こういった方に向けて記事を書きます。
1.被害者に特殊な事情がある場合の因果関係の判例
布団蒸し事件(最判昭46.6.17)
たまたま被害者の身体に病的な素因があって、それとあいまって死亡したとしても、罪の成立を妨げないので、因果関係を肯定しました。
これは、予見できなくても妥当します。
2.被害者の行為が介在した場合の因果関係の判例
高速道路進入事件(最決平15.7.16)
被害者が高速道路を渡って逃げようとしたのですが、かなり危険な行為に出ております。
その結果、死亡してしまったとしても、めった打ちに遭っていたので
極度の恐怖に襲われてとっさにそのような行動をした。暴行から逃れるための著しく不相当な方法とはいえない、としました。
したがって、因果関係を肯定
夜間潜水事件、スキューバダイビング事件(最決平4.12.17)
夜間潜水の指導中に、先生が移動して受講生から離れてしまいました。
これは、被害者を溺死させる結果となりかねない危険性があるとのことです。
「受講生の不適切な行為」は、先生が移動したために誘発されたものです。
因果関係のさまたげとならないため、因果関係を肯定
3.第三者の行為が介在した場合の因果関係の判例
大阪南港事件(最決平2.11.20)
死因となった傷害が形成された後に第三者が傷害を加えました。そのような場合
第三者の行為で、死期がはやめられたとしても因果関係を肯定
第一行為に危険性が認められない場合は、その後「第三者の行為の介入をもたらす危険性があるか」を要求することになります(犯行を容易にしたなど)
米兵ひき逃げ事件(最決昭42.10.24)
死因となった傷害が、さいしょの「轢いた行為」によって生じたことを証明できませんでした。
同乗者が自動車の屋根から引きずり下ろす行為は、経験則上、当然予測できるものではないため、因果関係を否定
若干、問題ありの判例でしたね。判旨の理由付けもよくわかりません。
ちなみにですが、判旨の中で、「経験則」「当然」「明らか」「性質上」といったことばが出てきたときは「あ、説明できないんだな…」と温かい目で察してあげてください。
」これが、「相当因果関係説」と「危険の現実化」で司法試験受験生を錯綜させるもとになった判例です。
4.行為者の行為が介在した場合の因果関係の判例
ウェーバー概括的故意の事例(大判大正12.4.30)
第一行為で首を絞めたが、そのあとの第二行為の遺棄による窒息とあわせて死亡したという場合、
死因は第一行為のみではないけれども、第一行為の危険性が第二行為を経由して結果となったと考えて、第一行為との因果関係を肯定
熊うち事件(最決昭53.3.22)
第一行為で過失により発砲、第二行為で楽にさせてやるために射殺した場合
第二行為での殺人罪が否定できない以上、第一行為の発砲と結果の因果関係は否定。
第一行為は、業務上過失致死となります。すると、「殺人との二重評価にならないか」、という別途の論点になります
また、第二行為により死因が形成された場合、第一行為により「第二行為を行う蓋然性がもたらされたか」が問題となります
行為が二つあってもそこまで難しくはないですね
というわけで、お読みいただきありがとうございました。今回は以上です。